ホンダはなぜ三菱自のトラックを売るのか…中国53%減、タイ日系シェア低下の先

なぜ東南アジアで、なぜトライトンなのか

 中国の次に重みを増すのが東南アジアだ。ただ、ここも「日系の牢城」と安心できる場所ではなくなりつつある。

 タイの2025年の新車販売は62万1166台で、前年比8.5%増となった。ホンダは7万3942台(3.4%減)と、トヨタに次ぐ二番手を守っている。一方で日系ブランドの合計シェアは、24年の76.7%から25年は69.3%に下がった。BYDが47.5%増と伸ばすなど、中国勢がEVを軸に存在感を増している。

 ホンダが抱える「空白」は、この市場の成り立ちを見るとわかりやすい。タイの25年販売のうち、乗用車が約24万台、商用車が38万台余り。商用車の大半を占めるのが、1トンピックアップだ。シティやHR-Vなど乗用車で強いホンダは、この領域に商品を持たない。北米には「リッジライン」があるが、モノコック構造の乗用車ベースで、新興国で好まれるラダーフレーム車とは性格が違う。

 トライトンは、三菱自にとって世界戦略の柱となるモデルだ。ラダーフレームに2.4リットルディーゼルターボを組み合わせ、タイやインドネシアで高いシェアを持つ。ただタイの国内市場は2019年の約100万台から縮小し、生産台数もピークの13年(246万台)に対して25年は145万台。現地工場の稼働率をどう維持するかは、三菱自にとって切実な課題だ。

 その解決策として、三菱自はすでに先例を作っている。25年12月20日から、トライトンをベースとする日産向け「ナバラ」をタイのレムチャバン工場で生産し、オセアニアへ供給している。ホンダ向けが加われば、同じラインでさらに量を積める計算になる。

 ホンダ側から見れば、これは「時間と投資リスクを買う」判断といえる。商用需要の強いピックアップは、耐久性や整備体制で評価が決まる。実績のない新型車を自社で開発し、信頼を積み上げるまでの時間を考えれば、実績のある車両を借りる方が合理的だ。

「タイやインドネシアで、ピックアップは毎日の仕事の道具です。壊れにくさと、地方の販売店ですぐ直せるかどうかが全てと言っていい。そこに新参入のブランドが入るなら、実績のある車をベースにするのは理にかなっている。ただ、ホンダの販売網はこれまで個人客が中心。法人や自営業の客をどう取り込むかが、実際の勝負どころになるでしょう」(同)

「資本で縛らない」3社協業の現在地

 今回のOEMは、単独の取引というより、3社協業の流れの中に置くと意味が見えやすい。

 経緯を整理すると、ホンダと日産自動車は2024年8月から三菱自を交えた3社で協業を検討してきた。ホンダと日産の経営統合協議は25年2月に打ち切られたが、事業単位の協議は続いた。26年8月31日には、両社が次世代SDV(ソフトウェア定義車両)の中核となるECUとソフトウェアの共通化に向け、共同開発契約を結んだ。29年度以降の新型車への搭載を目指す。

 そして今回のトライトンは、ホンダと三菱自の「提携第1弾」と報じられている。読売新聞によれば、ホンダは他車種のOEM供給や、メーター・ディスプレーなど運転席周りの部品の共同開発も検討しているという。

 ここで注意したいのは資本関係だ。日産は三菱自株の26.67%(26年3月末時点)を持つ筆頭株主で、9月には出資を維持する方針も報じられた。一方、ホンダはどちらとも資本関係を持たない。3社の関係は、日産と三菱自の既存の資本提携に、ホンダが「案件ごとの契約」でつながる形だ。

 対照的なのがトヨタ自動車だ。ダイハツを完全子会社とし、SUBARU、マツダ、スズキとは出資を伴う資本業務提携を結んでいる。出資という長期的なコミットメントを土台に、部品や技術の共通化を進めてきた。