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第3章 出逢い

出逢いⅢ

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「フレアは……そうだな、優しくて、しっかり者だよ。ミユにとっても、頼りになる存在になると思う。でも情に脆くて、涙脆い。火の魔法を使える、ガーネット育ちの二十一歳だよ」

「あたし、そんなに泣いてるかなぁ」

「泣いてるな」

 小首を傾げるフレアに、アレクが即答する。

「どこか変な所あった?」

「ううん、大丈夫だよ」

 フレアがパッと笑顔になると、クラウは安心したように吐息を吐いた。

「じゃ、次はフレアがオレの紹介してみてくれ」

「うん、分かった」

 フレアはアレクの顔をちらりと見ただけで、此方に向き直る。

「アレクは頼もしいよ。料理も出来るし、いざとなった時に役に立つと思うの。面倒見も良いし、話も聞いてくれる。風の魔法を使える、トパーズ生まれの二十二歳だよ」

 フレアの他己紹介に不満があったのだろうか。アレクは腕を組み、口をへの字に曲げる。

「いざとなった時に役に立つってよー、この流れじゃ、オレが非常食みてーじゃねーか」

「非常食じゃなくて、救助員のつもりだったんだけど……」

 フレアが少し申し訳無さそうに目を伏せると、アレクは慌てた様子で首を横に振る。

「いや、フレアは間違ってねー! オレの勘違いだ!」

「そう? それなら良いんだけど」

 フレアが顔を上げると、アレクはニカっと笑った。

「最後はオレがクラウの紹介だな」

「変な事、ミユに教えないでよ」

 クラウはクリクリの目を僅かに吊り上げ、アレクを牽制する。

「任せとけ! クラウは……アレだ、一言で言うと無鉄砲だ。んで、生意気で、オレらの意見聞かねーし――」

「ちょっ……アレク! それ、俺の事けなしてるだけじゃん!」

「ああ? 間違ってねーだろ?」

 もしかして、この二人は仲が悪いのだろうか。
 おろおろと、アレクを睨み付けるクラウと、嫌な笑みを浮かべるアレクを見比べてみる。
 一向に収拾がつかなさそうなので、今度は助けを呼ぶようにフレアを見詰めてみた。

「もう、喧嘩しないでよ。ミユを怖がらせちゃったかもしれないでしょ?」

「あっ……ごめん! そういうつもりじゃ……」

 フレアが溜め息を吐くと、クラウの顔は林檎のように真っ赤になってしまった。俯き、此方を見ようとしない。

「今のはアレクが悪いんだから。少し反省してね。クラウの他己紹介はあたしがするから。……そうだなぁ、人一倍、感受性が強いんじゃないかなぁ。笑って、怒って、たまには泣いて。そう、情熱家なんだよ。水の魔法を使える、サファイア生まれの十九歳だよ。……大丈夫だった?」

「うん」

 フレアが他己紹介を終えると、クラウは何故か此方を見て、再び俯いてしまった。

「まっ、こんな感じだ。ミユ、これからよろしくな」

「よろしくお願いします」

 その場でぺこりとお辞儀をしてみせると、アレクとフレアもにっこりと笑ってくれた。

「オマエもそろそろ機嫌直せよ。ミユに変人だと思われても知らねーぞ?」

 アレクの言葉に、クラウは肩を震わせる。真っ赤な顔のままで此方を向くと、ブンブンと首を横に振る。
 きっと、変人ではない事を伝えたいのだろう。
 大丈夫と言う意味も込めて、今度はクラウに向かってお辞儀をしてみる。すると、ちゃんとお辞儀を返してくれた。
 その間にフレアがケーキを切り分けてくれたようだ。山盛りのケーキを乗せた、直径二十センチ程の皿を此方に渡してくる。

「はい。ミユ、ケーキ好きなんだもんね。あたし、甘いもの苦手だから、あたしの分も食べて」

「良いの?」

「勿論」

 少し気が引けてしまうけれど、渡されるままにケーキを受け取った。
 ケーキだけでもお腹いっぱいになってしまいそうな量だ。
 アレクとクラウもケーキを受け取ったのを見届けると、早速フォークを持ち上げ、ケーキを掬った。
 スポンジとスポンジの間にも苺が挟んである。見た目だけでも美味しいのが分かる。
 思い切って噛み締めてみると、生クリームの控えめな甘さと苺の酸味が口いっぱいに広がった。

「美味しい……」

 自然とフォークが進む。スポンジの甘さも生クリームの味を邪魔していない。まるで高級スイーツ店のケーキを味わっている気分だ。

「これもアレクが作ったの?」

「ああ、そうだぞ」

「凄く美味しい!」

 また会う機会があれば、その度に食べたいくらいだ。
 あまりに食べるペースが速いのか、三人とも私を見て、小さく声を上げて笑う。

「また作ってやる。次は……三日後だな」

「三日後?」

「ああ。オマエらにちょっと聞きたい事があってよー」

 その話を瞬間、アレクの表情が曇ったように見えた。
 何か嫌な予感がする。
 胸にそっと手を当て、その原因を探ってみる。しかし、考えてみたところで、私にはさっぱり分からない。
 フレアもクラウも神妙な顔つきになってしまっている。

「詳しくは三日後だ。それまでは何時も通りのんびりしてよーぜ」

 フレアとクラウは釈然としない様子だ。
 暗くなってしまった部屋の雰囲気を変えるべく、アレクは次の行動に出る。

「フレア、そろそろあれやろーぜ。準備は出来てるのか?」

「うん。直ぐにでも出来るよ」

「そーか! クラウ、ミユ! こっち来てみろ!」

 私とクラウを呼び付けると、アレクは席を立ち、窓の方へと歩み寄っていく。それにフレアが続いた。
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