首都圏郊外の高価格化は千葉にとどまらない。
2025年度上半期の首都圏新築マンション平均価格は前年比19.3%増の9489万円と過去最高値を更新した。地域別では、埼玉県が前年比25.1%増、神奈川県が22.6%増と特に高い伸び率を記録した。横浜・川崎といった主要都市だけでなく、神奈川では藤沢・海老名のような「準主要駅」まで億ション水準に近づきつつある。埼玉では大宮・浦和の駅前直結物件が「億超え当然」の価格帯に定着した。
「都心が高いから郊外へ」という代替戦略が、郊外においても通用しなくなってきている。これが2026年時点の首都圏住宅市場の最大の変質点だ。
こうした高騰が続く中で、最も問われるのは「出口戦略」だ。
中古市場では二極化が鮮明になっている。東京23区の年間中古マンション平均価格が前年比34.6%増の1億393万円と急騰する一方、埼玉県や千葉県の上昇率はプラス3%台にとどまっている。つまり、千葉で1億円超えの新築を購入した場合、中古市場における価値の維持は容易でない可能性がある。プレミストタワー船橋のような「県内唯一の最高層・駅直結」という希少性を持つ物件は流動性が保たれる期待が高い一方で、それ以外の「便乗高値」物件には注意が必要だ。
不動産経済研究所の予測では、2026年の首都圏新築マンション供給戸数は約2万3000戸と、過去50年で最低水準になる見通しだ。デベロッパー各社は価格高騰による売れ残りリスクを警戒し、供給を絞る傾向を強めており、供給減少は価格の下支え要因になる。
しかし、実需層の視点に立つと問題は深刻だ。東京23区の新築マンションは2022年以降3年連続で平均1億円超が続いており、ファミリー層を中心とした郊外化の流れはさらに加速している。ところが、その受け皿となるべき郊外エリアも急騰してしまった今、地元の一般的な会社員が地元でマイホームを取得できない「住宅難民化」は現実味を帯びている。
マンション市況に詳しい不動産アナリストの伊藤健吾氏は、こうした高額ローンのリスクをこう警告する。
「金利上昇局面において、1億円超のローンを抱えた世帯の脆弱性は過小評価されがちです。変動金利が1%台後半に上昇した場合、毎月返済額への影響は相当に大きい。特に、収入が二人前提のパワーカップル世帯は、育児・転職・健康上の変化などで収入が減少した際の備えが不可欠です」
こうした市場環境を踏まえ、ファミリー層を中心とした実需層の郊外化は2026年以降も継続していく公算が大きい。では、どこに目を向けるべきか。
注目すべきは、「今は目立たないが再開発計画が具体化しつつある準・準主要駅」だ。千葉県内であれば柏や松戸、神奈川では小田急沿線の本厚木・相模大野、埼玉では東武東上線沿いの川越・坂戸エリアが候補に挙がる。いずれも都心へのアクセスが一定程度確保されており、まだ大規模再開発が価格に完全に織り込まれていない。
重要なのは、「広さ」と「駅距離(資産価値)」のトレードオフを自分のライフプランと照らして冷静に設計することだ。流行のタワーマンションを追うのではなく、人口動態と公共インフラ整備の方向性を確認したうえで、10〜20年後の街の姿を見据えた物件選定こそが、ビジネスパーソンとしての不動産リテラシーといえる。
「千葉平均1.3億円」という数字が示すのは、バブルの再来でも新常態への移行でもなく、選別の時代の到来だ。一部の希少物件への資金集中と、大多数の実需層の選択肢縮小が同時に進行しているこの局面こそ、感情ではなくデータとロジックで不動産を選ぶ力量が問われている。
(文=BUSINESS JOURNAL編集部、協力=秋田智樹/不動産ジャーナリスト)