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番外編(ルクレツィオ視点)

パニック※

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「ちょっと待って! 待ってください! ぎゃあ! 待って!」
「待つのは貴方だ。皆に迷惑になるので、その叫び声を抑えろ。もう夜だぞ」




 私は部屋のドアに張り付いているベレニーチェに溜息を吐きながら、梢に用意させた鞭をベッドに放り投げた。



「だ、だって……鞭、怖いです。使ったら、お父様に言うからね!」



 そ、それは困る……。
 ふむ、確かに説明と同意が足らなかったのは認めよう。


 だが、嫌がっていても、どうせ始まれば啼いて悦ぶのだ。同意を得る意味も説明する意味もあるのだろうか?
 頭で理解するより、体で理解していった方が手っ取り早いと思うが……。




「すまぬ。コズエに勧められたものが思いの外、私の心に刺さったのだ」
「心? 刺さったのは性癖にでしょ」
「……………」



 本当に、ああ言えばこう言う奴だな。
 ドアに抱きつきながら、唇を尖らせているベレニーチェに私は近づき、頬に触れた。



「ル、ルクレツィオ?」



 こういう風にベレニーチェに触れ、ジッと見つめると、ベレニーチェは弱いのだ。頬を赤らめ、戸惑うように私をジッと見返してくる。
 こういう時は可愛げがあるのだが……口を開かせると生意気な言葉しか出てこぬのは難点だな。少しずつ、調教していかねば。



「ベレニーチェは、本当に嫌か? 私は貴方と新しい事に色々と挑戦してみたいのだ。貴方を悦ばせたいのだ。私と共に気持ち良くなりながら、新しい扉を開いてはくれぬか?」
「ルクレツィオ……」
「ベレニーチェ、愛している」



 ベレニーチェに口付けてやると、ベレニーチェが私の首に手を回して来たので、私はそのままベレニーチェを抱き上げ、扉を閉めてからベッドへと運んだ。



「ベレニーチェが嫌なら何もしない。傍で、共に眠るくらい良いだろう?」
「い、嫌とかじゃないんです! ルクレツィオとそういう事するのは嫌じゃない。寧ろ、好き……です」



 ふっ、相変わらず容易いな。



「では、何が嫌なのだ?」
「だから、鞭とか怖いもん。オモチャくらいだったら、まだ我慢出来ても、この前みたいに亀甲縛りみたいな事はやめて欲しい。恥ずかしいし、しかも執務中にオモチャとか、TPOは弁えて欲しいの」



 TPO……?
 亀甲縛り? ……は、この前の緊縛の事か?



「TPOとは何だ?」
Time時間Place場所Occasion 場合です! 要は、時と場所、場合に応じた方法、態度、服装等の使い分けをしましょうという事です」



 ふむ。成る程。
 確かに、あれは褒められた行動ではなかったな。楽しくはあったが……、皆にバレて父上たちの耳にでも入れば、母上に殺されそうだ。



「分かった。次からは寝所の中以外ではせぬと約束しよう」
「良かったぁ。分かってもらえて嬉しいです!」


 そう言って、抱きついてくるベレニーチェの頭を撫でながら、鞭の使用を許可して貰うには、どうすれば良いかを考えていた。




「鞭は痛いし、痕も残るでしょ? それは嫌なの。それにルクレツィオ、よく噛むけど、あれはあれで、後でお風呂の時染みて痛いの。結局、ポーションに頼る事になるんだよ。交わりの度に、ポーションが必要ってヤバいよ」



 ベレニーチェの言いたい事は分かる……分かるが……、噛み跡を残したいし、鞭も使いたいのだ。
 実際、最中は悦んでいるくせに、終わるとこうやって文句を言うのだから、考えものだな。意識から変えさせていかねば……。


 そのうち、己から啼いてねだるようにしてやる。




「では、少しずつでは駄目か? 性癖を拒絶されるのは辛いのだ……」
「私、拒絶するつもりじゃ……」
「だが、嫌なのだろう?」



 ベレニーチェの目が戸惑いに揺れている。
 ふっ、もうすぐ落ちるな。




「うぅ、あの……えっと……ルクレツィオの事は凄く凄く好きなの。好きだから、何でもしてあげたい気持ちは……あるんだけど、えっと……痛いのは嫌なの」
「そうか……。その気持ちだけで充分だ。無理を言って悪かった。今日は何もせぬから、もう寝よう」


 私が背を向けるように寝転ぶと、ベレニーチェが私の肩を掴んだ。

 これは、私の勝ちだな……。



「ご、ごめんなさい。嫌じゃないの。ルクレツィオの性癖を受け止められるように頑張るから、その……して? 私、ルクレツィオからされるなら何でも嬉しいよ?」
「だが……」
「お願い! 抱いて! 鞭だって使ってもいいから!」



