食料システム法が、4月1日に施行される。原材料費や労務費、エネルギー価格といった変動するコストを適切に価格に反映させ、食料供給の持続性を確保するための枠組みである。
施行に臨んで、政府側は「農業の現場ではコスト割れで供給される機会が多く、農業者の経営を苦しいものにしてきた」、「これを消費者に一定程度理解してもらうために作った制度」と指摘している。また、「フードGメンなどの活動と合わせて、適正な取引がなされるよう努力」との説明もなされているようだ。
この「フードGメン」と聞いて、失礼ながら、平家物語・巻一に登場する『禿童(かぶろ)』を思い起こしてしまった。権勢を誇る平清盛の謀事に、14~16歳の童300人を選りすぐって召し使い、京中に充ち満ちて往来させたという。「探索・摘発隊」とでも言うべきものだろうか。
およそ法律とは、時の社会・経済事情の表われであり、また、立法当時の趣旨・意図が執行組織のメンバーの行動に正しく反映され、継承されていかない場合には、却って弊害の方が大きくなることもある。
筆者も1973年の第一次オイルショックによる狂乱物価の頃、「生活関連物資等の買占め・売惜しみ法」の下で「価格調査官」を命じられた経験があって、価格つり上げや物資隠匿などがないか企業や倉庫への立入り調査にも携わった。価格調査官には強制権限があったにもかかわらず、執行の効果があったとの記憶はなく、良い思い出はまったくない。
フードGメンは、2025年10月1日現在、本省、地方農政局等で18人が置かれているが、今後の増員を計画中と聞いている。「Gメンも置きました」との形ばかりに終わらないことを期待したい。
食料システム法は「コストを適切に価格に反映させる」という理念は良いことだろうが、まず、食料という安定供給が求められるものであっても「価格は、マーケットの需給を反映して決まる」ということを忘れてはならない。価格形成に際しては、①市場の整備・機能の発揮、②力の弱い生産者の組織としてのJAの「価格交渉上の独禁法の適用除外対象行動」、そして、③コストの考慮・活用という順番となる。ここを間違えてはいけない。需給‐市場‐価格‐コスト‐再生産対策と進むのが正しいあり方がと思う。
食料システム法に基づき作成されることになったのが、生産から販売までにかかる変動を明らかにする「コスト指標」である。生産や流通など各段階でかかる費用を積み上げたもので、費用を下回る価格での取引を抑止するための価格交渉での根拠として使われる。
対象品目はコメ、野菜、牛乳、豆腐・納豆を予定しており、国が認定した民間団体が作り、公表する。コメの場合は、米穀安定供給確保支援機構(米穀機構)が作成・公表する。
米穀機構が実施したコスト指標の検討結果では、コメの生産にかかる費用は26年3月時点で2万437円/玄米60キログラム(kg)。これに集荷や、卸、小売りでの経費や利潤を積み上げると、最終的には、3万355円/60kg(506円/kg)で、精米換算すると2811円/5kgになる。
この水準は、かつて石破茂前首相が述べていた「コメの小売価格は3000円台でなければならない」にも応えられ、案外、生産・消費の距離は近い気がする。
また、いくつかのコメ関係者が期待・予想する価格は、次の通りであり、大きな差もみられない。
一方、日本農業新聞のアンケートでは、生産者が考える適正な小売価格は3000円台/5kg、消費者では2000円台/5kgと、かなりの差がある。