ここで押さえておきたいのは、これが小児ADHDの治療補助であり、高齢者の認知症予防をうたう製品とは性格が異なる点だ。もう一つ、開発元のAkili社自身は商業化に苦戦し、2024年7月に米Virtual Therapeutics社の完全子会社となった。医療機器として認められることと、事業として回ることは別の課題だという教訓は、この領域に参入する企業にとって重い。
「歩いて稼ぐ」の急成長と急減速
歩数に応じて暗号資産を得る「Move to Earn」の代表格STEPNは、2022年5月に月間アクティブユーザーが70万人を超えた。しかしトークン価格の下落とともに利用者は急減した。金銭的な報酬だけで継続を支える設計の脆さを、市場が短期間で示した例といえる。
VRで「一緒に出かける」
米Rendever社は、高齢者施設向けに複数のVRヘッドセットを同期させ、旅行や思い出の場所を入居者同士で一緒に体験できるサービスを提供している。米カリフォルニア大学サンタバーバラ校の研究チームは、米国立老化研究所から200万ドルの助成を受け、施設の高齢者と離れて暮らす子どもが一緒にVR体験をする効果を、12施設・200組を対象とした臨床試験で検証している。先行するパイロット研究では孤独感の低下が報告されたが、効果の大きさや持続性はまさに検証の途上にある。
シニアeスポーツは「自治体事業」の段階へ
2021年、秋田市の企業が65歳以上だけで構成するプロeスポーツチーム「マタギスナイパーズ」を立ち上げ、国内初の試みとして話題を集めた。それから数年で、シニアeスポーツは自治体の事業に組み込まれ始めている。福島市は2026年7月、老人クラブ会員約500人が参加する高齢者スポーツ大会に合わせ、シニア向けeスポーツ交流会を開いた。11月8日には、60歳以上を中心とした全国大会「ねんりんピック彩の国さいたま2026」で、12歳以下・13〜59歳・60歳以上の三世代でチームを組むeスポーツ大会が予定されている。
健康ポイントは「チーム戦」へ
より地道に広がっているのが、アプリと健康ポイントを組み合わせた自治体の取り組みだ。東京都八王子市の「てくポ」は2021年10月に始まり、60歳以上の利用者は1万3140人(対象高齢者の約7%)、累計歩数は約261億歩に達した。歩数データから推定した医療費の抑制額は約16億円という試算も出ている。あくまで試算である点には注意が必要だが、継続利用の規模としては注目に値する。
静岡市は2026年9月、65歳以上を対象に「しずさんポ」を始めた。歩数や脳トレの目標達成で年最大5000円分のポイントがたまり、PayPayなどに交換できる。背景には、対面型の体操教室で参加者が固定化していたという課題があった。東京都港区の「チャレンジみなと」は、最大5人のチームで日々の歩数を報告し合う仕組みで、2026年9月からは地域の電子ポイントとも連動させた。
共通しているのは、個人の数字を追わせるだけでなく、仲間やランキングといった社会的な要素を報酬設計に織り込んでいる点だ。STEPNの経験と照らし合わせると、その意味がよく見えてくる。
「金銭的なインセンティブは始めるきっかけとしては強力ですが、報酬が下がれば人は離れていきます。仲間からの期待や、自分に役割があるという感覚を組み合わせたほうが、行動は長続きしやすい傾向があります」(同)
一つ目は、データの活用だ。ゲームのプレイ履歴や歩数の推移から、生活機能の変化に早めに気づく仕組みには需要があるだろう。ただし、疾病の兆候を示すような機能はプログラム医療機器の規制対象になり得る。個人情報の扱いと本人の同意も前提条件になる。