 ほら、容易く落ちた。
 ベレニーチェは幼い頃より、扱いやすく容易い。私の言葉ひとつひとつに一喜一憂する。



 ベレニーチェを喜ばせるのも落ち込ませるのも、実に簡単だ。











「ひあっ! ああっ、せ、背中っ、あああ、ひっ! ア゛ア゛ア゛! 痛いぃ、ア゛ア゛ア゛ァァァ!!」




 ベレニーチェの中に遠隔操作が出来るローターを挿れ、四つん這いにさせ、バラ鞭で背中を打ってやると、その度に体を仰け反らせ、悦んでいる。


 痛みがあるうちに快感を与えてやると良いと本にも書いてあったので、鞭で打ちながら、オモチャを動かしつつ、もう片方の手で秘所の蕾を撫でてやるとベレニーチェは、いとも容易く達した。



「あああ! おねがっ、も、鞭やらっ、んんあっ、もっ、挿れて、ルクレツィオ、欲しっ、ひあぁぁ!!」
「もうか? もう少し我慢しろ」
「やだぁ、ひぅ……も、挿れてぇ」



 私は仕方がないなと思いながら、ベレニーチェのナカからオモチャを抜き、己を挿入してやろうと思って、ナカに指を挿れた。




 ……………ん?
 愛液で滑って上手に掴めぬ……。あ、もっと奥にいってしまった。



 私はベレニーチェの体を起こし、膝立ちにさせた。すると、ベレニーチェは上手に立てないのか、私の服を掴みながら、しがみついてきた。



「ベレニーチェ、腹に力を入れろ。己でオモチャを出すのだ」
「ふぇっ? は、はひ……」


 もう呂律が回っていないせいか、上手に力が入れられず、オモチャが出てこぬ。私もナカに指を挿れながら、出そうとはするが、滑って掴めず、抜く事が出来ぬ。



「ベレニーチェ、力を入れろ。早く出すのだ」
「やぁ、待って……やってるけど、ちから、入んなっ、ああっ、ナカ、かき混ぜないでぇっ、ああっ、待っ」
「喘いでいる場合か! 愚か者!」
「ふえっ?」



 焦れば焦る程に、奥にいってしまう気がする……。
 どうすれば……。そのうち、重力に負けて落ちてくるだろうか……。




「ベレニーチェ、オモチャが抜けぬ。頼むから出すように力を入れてくれ」
「………へ? …………え?」



 私が正直に話すと、ベレニーチェが途端に青ざめていった。慌てて、己で指を挿れながら力を入れて出そうとし始めた。




「あれ? あれ? 私の指じゃ届かない」
「では、抜くのは私がやるから、貴方は力を挿れてくれ」



 だが、丸くてツルツルした形状のせいか、どうしても掴む事が出来ず、掴もうとする度に逃げてしまう。



「お、お父様ぁ!」
「な、何故、おじ様を呼ぶのだ! やめろ!」
「だ、だって、このまま抜けなかったらどうしよう……わぁ、ルクレツィオのばかぁ。せめて抜けやすい物にしておきなさいよ。誰か助けてー! お父様ぁ!」



 ベレニーチェが焦りから泣き始めたので、私は慌ててベレニーチェを抱き締めた。
 だが、このような事をおじ様に知られる訳にはいかぬ。殺される……。



 それに侍医を呼ぶわけにもいかぬ。父上や母上にバレてしまう。




「でもー、第三者に頼るべきだと思うな。お医者さんに助けて貰えばー?」



「うわっ、コ、コズエ!?」
「梢さんだぁ! お願い、助けてー!」
「だから、お医者さんに頼みなよー」



 突然現れたコズエは、お医者さん呼んだ時に、他のオモチャや鞭が見つかると大変だから、片付けてあげるねと言いながら、片付け始めた。



 助かるが……今はそんな事を言っている場合ではないのに……。



「はい、杏奈ちゃん。ポーション飲んで。とりあえず、背中の痕は消しておこうね」
「う、うん」



 テキパキと証拠を隠滅するかのように働くコズエを見ながら、私は誰に頼れば良いかを考えていた。
 誰か内密に助けてくれる者はいないか……。




「じゃあ、私はこれで帰りまーす。あとは、お医者さんに頼るんだよー」
「いや、待て! コズエ!」



 去って行くコズエに気を取られていると、ベレニーチェが寝巻きを着て、転移の魔法陣をえがき始めた。



「ま、待て! 何処に行くつもりだ?」
「助けて貰うの! もうやだぁ。ルクレツィオのばかぁ」



 私がベレニーチェの腕を掴むとベレニーチェは泣きながら、助けて貰うと言い、魔法陣を始動させた。




destinazioneデスティナツィオーネ エトルリア城、王の居室」
「ベレニーチェ! それだけはやめてくれ!」



 私の叫びと共に、転移の魔法陣は始動し、おじ様の部屋に着いてしまった。



「ベレニーチェ? ルクレツィオ様?」


 部屋にはおば様がいたが、おじ様はいなかった。私が胸を撫で下ろしていると、後ろの方で扉が開く音がした。



 私はそれがまるで地獄へといざなう音に聞こえ、恐る恐る振り返ると、おじ様が立っていた。




「ベレニーチェ、ルクレツィオ! これはどういう事だ!?」
「お父様ぁ! ルクレツィオがぁ」
「ベレニーチェ、やめろ!」


 私がベレニーチェの腕を掴んで止めようとすると、おじ様に手を払われてしまった。とても冷ややかな目をしている。
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