札幌ドームが黒字転換できた理由、日ハム移転から3年、「公共施設」として地域に貢献する経営はどうやって実現したのか?

2026.09.04 Wedge ONLINE

 誰も観客がいないはずの札幌ドーム(大和ハウス プレミストドーム)スタンド3階のボックスシートに、2人の高校生が参考書を広げて勉強をしていた。

札幌ドームを見下ろし自習する高校生たち(WEDGE)

 ドームを管理・運営する札幌市の第三セクター札幌ドームが今年6月にオープンした自習スペースだ。地域に根差す施設として、試合のない日も住民らに活用してもらおうと始めた。

 札幌市内に住む鈴木健太さん(17歳)は「野球が好きで、よくファイターズの試合を観に来ていました。思い出深いこの場所で静かに勉強ができてうれしい」と話す。スタジアム内にはキッズパークをはじめ、市内を一望できる展望台でヨガ教室を行うなど、様々な工夫をこらす。敷地内にバスケットコートやスケートボードエリアも設置している。

 同社の2025年度決算は、北海道日本ハムファイターズが北広島市へ移転する前の22年度以来、3期ぶりの営業黒字となり、純利益も1億円を超えた。年間70試合にもおよぶプロ野球という〝収入源〟を失う中で、新たな取り組みで黒字転換させた。

 札幌ドームは、5大ドームの中で唯一の公共施設だ。施設使用料は所有者である札幌市の条例で決められているという制約がある。

 なぜ黒字転換できたのか。

 その要因を、昨年6月から代表取締役社長を務める阿部晃士さんは「ドーム誘致に尽力されてきた先人たちの夢やロマンの灯を消さず、目的を明確にした」と話す。

札幌ドームの阿部晃士代表取締役社長(WEDGE)

 阿部さんが社長就任以降目指したのは「貸館業」からの脱却だ。スポーツイベントで場所を貸し、施設使用料を受け取ることのみで終わっていたのを、関連する需要を〝自前〟で手配し、収入にするべく、国内旅行の企画などができる第二種旅行業を取得。札幌市内のホテル事業者とも提携し、ドームと市内を周遊する取り組みのほか、学会や会議、展示会などの「MICE(マイス)」の誘致を行っている。

目指す姿は何か?

 さらに、国家資格「二等無人航空機操縦士」の取得を目指す「ドローンスクール」を6月に開校。農業や空撮の実装拠点や、長期目標として、アーバンスポーツの「日本初、世界大会誘致」も目指したいという。冬には、雪遊びやスノースライダー、スノーストライダーができる都市型スノーパーク「DOME Snow Zone」を作り、国内外から観光客を取り込む。

 阿部さんは「公共性と収益をバランスさせ、スポーツに限らず、『全天候型多目的施設』で、地域と共生・共創しながら、この街をさらによくしていきたい」と意気込む。