Sacraの推計では、アンソロピックの2026年4月時点の年換算売上は約430億ドルに達する。仮にエンタープライズ需要とClaude Codeの勢いが継続するなら、2028年には700億ドル・キャッシュフロー170億ドルという社内予測(The Information報道)も荒唐無稽ではない。しかし、競合もOpenAI・グーグル・メタのいずれも次世代モデルに巨額投資を継続しており、技術的優位の賞味期限は常に短い。
生成AIをめぐる競争の前提が変わりつつある。「誰が最も多くの資金を投じたか」ではなく、「誰が最も深く、安全に企業の基幹業務に入り込んだか」が勝敗を決める時代へ――それは、ERP・SaaSが支配してきた伝統的エンタープライズ・ソフトウェア市場の王道ゲームへの回帰でもある。
アンソロピックは「最速」の黒字化をほぼ手にしようとしているが、それ以上に重要なのは、「安全性」という当初は地味に見えた選択が、今や最大の競争優位に変わったという逆説だ。AIの熱狂(ハイプ)が実体経済と結びついた「産業化」へと移行するとき、生き残るのは資金力だけでなく、企業のリアルな課題に応え続けられる存在である。アンソロピックの黒字化予測は、その始まりを告げる一つの証左に他ならない。
(文=BUSINESS JOURNAL編集部、協力=小平貴裕/ITジャーナリスト)