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第四章 女王
72.共同統治者
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「元老院、評議会は全員一致で、ベアトリーチェ様の女王即位を承認致します」
アリーチェ様達がご帰国なされた後、元老院と評議会が召集され、イヴァーノ様が示して下さった案と、わたくしの女王承認について議論を重ねました。
その結果、わたくしの女王即位が認められたのですけれど……。
「良いのでしょうか? わたくし、女王になれるような大きな何かを成し遂げておりません」
「そう思うのでしたら、これから精進すれば良いのです。今は甘んじて受けておきなさい。この機会を逃せば、次いつ良い機会に恵まれるか分かりませんよ」
わたくしがコソッとマッティア様に、そう言うと、マッティア様はとても優しい笑顔でそう仰って下さいました。
でも、良いのかもしれません。わたくしが女王になれば、今以上にこの方の背負っているものを半分持って差し上げる事が出来ます。
マッティア様を過労死させない為にも、カルロ様のような悲劇を今後生まない為にも、そして女性が生きやすい国を目指して、わたくしは女王になります。
傍らには常にマッティア様がいて、わたくしを支え、導いて下さるのです。これ程、心強いものはありません。
「皆様、ありがとうございます。わたくしは民や仕えて下さる貴族諸氏が、惨たらしい現実に嘆く事がない世を作ります。どんな立場の方でも、平等に人として幸せを享受する資格があるのです。わたくしは、そのような国を陛下と共に目指します」
わたくしの手をマッティア様がギュッと握って下さいました。そして、元老院や評議会の方たちも応援し、協力すると仰って下さいました。
◆
「さあ! ベアトリーチェ様! 今日はベアトリーチェ様の戴冠式ですよ。起きて下さいませ」
ベルタがわたくしの前で手をパンパンと叩いたので、わたくしは眠い目を擦りながら、ベルタたち女官に伴われ、湯浴みからの全身マッサージを受ける事になりました。
まあ、予想はしていた事です。それなのに、ベルタ達は、また蒸し風呂から始めると言うのです。
「蒸し風呂は嫌です!」
「ですが、ベアトリーチェ様。本日は晴れ舞台なのですから……王国一、いえ世界一綺麗にしないと」
「わたくし、蒸し風呂なんてしなくとも、皆の腕を信じております。……それにのぼせなかったとしても、やはり苦手なのです」
わたくしが部屋の柱にしがみ付いていると、アニェッラ達が困ったような声を出しました。
だけれど、嫌なのです。蒸し風呂でのぼせると辛いのです。配慮をして下さるのは分かります……けれど、最初の事を思い出してしまって、やはり苦手なのです。
「ベアトリーチェ、子供のような我儘で女官の手を止めてはいけませんよ」
「マッティア様……」
どうして此処に……? と思いましたけれど、元々此処はマッティア様のお部屋です。最近、己の部屋ではなくマッティア様のお部屋で寝てばかりいるので、忘れていましたが……。
どうやら困った女官たちが、マッティア様に泣きついたようです。
「だって……苦手なのです」
「ベアトリーチェ。貴方は本日より女王となるのです。甘えなど許しません」
そう仰って、わたくしを柱から引き剥がし、女官に引き渡しました。
「では、連れて行け」
「はい、陛下。ありがとうございます」
「マッティア様の馬鹿……裏切り者……」
わたくしは悪態を吐きながら、女官たちによってテルマエ……王宮の地下にある大浴場へと連行されました。
ですが、今回も最初とは違い温度も時間も、とても配慮をして下さっています。不安ならと、わたくしの側には常に誰かがついていて下さいますし……。
そして、蒸し風呂を出た後は湯浴みをし、頭皮マッサージからの全身マッサージを受けました。わたくし以上に女官たちの方が忙しいので、文句を言ってはいけないことくらい、わたくしだとて分かります。
なので、眠くともお腹が空いていても、大人しくされるがままです。
「ドレスは何を着るのですか? わたくし、以前マッティア様の戴冠式で着せて頂いた真紅のドレスが着たいです」
