東京ヤクルトスワローズ 髙津流マネジメント2025

いよいよ始動する髙津スワローズ2025――
開幕を奥川に託した並々ならぬ思いを明かす

大事な開幕戦を奥川に託す理由

――3月1日のジャイアンツタウンでのピッチングを見て決めた。でも、しばらくの間は発表しなかった。さらに球団公式Xで前夜に「明日の朝 開幕投手発表します」と予告の上、翌朝に「奥川恭伸」と発表する。この間の経緯は?

髙津 まずは、「本人にきちんと伝えること」をいちばんに考えました。これはヤスだけじゃなくて、吉村にも奎二にも、「同時に伝えた方がいい」と思いました。それぞれ数時間の差はあったけれど、3人ほぼ同時に伝えました。このタイミングがよかったかどうか、ちょっとよくわからないですけど、「ここまで順調に来たのだから、早めに伝えて本人たちの気持ちや身体のこともしっかり調整させた方がいいな」と思っていたのがその日でした。

――それをファンにああいう形で伝えると決めたのも監督だと聞きました。それはどういう狙いだったんですか?

髙津 「何か面白いことないかな?」と思っていたんですけど、偶然にも、12球団で唯一公表していなかったので、みなさんも知りたがっているところだと思ったので、「Xでみんな同時に発信した方がいいんじゃないかな」と思って、そうしました。球団スタッフは「すごい反応ですよ」と言っていましたね。僕としては、「みなさんに同時に知ってほしかった」という思いだったので、ああいう形でやりました。

――開幕先発を伝えたときの奥川投手はどんなリアクションだったのですか?

髙津 監督室に本人を呼びました。練習終わりに、ピッチングコーチと一緒に入ってきたんですけど、「えっ、なんかやっちゃったのかな?」と不安そうな顔をしていたんです、怒られると思って(笑)。で、「開幕を頼むぞ」と告げると、すごい笑顔になったんです。その表情を見ていて、「やっぱりそんなに嬉しいものなのか」と、改めて感じましたね。ホッとしたのか、それとも嬉しかったのか、どっちなんだろう? 両方なのかな? いずれにしても満面の笑みだったんです。

――日本一になった2021年シーズンは、後半戦開幕、クライマックスシリーズ、日本シリーズの初戦をすべて奥川投手に託しました。もちろん実力もそうですけども、彼の持つスター性に託すというか、賭けるという思いはありますか?

髙津 ありますね。もちろん、誰もが特別な選手なんですよ。それはもうヤスだけでなく、(山田)哲人もそう、ムネ(村上宗隆)もそう。吉村も、奎二も、石川(雅規)だって、小川(泰弘)だって、みんなに特別な感情があります。誰を指名しても、特別な選手を指名したとは思うんですけれども、その中でも特に「3月28日に特別な選手を指名した」と思っています。ヤスは、僕が初めてドラフトでくじを引いた選手ですし、一緒に入団して、一緒に監督になって、彼もいろいろ苦労しながら、今を迎えたわけなので、「ぜひもう一歩、次のステップに向けて何とか後押ししてあげたい」という思いがあって、これまでも大事なところで頭に投げさせたりしてきました。今年に関しては、他にも有力な候補がいるにも関わらず、ヤス本人に対しても、チームに対しても、「2025年はこんな気持ちで、こんな形でスタートするよ」というメッセージを込めたつもりです。

――さぁ、今年もシーズンが始まります。監督同様、興奮と緊張とともにこの日を迎えているスワローズファンに向けて、メッセージをお願いします。

髙津 子どもの頃、僕は広島に住んでいて、開幕前になると「あと何日だ」とカープの試合が始まるのを指折り数えていました。遠足や運動会のように、開幕前日、当日ってものすごく興奮したのを覚えています。去年の10月にプロ野球が終わって、年が明けて新人合同自主トレの時期になり、ようやくキャンプが始まって、オープン戦が終わった。こうして迎えた開幕戦というのは、シーズンインに対するワクワク感も最高潮だと思います。ぜひそのワクワクを楽しんでほしいです。今年もぜひ「応燕」をお願いします!

過去の連載をまとめた髙津臣吾監督のビジネス書『明るく楽しく、強いチームをつくるために僕が考えてきたこと』が、大好評発売中!

ご感想はこちら

プロフィール

髙津臣吾
髙津臣吾

1968年広島県生まれ。東京ヤクルトスワローズ監督。広島工業高校卒業後、亜細亜大学に進学。90年ドラフト3位でスワローズに入団。93年ストッパーに転向し、20セーブを挙げチームの日本一に貢献。その後、4度の最優秀救援投手に輝く。2004年シカゴ・ホワイトソックスへ移籍、クローザーを務める。開幕から24試合連続無失点を続け、「ミスターゼロ」のニックネームでファンを熱狂させた。日本プロ野球、メジャーリーグ、韓国プロ野球、台湾プロ野球を経験した初の日本人選手。14年スワローズ一軍投手コーチに就任。15年セ・リーグ優勝。17年に2軍監督に就任、2020年より現職。

著書

明るく楽しく、強いチームをつくるために僕が考えてきたこと

髙津臣吾 /
2021年、20年ぶりの日本一へとチームを導いた東京ヤクルトスワローズ髙津臣吾監...
出版をご希望の方へ