OpenAIが広告導入か…“非常事態宣言”の裏に揺らぐAI覇権、迫るグーグルの影

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●この記事のポイント
・OpenAIがこれまで否定してきた広告導入に踏み切る可能性が高まり、ChatGPTの新コードにも広告機能が確認。背景にはGeminiの急伸による競争激化がある。
・OpenAIは売上100億ドル規模ながら推論コスト増で赤字が続き、財務基盤は脆弱。Googleは広告事業で巨額利益を生み、計算資源でも圧倒的優位に立つ。
・2026年前半はAI覇権争いの決着期。OpenAIは広告導入とモデル強化で反撃を狙い、GoogleはGemini強化で主導権を握りに行く構図が鮮明になっている。

 生成AIの主役として世界の注目を集めてきたOpenAIが、これまで固く否定してきた「広告ビジネス」へ踏み込む可能性が急速に高まっている。2025年11月、ChatGPTの新バージョンβ版に埋め込まれたコードの中に、広告配信や検索広告に関する記述が発見されたと米国の複数メディアが一斉に報じた。さらに今月2日には、OpenAI経営陣が社内に対し、ChatGPTを含む主要サービスの改善を指示する“非常事態宣言”を発したとの報道も出た。

 背景にあるのは、グーグルの新モデル「Gemini」の急速な評価拡大だ。各種LLMベンチマークでGeminiがGPT-4やGPT-4oを上回るスコアを記録し、米国のITコミュニティでは「ChatGPTより速く、長文に強い」という声が急増している。OpenAIはこれまで圧倒的なリードを築いたが、いま初めて“追われる側”に回りつつある。

 2026年前半は、AI覇権争いの構図が決定的に変わる可能性のある重要局面となりそうだ。

●目次

OpenAIはなぜ“禁じ手”の広告に踏み込むのか

 ChatGPTが登場して以来、サム・アルトマンCEOは繰り返し「広告はユーザー体験を損なう」と語り、広告ビジネスには否定的だった。2024年にも「広告を入れるのは最後の手段だ」と述べている。

 しかし2025年後半、状況は変わった。海外の開発者コミュニティが11月上旬に検証したところ、ChatGPTの新バージョンβ版のコード内部に「ads」「sponsored」「search_ads」などの文字列が確認された。OpenAIは公式に広告導入を発表していないが、これまでの発言との矛盾から「導入は既定路線では」との観測が一斉に広がった。

 広告導入が現実味を帯びてきた背景について、AI市場アナリストの白井徹次氏は次のように話す。

「広告には安定収益が見込めます。ChatGPTのように莫大な推論コストがかかるサービスでは、利用者が増えれば増えるほど赤字が膨らむ構造です。OpenAIが収益モデルを多様化しなければならない局面に来たことは確かです」

 OpenAIの“禁じ手”の検討は、製品戦略と財務戦略の双方で追い込まれた結果と見るべきだろう。

非常事態宣言の裏にGeminiの急伸と市場評価の逆転

 今月2日、OpenAIが社内に「サービス改善緊急指示」を出したと米国Axiosなどが報道した。公式には詳細を明らかにしていないが、複数関係者の証言から「ChatGPTの品質改善を急ぐ指示」が出ていると伝えられている。

 緊張を高めているのは、グーグルの攻勢だ。

■ベンチマークで広がる「Gemini優位」評価