「家族」というチームのつくり方

頑張って働いてるのに「家族から感謝されない人」に欠けている視点(前編)

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休みの日に仕事をすると
奥さんが怒る

皆さんは、日曜日や祝日などの休日に仕事の予定を入れて、奥さんに文句を言われたことはありませんか?

私は仕事柄、同世代の父親たちとお話をする機会が多いのですが、休みの日に仕事を入れると、

「なんで休みの日に仕事を入れるの?」
「平日は私が家のことをやっているのだから、休みの日はあなたが家のことをやって」
「もっと子供との時間を取らないと、子供がさみしがるから遊んであげて」

といったクレームを奥さんからもらうという話をよく聞きます。
とはいえ、こうした愚痴は、家庭を持つ男性にとっていわば「あるある」のようなものとも言えます。しかし、中には本気で「しんどい……」と感じている方も少なくないようです。
平日は仕事に全力を出しながら、休日は休日で家族や子供に全力を出すことを求められる、それがしんどいというわけです。

言うまでもありませんが、文句を言ってきた奥さんに対して、平日の仕事量が多いこと、労働時間も長いこと、さらには稼ぎも多いことを主張しようものなら、モラハラだと言われかねません。

「オレのほうが平日は仕事してるんだから、休日は自分の好きに時間を使わせてくれよ」
「平日もオレだって家事してるじゃん」

そんな発言をしようものなら、

「あなたは家事と育児の大変さがわかっていない」
「私だって家事と育児をしながら働いている」
「私のことを下に見ているんだ」

と、何十倍にもなって返ってきてしまうでしょう。このようなやりとりは、家庭を持つ男性であれば誰しも経験があるのではないでしょうか。

付き合いのゴルフも仕事の出張も
遊びだと思われている?

休日の仕事を理解してもらうのでさえ大変だと思いますが、その仕事がゴルフとなると、理解を得るのはさらに困難でしょう。

私たちビジネスマンは多くの場合、ゴルフをただの遊びとは認識していません。仕事の延長線上にある、長時間コミュニケーションができる社交の場だととらえている人が多いと思います。

私も、お客様から誘いを受けて、ゴルフのラウンドをすることがあります。そうしたゴルフの付き合いによって、顧客になってくれる方と知り合え、お仕事につながることが少なくありませんでした。
ゴルフがきっかけで受注につながった仕事の報酬額をすべて集めると、弊社のような小規模の会社でも、数千万円の売上になっています。大きな会社であれば、さらに大きな金額になっているはずです。

よく「一緒にゴルフをすれば、その人のひととなりがわかる」と言われます。ゴルフ場に向かう車の中、ラウンド中、ランチで食事を取りながら、ラウンド後のお風呂、そして帰りの車の中と、これだけ長時間、仕事で出会った方と時間を共有できる機会はそうそうありません。
ゴルフは私たちビジネスマンにとって、自分自身を知ってもらい、相手を深く知ることができる、大事な関係構築の場であり、事業拡大の機会でもあるわけです。

もちろん、ゴルフ自体が面白いスポーツゲームですので、奥さんからしたら遊びに見えるのは仕方ありません。実際に仕事にかこつけて、ゴルフに熱中している人も少なくないでしょう。
だとしても、仕事関係のゴルフに行くたびに遊んでいると思われると、やはりつらいものがあるでしょう。

出張も、ゴルフと似たところがあります。
私のコンサルティング仲間は地方への出張が多く、新幹線や飛行機で全国飛び回ることが多いのですが、なかなか奥さんに理解してもらえないようです。

私も社会人になる前は、出張で全国各地を飛び回れるだなんてかっこいいな、楽しそうだな、と思っていたのですが、実際に出張するようになってみると、そんなに気楽なものではないとすぐに印象が変わりました。

何より移動が苦痛です。一応移動中に本を読んだり、仕事を済ませたり、映画を観たり、仮眠を取ったりといった、過ごし方の工夫をすることはできますが、移動中は仕事にも娯楽にも適した環境ではありません。
たとえば、忙しい中を時間をつくり、朝5時に起きて早朝の飛行機に乗り、何時間も狭い席に押し込められるという環境なのです。できることなら移動時間を省略できる、どこでもドアが欲しいくらいでしょう。

それにもかかわらず出張族は、奥さんから「あなたは旅行に行ける機会があっていいね」という、皮肉っぽいニュアンスで言われてしまう。このようなとき、言われた旦那さんは奥さんに対して「自分の仕事への理解が足りない……」と、つらく感じてしまうのではないでしょうか。

平日の日中は仕事を頑張り、夜は家事育児に奮闘。それで、休日に仕方なく仕事を入れれば、きつく責められる。そんな場合、ストレスをどう発散したらいいのでしょうか。
せめて、「日曜日に仕事をしてくれてありがとう」とか「休みの日にまでゴルフをして、大変だね」とか、「出張の行き帰り、大変じゃない?」といったねぎらいの言葉があれば、ストレスも疲れも吹っ飛んで「いやいや、全然大丈夫!」と答える元気もわいてこようというものですが、そんな言葉をかけられることはありません。

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プロフィール

高野俊一
高野俊一

組織開発コンサルタント。
1978年生まれ。日本最大規模のコンサルティング会社にて組織開発に13年関わり、300名を超えるコンサルタントの中で最優秀者に贈られる「コンサルタント・オブ・ザ・イヤー」を獲得。これまでに年200回、トータル2000社を超える企業の組織開発研修の企画・講師を経験。
指導してきたビジネスリーダーは累計2万人を超える。
2012年、組織開発専門のコンサルティング会社「株式会社チームD」を設立、現代表。
2020年よりYouTubeチャンネル『タカ社長のチームD大学』を開設。2023年6月現在、チャンネル登録者約3万5000人、総再生回数380万回。
2021年より、アルファポリスサイト上にてビジネス連載「上司1年目は“仕組み”を使え!」をスタート。改題・改稿を経て、このたび出版化。
著書に『その仕事、部下に任せなさい。』(アルファポリス)がある。

著書

チームづくりの教科書

高野俊一 /
成績が振るわない。メンバーが互いに無関心で、いっさい協力し合わない。仕事を...

その仕事、部下に任せなさい。

高野俊一 /
通算100万PVオーバーを記録した、アルファポリス・ビジネスのビジネスWeb連載の...
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