「ですが、同じものより違うものをお召しになった方が宜しいですよ」
そう言って、数着ほど出てきたドレスは、どれも素敵なものでした。全て、わたくし好みです。マッティア様は相変わらず、わたくしの好みのど真ん中をいくデザインのドレスを用意して下さいます。
そして、何故かいつもあつらえたようにピッタリとサイズが合うのです。不思議です。
王侯貴族のドレスは、サルトリアーレが基本ですが、わたくしの場合、マッティア様が用意して下さるのです。
勿論、全てわたくしの為に仕立てられているのですが、採寸などしていなくとも嫁いだ時から、いつでも採寸して作ったかのように、ピッタリなのです。……ふふっ、本当に気持ちの悪い事です。
嗚呼、どれも素敵で、中々選べません。
全部着てみたいのです。なので、一通り試着をさせて頂き、選ぶ事になりました。
結果、わたくしが選んだのは、マッティア様の髪の色に近い深緑色の植物模様のリヨン製絹ブロケードに、共布の縁飾り、二段のパゴダ型袖のとても可愛らしいドレスです。共布の胸当てとペティコートも美しいのです。
一般的にローブ・ア・ラ・フランセーズと呼ばれるとても美しいこのドレスは、ローブとゴンナにあたるペティコート、三角形のパネル状の胸当てから成り、ローブは前あきで、背中に大きな襞がたたまれています。
これらはコルセットとパニエという下着で整えた後に着装するのです。
このドレスは胸元が……目立つの……ですけれど、とても美しいのです……。わたくしに、もう少し……胸があれば、もっと映えたのでしょうね……。
「胸元が気になりますか? 中に首元まで覆うレースのお召し物を着用致しますか?」
貧相な己の胸元をじっと眺めていると、アニェッラが、わたくしが胸元の出るドレスを恥ずかしいと感じていると勘違いし、そう気遣って下さいました。
「いえ、そういう訳ではないのです。ただ……もっと胸があれば……このドレスも映えたのかなと……」
わたくしの嘆きに、アニェッラを含め他の女官が目を瞬きました。そして、大丈夫ですよと笑い出しました。
「わたくし、真剣なのですよ」
「大丈夫ですよ、ベアトリーチェ様! これからです。国王陛下に、しっかりとお願いなさいませ?」
「胸を大きくするのに、何故マッティア様にお願いするのですか?」
マッティア様も、そんな事を言われても困ってしまうと思います。わたくしが首を傾げていると、ベルタがニマニマとしながら、わたくしの肩をポンと叩きました。
「どうやら、好きな男性に揉まれると、胸が大きくなるらしいですよ。寝所でしっかりお願いすれば良いのですよ」
「っ!!」
わたくしは途端に顔が真っ赤になってしまいました。
「なっ! えっ……そ、そんな……バカな事……あるわけがありません」
慌てるわたくしを女官たちは、ニマニマしながら見ています。わたくしは、とても恥ずかしくなり、涙目で皆を睨みました。
それに、わたくしはもう手遅れなのです。
わたくしの見た目は何をしようと14歳のまま、変わらないのです。痩せる事も太る事もなく、身長が伸びる事も、胸が大きくなる事もありません。
いつか御子たちの母親ではなく妹に見えてしまう時が来るのでしょうね……情けない事です。
嗚呼、恨みます。先王ったら、本当に……何という事をして下さったのか……何とかして解いてもらいたいのに……無理だの一点張りですもの。
その後、ドレスの中に首元まで覆うレースの下着を着せて頂きました。胸元が目立たなくなり、少しは貧相さもマシになりました。
ドレスの上から真紅の立派なマントを羽織らせて頂き、完成です。とても美しいのです。
このように着飾らせて頂くと、いつもの己ではないように感じます。何倍も可愛らしく美しくなれたように錯覚してしまいます。
その後、マッティア様エスコートの下、戴冠式の場である大神殿へと向かいました。大神殿は、プロヴェンツァ家の物です。王だとて不可侵の場所……けれど、これからは王家の物です。
わたくしはプロヴェンツァと王族を繋ぐ存在として、この国に君臨致します。
「とても美しいですね。胸元を隠してしまったのが、些か残念ですが、貴方の胸元を見るのは私だけで充分なので良しとしましょう」
こんな日でも、マッティア様は変わりません。相変わらず、気持ちの悪い事を言っていますし。
