どちらが優れているかは一概には言えない。資本を伴う提携は結びつきが強い一方、解消には大きなコストがかかる。契約ベースの協業は合意形成に手間がかかるが、条件が合わなければ見直しやすい。経営統合の破談を経た3社が、後者を選んだのは自然な流れともいえる。
「資本の裏付けがない協業は、案件ごとに利害を調整しなければならず、その度に交渉コストが生じます。ただ、押さえるべきは個々の案件の成否より、小さな成功を重ねて社間の信頼を制度として定着させられるかどうか。OEMはその入口としてはわかりやすい題材です」(戦略コンサルタント・高野輝氏)
合理的な判断であっても、うまくいく保証はない。課題は少なくとも三つある。
一つ目は差別化だ。OEM車はコストを抑えるため、外観の違いがフロント周りなどに限られることが多い。同じ車が三菱自、日産、ホンダの3ブランドで並ぶ可能性もある中で、「ホンダで買う理由」をどう示すか。保証やアフターサービス、金融商品といった、車体の外側での工夫が問われそうだ。
二つ目は、利益配分と意思決定の調整だ。供給価格や引き取り台数、モデルチェンジの時期を巡って、供給する側と受ける側の利害は必ずしも一致しない。資本関係がない分、契約の設計と現場同士の信頼関係がそのまま協業の強度になる。
三つ目は時間軸。発売は28年以降と、まだ先の話だ。その間にも、中国メーカーは東南アジアやオセアニアで電動ピックアップの投入を進めている。ディーゼル車で市場に入るホンダが、電動化の波にどう備えるかも、いずれ問われるだろう。
それでも、今回の動きには経営の意思決定として学ぶべき点がある。自前主義を「捨てた」と見るより、「自前で持つ領域を絞り込んだ」と見る方が実態に近い。ホンダはソフトウェアやHV、二輪といった強みに資源を寄せ、貯えのないラダーフレーム車は得意な相手から調達する。中国の急変が、その線引きを前倒しで迫ったともいえる。
これは自動車業界に限らない問いだ。自社の強みと弱みを棚卸しし、事業ごとに「自ら作る」「借りる」「組む」を選び分ける。その判断をどれだけ早く、かつ冷静に下せるか。ホンダと三菱自の「第1弾」が成果を出せるかは、28年以降の現地の販売動向と、その後に続く協業の中身が示してくれるはずだ。
(文=BUSINESS JOURNAL編集部、協力=荻野博文/自動車アナリスト)
【主な参照データ・出典】
三菱自動車がトライトンをホンダにOEM供給?(マイナビニュース、10月14日)
四輪事業で苦戦のホンダ、三菱自動車からタイ生産の『トライトン』をOEM供給へ(レスポンス、10月9日、読売新聞報道の紹介)
ホンダ、2027年3月期第1四半期決算(MONOist、8月6日)