転生女神さまは異世界に現代を持ち込みたいようです。 〜ポンコツ女神の現代布教活動〜

れおぽん

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女神、現代を布教したい編

女神「VRゴーグル(ゾンビサバイバルゲーム入り)送ったわ〜」→異端審問官「【地獄の亡者が見える冥界の仮面】だ……!」

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「あー、アイスうまっ。マジ神の食べ物」

わたしは天界のソファで、高級アイス(バニラ)を舐めながら足をぶらぶらさせていた。

先日の「ダンシング・サボテン」の件、まだちょっと引きずってるんだよね。 北方の修道院が「踊るサボテン教」になっちゃって、毎日クネクネ踊ってる映像が送られてくるんだけど。 上司の爺ちゃんに「お前が作ったカルトだぞ」って説教されたし。

「いや、わたしはただ、孤独を癒やしてあげたかっただけだし?」 「結果的にみんな笑顔で踊ってるなら、ハッピーエンドじゃん?」

ま、済んだことは気にしない! 反省は一瞬、前進は永遠! これわたしの座右の銘ね。

で、今日の下界チェック。 帝国の地下牢獄にズームイン。

うわ~、暗っ。 なんか黒いフード被った人たちが、罪人? みたいな人を囲んでる。 拷問とかしちゃう系? 野蛮すぎでしょ~。

「あんな狭いところで、来る日も来る日も尋問とか、飽きないのかな」 「もっとこう、非日常のスリルとか刺激がないと、マンネリ化しちゃうよ?」

彼らに必要なのは、陰湿な暴力じゃなくて、エンタメとしての「恐怖体験」。 夏だし? 肝試し的なノリで、キャーキャー言ってストレス発散すべきだと思うわけ。

そこでこれ!

【スタンドアローン型VRヘッドセット(ホラーシューティング『THE HOUSE OF THE DEAD』デモ版インストール済み)】

ケーブルなしで被るだけで、360度ゾンビが襲ってくる超リアルなゲーム機。 コントローラーもセットね。

「これマジで怖いから。わたしも漏らしそうになったし」 「地下の暗い雰囲気とマッチして、臨場感バチくそヤバいって!」 「みんなでスコア競って、仲良く盛り上がってよ~!」

レッツ・バーチャル・リアリティ! 転送ポチー!

★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

──帝国異端審問局・地下最下層「真実の間」──

「吐け。貴様が魔女と通じていることは分かっているのだ」

異端審問官長、ヴォルグの冷徹な声が響く。 拷問台に縛られた男は、血と汗にまみれながら首を横に振った。

「ち、違います……私は何も……」

「頑迷なことだ。……おい、次の器具を持ってこい」

ヴォルグが部下に命じた、その時である。 虚空が歪み、石のテーブルの上に『それ』は音もなく出現した。

「……長官。これは?」

部下が恐る恐る指差す。 それは、艶やかな黒曜石のような光沢を放つ、奇妙な形状の面(マスク)。 目元を完全に覆う分厚い構造で、表面には微かな光の点滅が見える。 そして傍らには、握りやすそうな二つの黒い把手(とって)。

「見たこともない意匠だ……。古代の魔道具か?」

ヴォルグは手袋をはめた手で、その『黒き面』を持ち上げた。 軽い。だが、内側には深淵のようなレンズが嵌め込まれている。

「……なるほど。神が我らに『真実を見る目』を授けたか」

ヴォルグの直感が告げていた。 これは肉体を傷つける道具ではない。 精神(こころ)を暴く、禁断の呪具であると。

「おい、この男に装着させろ」

「はっ!」

部下たちが男の頭部にVRヘッドセットを無理やり被せ、コントローラーを握らせる。

「や、やめろ! 何をする気だ! 何も見えないぞ!」

男が暴れる。 その拍子に、ヘッドセットの電源が入り、ゲームが起動した。

ブオォォォン……(起動音)

「ひぃっ!? 今、頭の中に音が……!?」

「静かにせよ。……さあ、その『冥界の仮面』を通して、己の罪を見るがいい」

男の視界に、ロゴマークが浮かび、やがて薄暗い洋館の廊下が映し出された。 超高精細な4K映像。 現実と区別のつかない没入感。

「な、なんだここは……? 牢獄ではない……?」

男がキョロキョロと首を動かす。 連動して視界が動く。

「すごい……。別の場所に飛ばされたのか……?」

その時。 視界の奥から、腐乱した死体たちが、うめき声を上げて迫ってきた。

『ウゥゥ……アァァ……』

「う、うわあああああ!!」

男が絶叫した。

「し、死体だ! 死人が歩いてくる!!」 「こっちを見るな! 来るなあああ!!」

審問官たちは息を呑んだ。 男は何もいない空間に向かって怯え、後ずさりしようとしている。

「見えているのか……? 我々には見えぬ『罪の亡霊』が」

「なんと恐ろしい……。あれは、彼が過去に殺めた者たちの魂か?」

「いや、違う! あれは地獄そのものだ!」

男の手元にあるコントローラーが振動する。 男はパニックになり、無意識にトリガーを引いた。

バン! バン!

