転生女神さまは異世界に現代を持ち込みたいようです。 〜ポンコツ女神の現代布教活動〜

れおぽん

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異世界スパルタ義務教育化計画

女神「習字セット(文鎮・下敷き付き)送ったわ〜」 →剣聖一派「【液状化した闇を紙上に封印する暗黒剣技】を極めた……!」

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「前回のそろばん、マジで惜しかったわ~」

わたしは天界の畳スペース(和室コーナー)で、正座して心を落ち着けていた。 横ではミオちゃんが、そろばんの弾ける音を聞いて怯えていた商人たちのデータを見て、胃薬を飲んでいる。

「センパイ……。経済、崩壊しかけましたね……」 「リセットボタンが『徳政令』になるなんて、異世界人の解釈力、斜め上すぎますぅ……」

「ま、過ぎたことは水に流して!」
「大事なのは『静寂』と『集中』! そして『美しい文字』よ!」

あいつら、字が汚いから伝達ミスるし、心も乱れるの。 「字は体を表す」って言うでしょ? 真っ白な紙に向かい、黒いインクで一発勝負。 この緊張感こそが、荒くれた魂を鎮める最高の修行になるはず!

そこでこれ!

【学校用・習字セット(ハードケース入り・太筆・細筆・墨汁・文鎮・下敷き)】

硯(すずり)と墨汁の香りが漂う、和の心。 「とめ・はね・はらい」を意識することで、指先のコントロールと精神統一を同時に養う高等教育ツール。 今回はお手本として『心』『道』『無』とかの漢字ドリルも付けといたから!

「この墨の匂い、マジでチルくない?」 
「筆を滑らせて、心を整える! これぞ『書道ガール』的バイブス!」

「さあ、墨にまみれて更生しなさい!」

(──よしよし、これで「達筆になりました!」って報告が来て、わたしの教育レベルの高さが証明されるはず!)

和の心、転送ポチー!

★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★


──東方・剣聖の道場「無我の庭」──

「……迷いがあるな」

剣聖ソウジは、弟子たちの剣筋を見て嘆息した。 剣技は鋭い。だが、心が乱れている。 殺気、焦り、功名心。 それらが雑念となり、刃(やいば)を鈍らせているのだ。

「剣とは、心を斬るもの。心を無にせねば、真の奥義には至れん」

その時。 道場の床の間に、厳かな『黒と赤の箱』が出現した。

「師匠! 何やら禍々しい気配が!」

ソウジが箱を開ける。 中には、漆黒の液体が入った容器(墨汁)と、獣の毛を束ねた棒(筆)、そして純白の紙(半紙)が収められていた。

「……黒い水。いや、これは水ではない」

ソウジは墨汁の蓋を開けた。 漂う独特の香り。深く、底知れぬ闇の匂い。

「これは『液状化した闇(リキッド・ダークネス)』だ」 「人の心の『業(ごう)』を凝縮し、液体として具現化させたものに違いない」

「な、なんですと!?」 弟子たちがざわめく。

「そして、この白い紙は『清浄なる世界』。この獣の毛束は『導きの剣』だ」

ソウジは直感した。 神は言っているのだ。 「己の心の闇(インク)を制御し、清浄なる世界(紙)の上に、あるべき形として封印せよ」と。

「これは剣術の修行ではない……『封魔の儀』だ!」

ソウジは筆を取り、たっぷりと墨を含ませた。 ポタリ、と黒い雫が落ちそうになる。

「見ろ。気を抜けば、闇は制御を失い、世界を黒く汚染する(※服につくと落ちない)」
「一瞬たりとも気を緩めるな。切っ先(筆先)に全神経を集中させろ!」

「はいッ!」

弟子たちも筆を取る。 彼らにとって、それは木刀よりも重く感じられた。

「いざ……!」

ソウジがお手本(『道』という漢字)を見据え、半紙に向かう。

トン(入り)。 スーッ(運び)。 グッ(止め)。

「おおお……! 闇が! 闇が形を成していく!」 
「暴れようとする液体を、師匠の筆圧がねじ伏せている!」

「はね」の瞬間、ソウジの手首が鞭のようにしなる。 筆先が宙を舞い、美しい残像を残す。

「そこだ! 闇を逃がすな! 紙の上に縛り付けろ!」

ピタッ。

書き上がった文字は、力強く、それでいて静寂を湛(たた)えていた。

「……ふぅ」 ソウジが息を吐く。額には玉のような汗。

「見たか。これが『闇の制御』だ」 「迷いがあれば線は歪み、恐怖すれば闇が飛び散る」 「心を無にして初めて、闇は美しい『芸術』へと昇華されるのだ」

「す、すげぇ……!」 「俺もやります! 俺の中の闇を飼いならして見せます!」

弟子たちは一斉に半紙に向かった。 普段の稽古以上の殺気。いや、静謐(せいひつ)な闘志。

「くっ……! 手が震える! 闇が重い!」 「はみ出すな! 文鎮(結界石)で紙を押さえろ!」 「『はらい』が甘い! それでは闇が漏れ出すぞ!」

道場には、衣擦れの音と、筆が紙を走る「ササッ……」という音だけが響く。 誰一人として言葉を発しない。 ただひたすらに、黒い液体と向き合い、己の心を投影し続ける。

数刻後。 床一面に、真っ黒な力強い文字が敷き詰められた。

「……心が、静かだ」 荒くれ者だった弟子の一人が、筆を置いて呟いた。 「俺は今まで、何を焦っていたんだろう……」

「うむ。お前の書いた『心』の文字……見事なバランスだ」 ソウジが頷く。 「剣も同じだ。その筆のように、力まず、淀みなく振るえばよい」

「ハッ! 悟りました! これが『剣禅一如』の境地!」

東方の剣士たちは、その後も事あるごとに筆を取り、精神統一を図るようになった。 彼らの剣は洗練され、無駄な殺生をせず、一太刀で敵の戦意を断つ「活人剣」へと進化していったという。

★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★


「……ん! イイ感じじゃん!」

わたしはモニターを見ながら、ガッツポーズをした。 墨まみれになるかと思ったけど、意外とみんな綺麗に使ってるし。 出来上がった文字も、なんか味があってカッコいいし。

「『液状化した闇』って中二病全開だけど……まあ、墨汁って落ちにくいし? 当たらずとも遠からず?」 「結果的にメンタル安定して、剣術もレベルアップしたなら大成功でしょ!」

横でミオちゃんも、ほっと胸を撫で下ろしている。

「よかったですぅ……。誰も死ななかったし、誰も発狂しませんでした……」 「あの文字……『道』ですか? すごく迫力があって、魔除けのお札になりそうです……!」

「でしょでしょ~? やっぱ『書く』って大事なのよ!」

わたしは満足げに頷いた。 教育計画、順調じゃん。 この調子で、次はもっと体の健康に気を使ったやつを送ってあげよっと。

「精神の次は肉体!」 「朝の習慣といえばコレしかないわよね!」

「次は『ラジオ体操カード』! スタンプ集めてご褒美ゲットよ~!」

女神「早起きは三文の得! 叩き起こしてやるから覚悟しなさい!」
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