住友生命の「保険選びAI」は何を変える?2028年ルール改正が迫る“推奨理由”の可視化

「AIを使った提案を受けたら、『なぜこの商品なのか』と『ほかの候補はなぜ外れたのか』の両方を聞いてみてください。きちんと答えられる募集人なら信頼していい。答えられないなら、AIを入れても中身は以前と変わっていないということです」(同)

他社への波及と、これからの競争軸

 2028年3月という期限がある以上、乗合代理店向けの支援システムをめぐる競争はすでに始まっている。保険代理店向けシステムを手がけるhokanは、2026年9月から比較推奨の運用を支援するサービスを始めた。大手生保でも、明治安田生命が2024年度からの中期計画で、生成AIを使った営業職員向けの提案活動支援アプリを導入するなど、AIの活用は広がっている。

 今後数年で、意向の整理や証跡管理にAIを使うことは、業界の標準装備に近づいていくとみられる。そうなれば、ツールそのものでは差がつきにくい。

「似たようなAIが行き渡れば、勝負はツールの外に移ります。AIが出した候補を、顧客自身の言葉で説明し直せるかどうか。結局は募集人の教育と、手数料に左右されない評価制度をつくれるかにかかってくるでしょう」(同)

AIが映し出す「営業の本当の仕事」

 今回の取り組みは、AIが営業担当者を置き換える話ではない。推奨の理由を見える形で残す道具を、制度の変化に合わせて整える話だ。

 説明や比較の整理をAIが引き受ければ、人の側に残るのは、迷いを聞き取ること、不安に付き合うこと、決断を急がせないことだろう。データが示すとおり、顧客が営業職員に評価してきたのも、もともとそうした部分だった。

「AIのほうが信用できる」という感覚の正体は、AIへの信頼というより、理由の見えない推奨への不信なのかもしれない。新ルールの施行まで、あと1年5カ月。その不信を解く主役は、AIではなく、AIを使いこなす人の側にある。

(文=BUSINESS JOURNAL編集部、協力=荒井友美/ファイナンシャルプランナー)

【主な参照データ・出典】
住友生命・アイリックコーポレーション・Finatext 共同発表「乗合保険代理店向けデジタル支援ソリューションの共同開発について」(2026年9月28日)
Finatext プレスリリース(PR TIMES、2026年9月28日)
金融庁「令和7年保険業法改正に係る内閣府令等及び『保険会社向けの総合的な監督指針』等の一部改正(案)に対するパブリックコメントの結果等の公表について」(2026年8月28日)
第一生命経済研究所「生命保険営業職員チャネルは本当に衰退しているのか?」(2026年3月)
インプレス IT Leaders「住友生命、AI活用の顧客情報管理・営業職員育成システムを構築」(2024年9月)