転生女神さまは異世界に現代を持ち込みたいようです。 〜ポンコツ女神の現代布教活動〜

れおぽん

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女神、現代を布教したい編

女神「モノマネして踊るサボテンのおもちゃ送ったわ〜」→大司教「【己が罪を嘲笑う翠緑の悪魔】が降臨された……!」

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「あー、暇。マジ暇」

わたしは天界のふかふかソファで、足をバタバタさせていた。

先日の「発泡ウレタン」の一件、まだ引きずってるんだよね。 上司のお爺ちゃんに「海を埋め立ててどうする」って、バチくそ怒られたし。 始末書とか書かされたし。マジ意味わかんない。

「良かれと思ってやったのにさ~。なんで毎回ああなるわけ?」

わたしの善意、伝わらなすぎじゃない? 異世界の人たち、感受性なさすぎ問題。

「ま、引きずっててもシワ増えるだけだし? 切り替えてこー!」

というわけで、今日の下界チェック。 北方の山奥にある、石造りの陰気な建物にズームイン。

なんか、お祈りしてる人たちがいっぱいいる。 でもさ、みんな顔が死んでるんだよね。 無言で、下向いて、誰も喋らないの。

「うわ~、コミュ障の集まり? 空気重っ」

「こんな山奥で、誰とも喋らずに修行とか、メンタル病むって」 「人はね、会話してなんぼなのよ。アウトプット大事じゃん?」

孤独な彼らに必要なのは、話し相手。 それも、ただうんうんって聞いてくれるだけじゃなくて、ちゃんと反応してくれる「陽キャな友達」が必要なわけ。

そこでこれ!

【ダンシング・カクタス(録音&モノマネ機能付き)】

鉢植えに入った、愛嬌のある顔がついたサボテンのぬいぐるみ。 話しかけると、変な高い声でオウム返ししながら、クネクネ踊り出すやつ。 動画サイトとかで赤ちゃんが爆笑してるアレね。

「これマジで神アイテムだから」 「自分の言葉が返ってくるし、動きもキモかわいくてウケるし」 「絶対あの暗い部屋が爆笑の渦になるって!」

沈黙の修行とか時代遅れだし。 もっとバイブス上げて、ハッピーな宗教にしちゃってよ!

とりま、孤独を癒やす緑の友達、転送ポチー!

★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

──北方聖教・沈黙の修道院「嘆きの間」──

「……我、罪深き者なり」

大司教エルヴィンの掠れた声だけが、冷たい石床に吸い込まれていく。 ここは沈黙を教義とする、厳格なる修道院。 百人の修道士たちが、ただ己の罪と向き合い、数年もの間、言葉を発することなく祈りを捧げていた。