「隠したのは、あまりにも貧相だからです。わたくし、このようなドレスが映えるほど、胸がないので……」
その言葉に、マッティア様が目を瞬き、肩を震わせて笑い出しました。わたくしがムッとしていると、マッティア様はすみませんと言いながら、まだ笑っています。
「貴方は、そのままで充分美しいですよ。両胸あわせて私の片手に収まるサイズですし、問題ありません」
そう言って手を横にして、わたくしの胸を手で覆いました。わたくしはこれには、とても恥ずかしく、また腹立たしく、マッティア様の頬をつい打ってしまいました。
「マッティア様の変態!」
その後、気持ち悪いくらいニコニコしたマッティア様にエスコートされ、戴冠式が始まりました。
本来なら、この戴冠式もプロヴェンツァ公爵が執り行うのですが、主役がわたくしなので、今日はペガゾ様が執り行って下さるそうです。叔父様は補佐をしています。
わたくし達が跪くと、ペガゾ様により、恭しく、祝詞が述べられました。やはり、聖獣であるペガゾ様により祝詞が唱えられると、とても神聖な空気が辺りを包みます。
わたくしとマッティア様が立っている場所に、神々しい魔法陣が浮かび上がり、とても美しい光のカーテンがわたくし達を包みます。
まるで、これからのわたくし達を祝福して下さっているようです。プロヴェンツァの者が執り行っても、このような現象は起きた事がありません。流石、聖獣なのです。
その後、マッティア様の手でわたくしの頭に冠を乗せて頂き、わたくしを共同統治者として冊立する旨を宣言致しました。
そして、国中に新しい女王の誕生を宣言されました。
バルコニーから民の前に姿を表すと、轟くほどの大きな歓声で出迎えて下さいました。国中が歓喜に満ちています。
わたくしは、とても嬉しくなりました。わたくしは今日という日を絶対に忘れません。この方たちに報いる事の出来る、良き女王にわたくしはなると誓います。
そして、女王としてはマッティア様の隣に並び立ち、プロヴェンツァ公爵としては、永遠に国王であるマッティア様の下につこうと心に決めました。
プロヴェンツァ家の持つ力を王室のものと出来るだけでも、わたくしが女王となる意味があるでしょう。神託を得ることの出来る力は、未来永劫我が王室のものです。
アリーチェ様達がご帰国なされた後、元老院と評議会が召集され、イヴァーノ様が示して下さった案と、わたくしの女王承認について議論を重ねました。
その結果、わたくしの女王即位が認められたのですけれど……。
「良いのでしょうか? わたくし、女王になれるような大きな何かを成し遂げておりません」
「そう思うのでしたら、これから精進すれば良いのです。今は甘んじて受けておきなさい。この機会を逃せば、次いつ良い機会に恵まれるか分かりませんよ」
わたくしがコソッとマッティア様に、そう言うと、マッティア様はとても優しい笑顔でそう仰って下さいました。
でも、良いのかもしれません。わたくしが女王になれば、今以上にこの方の背負っているものを半分持って差し上げる事が出来ます。
マッティア様を過労死させない為にも、カルロ様のような悲劇を今後生まない為にも、そして女性が生きやすい国を目指して、わたくしは女王になります。
傍らには常にマッティア様がいて、わたくしを支え、導いて下さるのです。これ程、心強いものはありません。
「皆様、ありがとうございます。わたくしは民や仕えて下さる貴族諸氏が、惨たらしい現実に嘆く事がない世を作ります。どんな立場の方でも、平等に人として幸せを享受する資格があるのです。わたくしは、そのような国を陛下と共に目指します」
わたくしの手をマッティア様がギュッと握って下さいました。そして、元老院や評議会の方たちも応援し、協力すると仰って下さいました。
◆
「さあ! ベアトリーチェ様! 今日はベアトリーチェ様の戴冠式ですよ。起きて下さいませ」
ベルタがわたくしの前で手をパンパンと叩いたので、わたくしは眠い目を擦りながら、ベルタたち女官に伴われ、湯浴みからの全身マッサージを受ける事になりました。
まあ、予想はしていた事です。それなのに、ベルタ達は、また蒸し風呂から始めると言うのです。
「蒸し風呂は嫌です!」
「ですが、ベアトリーチェ様。本日は晴れ舞台なのですから……王国一、いえ世界一綺麗にしないと」
