NTTドコモはスタジアムやアリーナなどの施設運営ビジネスを強化している。現在運営に関わるのは東京都の有明アリーナとMUFGスタジアム(国立競技場)、兵庫県のGLION ARENA KOBE、愛知県のIGアリーナの4つだ。2030年にはJR東静岡駅前に新たなアリーナの開業も控えている。同社執行役員でコンシューマサービス本部エンターテイメントプラットフォーム部長の櫻井稚子さんに展望を聞いた。
従来、日本の興行施設はスポーツを「観る側」よりも「する側」の視点に傾倒してきました。観客への価値提供のあり方において、米国や欧州から後れを取っていたのです。
潮目が変わったのはこの10年のこと。「日本再興戦略」の中で「スタジアム・アリーナ改革」が謳われ(16年)、エスコンフィールドHOKKAIDOの着工も控えていた19年に、当社は施設運営ビジネスの「初手」として有明アリーナの運営に参画しました。
この事業は当初、5Gなど新しい技術の価値をいかに訴求できるかを試す「テクノロジーショーケース」のような位置付けでしたが、今は「リアルとデジタルの融合」を提供できる場であると捉えています。
今年2月には、横浜の多目的アリーナ「横浜BUNTAI」とIGアリーナを、低遅延・大容量通信を実現する次世代通信技術「IOWN(アイオン)」で接続し、離れた会場同士で行われるパフォーマンスをリアルタイムで連携させることで、2つの会場がまるで1つのステージのように一体化した演出を実現しました。会場間の通信遅延は0.002~0.003秒ほど。多くの称賛をいただけました。
単なる観戦や応援にとどまらない「未来型の体験」を提供できれば、コアなファンだけが訪れる場所からライトなファンも集客できる拠点に成長します。それがスポーツのファンを増やす一手となり、好循環を生むことを期待しています。
とりわけ、IGアリーナにはグローバルな設計・サービスを取り入れました。11トントラックがそのまま入れる搬入口や30メートルの天井高など、サンフランシスコのNBAチーム、ゴールデンステート・ウォリアーズの本拠地で多目的施設の「チェイス・センター」をはじめとした海外の成功モデルも複数参考にしています。
重要な点は、行政と一丸となって構想を描いたことにあります。アリーナは30年事業です。「観客としてもアーティストとしても訪れたくなる名古屋に」という愛知県知事の大村秀章さんからの強い希望とコミットがあってこそのことでした。
IGアリーナができて以降、周辺施設の売り上げは124%に増えています。こうしたデータマーケティングを地域に還元し、まちの経済成長をともに考え担っていくことは、当社が全国の店舗で地域の方々に長年支えられてきた恩返しにもつながると考えています。
NBAで活躍する八村塁さんも、IGアリーナを「NBAに一番近いアリーナだと思う」と評価してくれました。子どもたちにとって、「あんなに格好良い会場で、あの歓声の中で試合をしてみたい」という憧れを持つような、シンボリックな場所にしていくことは極めて重要です。
日本の象徴のような競技場を、日本の象徴にし続ける使命が私たちにはあります。決して、今がゴールではありません。世のため、人のために変わり続けていきます。