孤独は「1日15本の喫煙」に匹敵…ゲームとeスポーツが挑む健康長寿ビジネスの現在地

 二つ目は、アクティブシニアという顧客層の捉え直しだ。総務省によれば、65歳以上の就業者は943万人と22年連続で増え、過去最多を更新した。仕事を続け、スマートフォンを日常的に使う層に対しては、「病気予防」を前面に出すより、競技性や上達の手応えを主役に据えたサービスのほうが届きやすいと考えられる。

 三つ目は、世代間交流だ。ねんりんピックの三世代大会のように、孫世代と祖父母世代が同じチームで戦う場は、自治体・ゲーム会社・スポンサーのいずれにとっても関わりやすい。

事業化を阻む3つの壁

 第一の壁は、デジタルへの不慣れだ。静岡市はアプリ導入に合わせて週1回の相談窓口を設け、福井県の実証事業でも老人クラブ向けの講習会が開かれた。人による導入支援を前提にした設計が欠かせない。暗号資産のウォレット管理のような仕組みは、多くの高齢者にとって参加の壁を一気に高くしてしまう。

 第二の壁は、「子ども扱い」されていると感じさせない品質だ。大人が本気で打ち込める競技性や見た目の作り込みがなければ、利用は一時的なものにとどまる。

 第三の壁は、継続率と費用負担だ。誰がお金を払うのか。公的保険、自治体、企業の健康経営、本人。この組み合わせを最初から描いておかないと、効果が出る前に事業が息切れしかねない。

「デジタル治療の多くは、承認を得た後の普及段階で苦労してきました。技術や効果の検証と同じくらい、支払い手を誰にするかという設計が事業の成否を分けます」(同)

「長生きする社会」から「もっと生きていたくなる社会」へ

 若返りの医療やテクノロジーがどれほど進んでも、それを使う人に「明日も続けたい理由」がなければ、ロンジェビティ経済は片肺飛行のままだ。ゲーム、eスポーツ、VR、健康ポイント。手段はばらばらに見えるが、目指す先は同じで、楽しさを入り口にして人と人をつなぎ直すことにある。

 一方で、効果の科学的な検証も、持続可能な収益モデルも、まだ答えが出そろってはいない。だからこそ、自社のコンテンツや場所、コミュニティを運営する力が、「長生きを楽しくする」装置としてどう生かせるのかを、いまのうちに問い直しておく価値がある。

(文=BUSINESS JOURNAL編集部、協力=岩崎理恵/経営コンサルタント)

【主な参照データ・出典】
総務省統計局「統計からみた我が国の高齢者-『敬老の日』にちなんで-」(2026年9月)
WHO Commission on Social Connection 報告書(2025年6月30日)
厚生労働省「認知症及び軽度認知障害の有病率調査並びに将来推計に関する研究」(九州大学・二宮利治教授、2024年5月公表)
塩野義製薬プレスリリース(2025年2月18日)
UCSB News(2021年)、Rendever関連報道