高野氏は次のように分析する。
「日本はクリエイターの権利や文化を重視するあまり、技術導入に対する社会的合意形成が遅れている。結果として、開発現場の生産性で大きな差が生まれている。AIは“創造性を奪う敵”ではなく、“拡張する道具”として再定義する必要がある」
もう一つの課題が、日本企業に根強い「自前主義」だ。ソニーや任天堂は、自社ハードと自社IPを軸に高収益モデルを築いてきた。しかし、この成功体験が、外部との連携や資本戦略の柔軟性を制約している側面もある。
一方、中国企業は、M&Aや出資を通じて外部リソースを積極的に取り込み、スピードと規模を両立させている。テンセントが世界中のスタジオを束ねる“連邦型”モデルを構築しているのに対し、日本は依然として“単独主義”に留まる企業が多い。
実際、かつてスマートフォンゲームで世界を席巻した日本企業の一部は、現在、成長鈍化に直面している。国内市場依存とヒットタイトル偏重のビジネスモデルが、外部環境の変化に対応できていないためだ。
「日本企業はIPの質では依然として強い。しかし、それをグローバルで最大化する“仕組み”が弱い。資本戦略、データ活用、AI導入という3点で遅れが積み重なっている」(同)
では、日本に勝機は残されているのか。結論から言えば、可能性はある。ただし、それは従来の延長線上にはない。
日本は依然として、キャラクター設計、世界観構築、物語性といった領域で強い競争力を持つ。だが、それをグローバル市場で最大化するには、テクノロジーと資本の論理を受け入れる必要がある。
生成AIの活用、海外パートナーとの連携、データドリブンな開発体制――これらを組み合わせて初めて、中国勢と同じ土俵に立てる。高野氏は次のように締めくくる。
「いま問われているのは、“日本らしさを守るか”ではなく、“どう進化させるか”だ。テクノロジーを拒絶するのではなく、文化と融合させる。その発想転換ができるかどうかが、今後10年の勝敗を分ける」
テンセントに続き、miHoYoや新興スタジオが台頭する中、中国ゲーム産業は第二の成長フェーズに突入している。彼らは日本の成功モデルを徹底的に研究し、それを資本と技術で上書きしようとしている。
一方、日本は「過去の成功体験」と「技術への慎重姿勢」に縛られている。もしこのまま変革が進まなければ、「クリエイティブの聖地」というブランドさえも揺らぎかねない。生成AIという新たな競争軸が登場した今、その差は時間とともに指数関数的に拡大する。
4兆円規模の資本と、データと、AIを武器にしたプレイヤーと戦う時代において、日本は何を選ぶのか。もはや、猶予は残されていない。
(文=BUSINESS JOURNAL編集部、協力=高野輝/戦略コンサルタント)