住友金属鉱山、国内初のEV電池リサイクル工場を稼働…年間1万トン処理の勝算は

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●この記事のポイント
住友金属鉱山が愛媛県で国内初の商業規模EV電池リサイクル工場を稼働。乾式・湿式ハイブリッド製錬で使用済み電池を年間約1万トン処理し、ニッケル・コバルト・リチウムを高純度回収、正極材へ再供給する。米レッドウッド・マテリアルズや中国CATL系Brunpとの比較を交え、資源循環市場での勝算を分析。

 9月11日、愛媛県西条市。住友金属鉱山の東予工場で開かれた竣工式典に、経済産業省や環境省、愛媛県の担当者、そしてリサイクル関連企業9社の関係者が顔をそろえた。式典自体は地味なものだったが、そこで動き出したのは日本国内で初めてとなる商業規模のEV用リチウムイオン電池リサイクルプラントである。東予工場(乾式処理)とニッケル工場(湿式処理、新居浜市)の二拠点を連携させ、年間約1万トン(電池セル換算)の使用済み電池を処理し、ニッケル・コバルト・リチウム・銅を回収する体制が整った。

 一見すると、環境配慮に熱心な素材メーカーのCSR事業のように映るかもしれない。しかし実態はそう単純ではないだろう。地球から資源を掘り出す「動脈産業」(採掘・製錬)に軸足を置いてきた伝統的な鉱山会社が、都市に堆積した廃棄物から資源を取り戻す「静脈産業」(リサイクル)へと、事業の重心を広げようとしている——今回の稼働は、その転換の一つの節目として捉えるべきだ。なぜ住友鉱山はこのタイミングで巨額を投じたのか。そして資金力で先行する欧米・中国勢との競争で、どこに勝機を見いだしているのか。

●目次

押し寄せる”ブラックマス”と資源リスク

 ニッケルやコバルト、リチウムといったレアメタルは、埋蔵地域が一部の国・地域に偏っている。コバルトはコンゴ民主共和国、リチウムはオーストラリアや南米の「リチウムトライアングル」に集中し、精錬工程では中国が圧倒的なシェアを握る。地政学リスクと価格の乱高下は、EVメーカーやバッテリーメーカーにとって長年の悩みの種だった。

 ここに、法規制という追い風が加わる。EUが2023年に成立させた「バッテリー規則」は、産業用・EV用電池(容量2kWh超)について、コバルト・リチウム・ニッケル・鉛のサプライチェーンに関するデューデリジェンスを2027年8月までに義務づけるほか、2031年を最初の節目として、電池材料に一定割合の再生材使用を求める方向性を打ち出している。具体的な義務化水準は今後の実施細則で固まっていく段階だが、「リサイクル材をどれだけ確保できるか」が、EVメーカーの事業継続を左右しかねない局面に入りつつあるのは間違いない。

 さらに大きいのが、市場の「臨界点」が近づいていることだ。世界的にEVが普及し始めたのは2010年代後半からで、当時搭載された電池パックはおおむね8〜10年程度で寿命を迎える。つまり2026年前後から、初期のEVやハイブリッド車の電池が本格的に交換・廃棄の時期を迎え始める計算になる。海外調査会社の推計では、EV電池リサイクルの世界市場は2025年時点で38億ドル程度とされ、2030年には130億ドル近くまで拡大するとの見方もある(年平均成長率27%程度)。金額の絶対値はまだ大きくないが、成長カーブとしてはかなり急な部類に入る。

「電池の材料調達は、これまで『掘るか、買うか』の二択でしたが、規制と需給の両面から『取り戻す』という第三の選択肢の比重が急速に高まっています。ここ数年は準備段階でしたが、実際に商業規模の設備が動き出すことで、この分野の実力が試される局面に入ったと言えるでしょう」(エネルギー政策研究家・佐伯俊也氏)