アスレジャー市場、10年で倍増へ…スポーツウェアが普段着化、60兆円市場に急成長

高価格帯:ブランド体験の提供
 ルルレモンやゴールドウインは、機能性に加え「ライフスタイル」や「コミュニティ」を提供し、価格プレミアムを正当化している。

中価格帯:既存顧客の取り込み
 ユニクロやオンワードなどは、既存の顧客基盤を活かし、機能性を日常服に組み込む戦略を採る。最も競争が激しいゾーンである。

低価格帯:機能の民主化
 ワークマンは高機能を低価格で提供し、市場の裾野を一気に拡大させた。

「現在の市場は“ブランド志向”と“合理志向”の二極化が進んでいます。中価格帯は最も難しいポジションにあり、差別化ができなければ収益性が圧迫される構造です」(同)

サプライチェーンにも広がる変革

 市場の拡大は川上にも影響を及ぼしている。素材メーカーによる機能素材の開発競争、サステナブル素材の導入加速が顕著だ。

 すでにアスレジャーブランドの約57%がリサイクル素材を採用しており、環境対応は「差別化」から「必須条件」へと移行しつつある。

 また、ナイキと日本の繊維メーカーの協業や、アシックスによる気候対応型製品の開発など、日本企業の技術がグローバル競争の中で重要な役割を担っている。

 アスレジャーの購買層は従来のスポーツ愛好家にとどまらない。

・女性が市場の中心
・男性市場が急成長
・「快適性」が最重要要因(約64%)

 特徴的なのは、購買動機が「デザイン」より「実用性」にシフトしている点である。

課題とリスク――成長の裏側

 市場拡大の一方で、いくつかの課題も顕在化している。

価格の壁
 プレミアムブランドの価格は参入障壁となり、需要の取りこぼしを生む。

模倣品の拡大
 ECの普及により偽造品の流通が拡大し、ブランド価値を毀損するリスクが高まっている。

トレンドの短命化
「アスレジャー疲れ」という指摘もあり、次のトレンドへの移行リスクは常に存在する。

「アスレジャーは長期トレンドである一方、商品単位ではコモディティ化が進みやすい。ブランドは“機能”以外の価値をどう設計するかが問われます」(同)

10年後を左右する4つの潮流

 今後の市場を規定する要素として、以下が挙げられる。

・スマートファブリック(センサー内蔵衣料)
・ワークレジャーという新しい服装概念
・サステナブル素材の標準化
・アジア市場への展開

 これらは単なる延長線ではなく、市場の質的転換を伴う可能性がある。

 アスレジャーの本質は、衣服の進化ではない。それは「時間効率」「健康志向」「多用途性」という現代人の価値観が、衣服という形で具現化した現象である。

 素材メーカー、スポーツブランド、ファストファッション、作業服企業――異なる出自のプレイヤーが同じ市場で競争するこの領域では、「誰のどの課題を解決するのか」という問いへの解像度が勝敗を分ける。

 今後10年、競争の焦点は明確だ。機能・デザイン・サステナビリティの三位一体を、どの企業が次の次元へ引き上げられるか。

スレジャーはもはやファッションではなく、生活そのものを再設計する産業へと進化している。

(文=BUSINESS JOURNAL編集部、協力=高野輝/戦略コンサルタント)