ゲーム内で銃が発射され、ゾンビの頭が弾け飛ぶ。 男の耳には、生々しい破砕音が響いている。

「あぁぁぁ! 殺しても死なない! また起き上がってくる!」 「許してくれ! 食われる! 内臓を引きずり出されるぅぅぅ!!」

男は泡を吹いて気絶した。 ガクンと首が垂れる。

静寂が戻った部屋で、ヴォルグは戦慄(わなな)いた。

「……本物だ」

「肉体への苦痛など生温い。この仮面は、対象の魂を直接『冥府』へと送り込み、永遠の責め苦を与える装置なのだ」

部下たちがゴクリと唾を飲む。

「長官……。これを使えば、どんな頑固な異端者も、数秒で精神が崩壊します」

「うむ。だが……」

ヴォルグは、気絶した男からヘッドセットを剥ぎ取った。 そして、そのレンズの奥をじっと見つめた。

「我々異端審問官こそ、この『地獄』を知らねばならんのではないか?」

「えっ? 長官、まさか!?」

「敵を知るには、まずその世界を見ることだ。私が……試す」

ヴォルグは覚悟を決め、自らヘッドセットを装着した。 視界が暗転する。 そして、ロード画面を経て、次なるステージ──『ゾンビで溢れかえる地下墓地』が表示された。

「おお……。なんという瘴気だ……」

ヴォルグは呟いた。 四方八方から迫る、腐った肉塊。 飛び散る血飛沫。 耳元で囁く死者の声(3Dオーディオ)。

「いる……。そこら中に、魔が潜んでいる……!」

ヴォルグはコントローラーを構えた。 歴戦の審問官である彼は、恐怖に屈しなかった。 むしろ、闘志に火がついた。

「浄化せねばならん! この世は、これほどまでに穢れていたのか!」

現実世界では、ヴォルグ長官が何もない空間に向かって、奇妙な機械を振り回し、ステップを踏んでいる。

「死ね! 汚らわしい魔女め!」(バンバン!) 「そこか! 背後に回ったか!」(クルッと回転) 「ぬおっ!? 巨大なボス級の悪魔だと!? 貴様が元凶か!!」

部下たちは涙を流してひれ伏した。

「見ろ……! 長官はたったお一人で、見えざる魔軍と戦っておられる!」

「我々には平和な部屋に見えるが、長官の目には、この世の真実が映っているのだ!」

「加勢せよ! 我らも『真実の目』を被り、聖戦に参加するのだ!」

ヴォルグは汗だくになりながら、ハイスコアを叩き出していた。

「はぁ……はぁ……! 終わらん! 倒しても倒しても湧いてくる!」 「だが、心地よい……! これこそが我が使命! 異端狩りの真髄なりぃぃぃ!」

かくして、帝国異端審問局は、全員がVRゴーグルを装着し、虚空に向かって銃を撃ち続ける、狂気の武装集団へと変貌を遂げたのである。

★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

「……は?」

モニターの前で、アイスのスプーンが止まった。

「なんで全員でVRやってんの?」

しかも、なんか動きがガチなんだけど。 軍事演習みたいな動きで、ゾンビゲーム攻略してるんだけど。

「『聖戦』って何? ただのスコアアタックだから!」 「あと長官、エイム良すぎでしょ。プロゲーマーかよ」

楽しんでるならいいけどさぁ。 捕まってる罪人の人たち、放置されてポカーンとしてるじゃん。 尋問どうなったの?

「意図としては、キャーキャー怖がって欲しかっただけなんだけど……」 「なんか、対ゾンビ特殊部隊が結成されちゃったっぽい?」

……ていうか、あれ。 あの長官、ゲームに熱中しすぎて、リアルの方の仕事ほっぽり出してない? 部下も全員VR被っちゃってるし。

これ、帝国の治安維持システム、完全に機能停止してない?

女神「……あ、やば。また上司に怒られる予感しかしない」
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