「わたくし、蒸し風呂なんてしなくとも、皆の腕を信じております。……それにのぼせなかったとしても、やはり苦手なのです」
わたくしが部屋の柱にしがみ付いていると、アニェッラ達が困ったような声を出しました。
だけれど、嫌なのです。蒸し風呂でのぼせると辛いのです。配慮をして下さるのは分かります……けれど、最初の事を思い出してしまって、やはり苦手なのです。
「ベアトリーチェ、子供のような我儘で女官の手を止めてはいけませんよ」
「マッティア様……」
どうして此処に……? と思いましたけれど、元々此処はマッティア様のお部屋です。最近、己の部屋ではなくマッティア様のお部屋で寝てばかりいるので、忘れていましたが……。
どうやら困った女官たちが、マッティア様に泣きついたようです。
「だって……苦手なのです」
「ベアトリーチェ。貴方は本日より女王となるのです。甘えなど許しません」
そう仰って、わたくしを柱から引き剥がし、女官に引き渡しました。
「では、連れて行け」
「はい、陛下。ありがとうございます」
「マッティア様の馬鹿……裏切り者……」
わたくしは悪態を吐きながら、女官たちによってテルマエ……王宮の地下にある大浴場へと連行されました。
ですが、今回も最初とは違い温度も時間も、とても配慮をして下さっています。不安ならと、わたくしの側には常に誰かがついていて下さいますし……。
そして、蒸し風呂を出た後は湯浴みをし、頭皮マッサージからの全身マッサージを受けました。わたくし以上に女官たちの方が忙しいので、文句を言ってはいけないことくらい、わたくしだとて分かります。
なので、眠くともお腹が空いていても、大人しくされるがままです。
「ドレスは何を着るのですか? わたくし、以前マッティア様の戴冠式で着せて頂いた真紅のドレスが着たいです」
「ですが、同じものより違うものをお召しになった方が宜しいですよ」
そう言って、数着ほど出てきたドレスは、どれも素敵なものでした。全て、わたくし好みです。マッティア様は相変わらず、わたくしの好みのど真ん中をいくデザインのドレスを用意して下さいます。
そして、何故かいつもあつらえたようにピッタリとサイズが合うのです。不思議です。
王侯貴族のドレスは、サルトリアーレが基本ですが、わたくしの場合、マッティア様が用意して下さるのです。
勿論、全てわたくしの為に仕立てられているのですが、採寸などしていなくとも嫁いだ時から、いつでも採寸して作ったかのように、ピッタリなのです。……ふふっ、本当に気持ちの悪い事です。
嗚呼、どれも素敵で、中々選べません。
全部着てみたいのです。なので、一通り試着をさせて頂き、選ぶ事になりました。
結果、わたくしが選んだのは、マッティア様の髪の色に近い深緑色の植物模様のリヨン製絹ブロケードに、共布の縁飾り、二段のパゴダ型袖のとても可愛らしいドレスです。共布の胸当てとペティコートも美しいのです。
一般的にローブ・ア・ラ・フランセーズと呼ばれるとても美しいこのドレスは、ローブとゴンナにあたるペティコート、三角形のパネル状の胸当てから成り、ローブは前あきで、背中に大きな襞がたたまれています。
これらはコルセットとパニエという下着で整えた後に着装するのです。
このドレスは胸元が……目立つの……ですけれど、とても美しいのです……。わたくしに、もう少し……胸があれば、もっと映えたのでしょうね……。
「胸元が気になりますか? 中に首元まで覆うレースのお召し物を着用致しますか?」
貧相な己の胸元をじっと眺めていると、アニェッラが、わたくしが胸元の出るドレスを恥ずかしいと感じていると勘違いし、そう気遣って下さいました。
「いえ、そういう訳ではないのです。ただ……もっと胸があれば……このドレスも映えたのかなと……」
わたくしの嘆きに、アニェッラを含め他の女官が目を瞬きました。そして、大丈夫ですよと笑い出しました。
「わたくし、真剣なのですよ」
「大丈夫ですよ、ベアトリーチェ様! これからです。国王陛下に、しっかりとお願いなさいませ?」
「胸を大きくするのに、何故マッティア様にお願いするのですか?」
マッティア様も、そんな事を言われても困ってしまうと思います。わたくしが首を傾げていると、ベルタがニマニマとしながら、わたくしの肩をポンと叩きました。