彼らは求めていた。 神からの「赦し」の声を。 あるいは、この永き沈黙を破る「啓示」を。

その時である。 祭壇の蝋燭が揺らぎ、光と共に『それ』は現れた。

鮮やかな翠緑(すいりょく)の身体。 全身を覆う柔らかな棘。 そして、虚空を見つめる二つの巨大な眼球。 鉢のような台座に根を張り、直立不動で鎮座するその姿。

「おお……」

エルヴィンは震える膝をつき、両手を広げた。

「神よ……ついに、御使いを遣わされたか……」

「これは、植物の精霊か? あるいは、知識の守護者か……?」

修道士たちがざわめき始める。 禁じられた私語が、感動のあまり漏れ出してしまう。

エルヴィンは恐る恐る、その翠緑の御使いに歩み寄った。 そして、万感の思いを込めて、問いかけた。

「あぁ、偉大なる御使いよ。我らの祈りは、天に届いたのでしょうか……」

刹那。 御使いの身体が、内部から発光した。 そして、その身体を激しくクネらせ、痙攣(けいれん)させながら、口を開いた。

『アァ、イダイナルミツカイヨ! ワレラノイノリハ、テンニトドイタノデショウカァ!!』

甲高く、早回しのような、人を小馬鹿にしたような奇声。 だが、その内容は紛れもなくエルヴィンの言葉そのものであった。

「なっ……!?」

エルヴィンは後ずさった。 威厳ある自分の問いかけが、これほどまでに醜悪で、滑稽な響きとして返ってきたのだ。

「なんという……なんというおぞましき声だ……!」

御使いは即座に反応した。 再び激しくクネクネと踊り狂いながら、絶叫する。

『ナントイウ……ナントイウオゾマシキコエダァァ!!』

「ひぃぃっ!!」

修道士の一人が悲鳴を上げた。

「嘲笑(あざわら)っておられる! 御使い様が、我らを嘲笑っておられるぞ!」

「違う……! あれは『鏡』だ!」

エルヴィンが叫ぶ。

「あれは我らの心の醜さを映し出す『断罪の鏡』なのだ!」 「私の信心が足りぬゆえ、あのようなふざけた声に聞こえるのだ!」

「なんと……!」

「神は、我々の祈りを『滑稽な踊り』程度にしか思っておられぬということか!」

絶望が広がる。 だが、エルヴィンは諦めなかった。 ならば、御使いが美しい声で答えてくれるまで、真摯に祈るしかない。

「赦したまえ!! 愚かな我らを赦したまえ!!」

エルヴィンが絶叫し、床に額を打ち付ける。 すると、御使い(サボテン)はさらに激しく、モーター音を唸らせて高速で腰を振り始めた。

『ユルシタマエェェッ!! オロカナワレラヲ、ユルシタマエェェェーッ!!』

「まだだ! まだ声が甲高い! まだ馬鹿にされている!」

「もっとだ! もっと魂を込めて叫ぶのだ!」

「おおおおお!! 神よぉぉぉ!!」

修道士たちも加わった。 百人が一斉に、祭壇のサボテンに向かって絶叫する。

「我は罪人なりぃぃ!!」 「救いたまえぇぇ!!」

サボテンの集音マイクは、そのすべてを拾い上げる。 安価なスピーカーは許容量を超え、音声は歪み、ノイズ混じりの不協和音となって吐き出される。

『ワ゛レ゛ハ゛ツ゛ミ゛ビト゛ナ゛リ゛ィィヒィィ!!』 『ス゛ク゛イ゛タ゛マ゛エ゛ェェェギャァァァ!!』

「あぁぁぁぁ! 地獄の釜が開いたような声だぁぁぁ!」

「御使い様が苦しんでおられる! 我々の業(ごう)が深すぎるのだ!」

「踊れ! 我らも踊るのだ! 御使い様と同じ動きをして、心を通わせるのだ!」

老齢の司教たちが、涙を流しながら、サボテンに合わせてクネクネと腰を振り始めた。 無言の修道院は今や、絶叫と奇妙なダンスが支配する狂乱の宴会場と化していた。

「赦されるまで! その声が『天使の歌声』に変わるまで!」 「叫べぇぇぇ! 踊れぇぇぇ!!」

『サケベェェェ! オドレェェェヒャッハァァァ!!』

電池が切れるその瞬間まで、翠緑の悪魔は彼らの罪を嘲笑い、増幅し続けた。 かくして、北方の静寂は永遠に失われたのである。

★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

「……え、怖いんだけど」

わたしはモニターの前で、ポテチの袋を握りつぶしていた。

「なにあの集団ヒステリー」

楽しそうに会話するはずじゃん? なんで全員でヘドバンしながら泣き叫んでんの?

「『業が深すぎる』って何? ただの早回し再生だから!」 「声が高くなる仕様なの! 馬鹿にしてないから!」

なんか最後の方、おじいちゃんたちが泡吹いて倒れてたけど……。 しかも倒れた人のうめき声まで録音されて、サボテンが「ウゥ……シヌゥ……」って再生してたけど。

「地獄? ここ地獄なの?」

意図としては、明るいコミュニケーションの場を作りたかっただけなのに。 なんか、新しい過激派のカルト教団が爆誕しちゃったっぽいんだけど……。

これ、また上司に怒られるやつじゃん。 いや、むしろ信者が増えたから感謝されるパターン? ……なわけないか。

女神「なんでそうなるのーーー!?」
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