一方で、畠田氏は楽観論には慎重だ。
「完全に使わないことと、使用量を減らすことは別問題だ。用途ごとに“減らす・代替する・循環させる”戦略が必要になる」
その循環戦略を体現しているのが信越化学工業である。製造工程の端材や使用済み製品からレアアースを回収し、高純度で再精製する技術を確立。資源を「輸入するもの」から「循環させるもの」へと再定義した。
「リサイクルは環境対策ではなく、供給安定性を買う技術だ」(同)
中国産レアアースが長年市場を席巻した背景には、環境対策コストの扱いがある。レアアース精製には放射性廃棄物などの処理が不可避だが、中国はそのコストを事実上内部化せず、低価格を実現してきた。
しかし、ESG投資や環境規制が強化される現在、この「汚れた安さ」は許容されなくなりつつある。米国は国家主導で補助金や政府買い上げを行い、採算が合わなくても産業基盤を維持する政策に舵を切った。
「日本は民間の努力に委ねすぎてきた。最後の壁は、国家がどこまでコストを引き受ける覚悟があるかだ」(同)
政府が期待を寄せるのが、小笠原諸島・南鳥島沖のレアアース泥だ。2030年頃の商業化を目指し、深海から泥を吸い上げ分離・精製する技術検証が進んでいる。
もっとも、万能の切り札ではない。
「南鳥島は夢のある話だが、過度な期待は禁物だ。海外調達、技術代替、国産化を同時並行で進める国家戦略が不可欠だ」(同)
中国のレアアース輸出規制は、日本にとって明確なリスクである。しかし同時に、代替技術、循環技術、分散調達という日本の強みを世界標準へ押し上げる好機でもある。
「脱・中国」ではなく、「脱・単一依存」。その現実的な道筋を描けるかどうかが、日本製造業の競争力と産業主権の行方を左右する。
レアアースを巡る攻防は、日本が「資源を持たざる国」から「技術で資源を生み出す国」へ進化できるかを問う試金石となっている。
(文=BUSINESS JOURNAL編集部)