「どうやら、好きな男性に揉まれると、胸が大きくなるらしいですよ。寝所でしっかりお願いすれば良いのですよ」
「っ!!」
わたくしは途端に顔が真っ赤になってしまいました。
「なっ! えっ……そ、そんな……バカな事……あるわけがありません」
慌てるわたくしを女官たちは、ニマニマしながら見ています。わたくしは、とても恥ずかしくなり、涙目で皆を睨みました。
それに、わたくしはもう手遅れなのです。
わたくしの見た目は何をしようと14歳のまま、変わらないのです。痩せる事も太る事もなく、身長が伸びる事も、胸が大きくなる事もありません。
いつか御子たちの母親ではなく妹に見えてしまう時が来るのでしょうね……情けない事です。
嗚呼、恨みます。先王ったら、本当に……何という事をして下さったのか……何とかして解いてもらいたいのに……無理だの一点張りですもの。
その後、ドレスの中に首元まで覆うレースの下着を着せて頂きました。胸元が目立たなくなり、少しは貧相さもマシになりました。
ドレスの上から真紅の立派なマントを羽織らせて頂き、完成です。とても美しいのです。
このように着飾らせて頂くと、いつもの己ではないように感じます。何倍も可愛らしく美しくなれたように錯覚してしまいます。
その後、マッティア様エスコートの下、戴冠式の場である大神殿へと向かいました。大神殿は、プロヴェンツァ家の物です。王だとて不可侵の場所……けれど、これからは王家の物です。
わたくしはプロヴェンツァと王族を繋ぐ存在として、この国に君臨致します。
「とても美しいですね。胸元を隠してしまったのが、些か残念ですが、貴方の胸元を見るのは私だけで充分なので良しとしましょう」
こんな日でも、マッティア様は変わりません。相変わらず、気持ちの悪い事を言っていますし。
「隠したのは、あまりにも貧相だからです。わたくし、このようなドレスが映えるほど、胸がないので……」
その言葉に、マッティア様が目を瞬き、肩を震わせて笑い出しました。わたくしがムッとしていると、マッティア様はすみませんと言いながら、まだ笑っています。
「貴方は、そのままで充分美しいですよ。両胸あわせて私の片手に収まるサイズですし、問題ありません」
そう言って手を横にして、わたくしの胸を手で覆いました。わたくしはこれには、とても恥ずかしく、また腹立たしく、マッティア様の頬をつい打ってしまいました。
「マッティア様の変態!」
その後、気持ち悪いくらいニコニコしたマッティア様にエスコートされ、戴冠式が始まりました。
本来なら、この戴冠式もプロヴェンツァ公爵が執り行うのですが、主役がわたくしなので、今日はペガゾ様が執り行って下さるそうです。叔父様は補佐をしています。
わたくし達が跪くと、ペガゾ様により、恭しく、祝詞が述べられました。やはり、聖獣であるペガゾ様により祝詞が唱えられると、とても神聖な空気が辺りを包みます。
わたくしとマッティア様が立っている場所に、神々しい魔法陣が浮かび上がり、とても美しい光のカーテンがわたくし達を包みます。
まるで、これからのわたくし達を祝福して下さっているようです。プロヴェンツァの者が執り行っても、このような現象は起きた事がありません。流石、聖獣なのです。
その後、マッティア様の手でわたくしの頭に冠を乗せて頂き、わたくしを共同統治者として冊立する旨を宣言致しました。
そして、国中に新しい女王の誕生を宣言されました。
バルコニーから民の前に姿を表すと、轟くほどの大きな歓声で出迎えて下さいました。国中が歓喜に満ちています。
わたくしは、とても嬉しくなりました。わたくしは今日という日を絶対に忘れません。この方たちに報いる事の出来る、良き女王にわたくしはなると誓います。
そして、女王としてはマッティア様の隣に並び立ち、プロヴェンツァ公爵としては、永遠に国王であるマッティア様の下につこうと心に決めました。
プロヴェンツァ家の持つ力を王室のものと出来るだけでも、わたくしが女王となる意味があるでしょう。神託を得ることの出来る力は、未来永劫我が王室のものです。
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