半導体製造装置「スーパーサイクル」は本物?東京エレクトロン・SCREEN絶好調の裏側

(2)米中対立と中国の国産化
中国は装置の最大市場だが、米国の規制により最先端装置の輸入が制限されている。その結果、成熟プロセス装置の駆け込み需要、中国企業による装置国産化の加速、が同時に進んでいる。短期的には追い風だが、長期的には代替リスクもある。

 このスーパーサイクルの中で、日本メーカーは以下の3方向で戦略を固めつつある。

(1)最先端プロセス領域の継続強化
3nm→2nm→1.4nmと進む微細化に対応できる装置は限られる。最先端世代に食い込めれば、次の世代でも採用され続ける。

(2)先端パッケージング(後工程)への本格進出
AI時代はチップレット化・HBM化が不可避。その切断・研磨・積層など、日本勢が得意な領域が伸びている。

(3)グローバル拠点とサプライチェーンの最適化
各国で工場建設が進むため、装置メーカーも生産拠点や部品供給網を多拠点化し、地政学リスクに備えている。

スーパーサイクルは本物か

●シナリオA:本格スーパーサイクル継続
 ・AI需要が持続
 ・自動車向け半導体が高度化
 ・世界各地で工場建設が続く
最も楽観的なケースで、日本勢は長期の成長を享受。

●シナリオB:AI投資の調整を挟みつつ再加速
 ・短期的に投資減速
 ・普及が進み産業用途で再加速
装置メーカーにとっては「小さな波」を乗り越える局面。

●シナリオC:米中分断の加速、中国の装置国産化
 ・市場が米国圏と中国圏に二分
 ・中国向け輸出が縮小
リスクはあるが、「米欧日韓台」の巨大需要は維持される可能性が高い。

日本の装置メーカーは“世界のインフラ”になれるか

半導体製造装置のスーパーサイクルは、「AIによる計算需要の爆発」と「世界中で同時に進む工場建設ラッシュ」が重なった結果、過去に例のない規模で発生している。

 日本勢は、技術・実績・信頼の3点で世界トップの座を固めており、この巨大サイクルの中心にいる。

 しかし、AI投資の過熱の反動、中国の国産化、米中対立といった構造リスクも待ち受ける。重要なのは、短期の好況に浮かれるのではなく、最先端プロセスへの投資維持、後工程や周辺領域への拡大、グローバルな供給網・サービス体制の強化を通じて、“インフラ企業”としての存在感を固めることだ。

 今回のスーパーサイクルは、単なる追い風ではなく、日本の装置メーカーが「次の10年の立ち位置」を決める決定的な時間となるだろう。

(文=BUSINESS JOURNAL編集部)