東京科学大学病院、なぜシステム障害→業務混乱は起きた?ベンダー変更のリスク

 病院のシステムというのは、開発において特有の難しさというのは、あるものなのか。

「一般企業と比べて病院の業務は特殊であり、また病院によって大きく異なるため、仮にパッケージソフトを使うにしてもカスタマイズが多く発生します。また、業務をシステムに合わせて変更するというのもハードルが高いでしょう。そしてカスタマイズが多くなるほど仕様漏れも増えますし、結果的にトラブルが増えやすい傾向にあるかもしれません」(田中氏)

医療機関とベンダー間の係争事例

 システム開発をめぐって、医療機関と開発委託先ベンダーの間で生じた係争が訴訟に発展するケースもある。NTT東日本が旭川医科大学に契約を解除されたため開発費用を受け取れなかったとして旭川医大に損害賠償を求めて提訴し、2017年、札幌高裁が旭川医大に100%の責任があるとして約14億1500万円を支払うように命じた(旭川医大は判決を不服として最高裁に上告したが、受理されず)。旭川医大がNTT東日本に対して再三にわたり追加開発を要求したことがプロジェクトの遅延と頓挫の原因となったとされる。

(文=Business Journal編集部、協力=田中健太/データアナリスト、鶴見教育工学研究所)