政治DX・「800億円の聖域」をこじ開ける…公職選挙法の隙間を突くルールメイキング

 DX化によって更に意見が集まっていき、どの地域の、どの年代が、どんな政策に反応しているのか。それがリアルタイムで可視化されれば、政治家は「声の大きい少数派」だけでなく、「物言わぬ多数派」のニーズに基づいた政策立案が可能になる。今まで霞ヶ関が巨大なシンクタンクとして機能してきましたが、民間でないと作れない政策の可能性はまだまだ無限大だと思っています。

「デジタルサイネージは入り口にすぎません。私たちの本質は、政治領域における政策広報のプラットフォームです。これまで政治家を志す優秀な方々が矛盾だらけのルールの中で非効率な政治活動を続けることが美徳とされてきた政治活動を効率化し、国民とのコミュニケーションの手段を透明性を増やす。それが、私たちが掲げる『政治DX』の真のゴールです」

経営者に求められる「覚悟」の質

 取材の終盤、松井氏はこう締めくくった。

「10年後、20年後に、まだ政治家が紙のポスターを一枚一枚手作業で貼っている世界があるでしょうか? 答えは『NO』です。誰かがいつか必ずこの領域をアップデートするんです。ネット選挙解禁も民間主導で行われました。既存の仕組みを変えようとする人は覚悟が必要。刺されることもある。大変だからこそ、それをやるのは私たちでありたい」

 松井氏の歩みは、既存のアナログな枠組みに代替案を提示し、自らルールを書き換えていくスタートアップの本来の姿を体現している。

 ビジネスパーソンが得られる教訓は多い。「規制は壁ではなく、参入障壁という武器であること」「大手企業のリスク回避を逆手に取ること」、そして何より「時代の不可逆な流れ(デジタル化)を信じ抜くこと」だ。

「政治DX」という、日本で最も難攻不落な市場に挑むキャピトルシンク。彼女たちがこじ開けた風穴は、やがてこの国の民主主義そのものをアップデートする大風へと変わるかもしれない。

 松井亜里香氏は、国会議員秘書としての実務経験を持ち、政治現場のペインポイントを身をもって体験している「専門性(Expertise)」の高い経営者である。また、自ら協会を設立し、省庁と連携してルールメイキングを行う姿勢は、単なる一企業の利益を超えた「権威性(Authoritativeness)」と「信頼性(Trustworthiness)」を感じさせる。レガシー領域に挑む全てのビジネスリーダーにとって、彼女の戦略は一つのバイブルとなるだろう。

(文=BUSINESS JOURNAL編集部)