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28.ルカの膝の上1(ジュリオ視点)
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「それで此処は……」
「成る程。分かりました」
俺はルカの隣で勉強をしながら、学院業務の引き継ぎをしているルカとロベルトを眺めていた。
ロベルトは現在、この学院の執務室を転移魔法で、ロベルトの宮と、俺の宮の両方を繋いでくれている。
そのおかげか、通うのはとても楽だ。隣の部屋に行くような感覚で、学院に来られる。
因みに俺の宮側に繋がっている扉は、在学中にロベルトがシルヴィアちゃんと使っていた寝室だ。今は開くと俺の部屋に繋がっているから、その部屋を覗く事は出来ない。
……別に覗きたいとは思わねぇけど。
ロベルトの宮と繋がっている扉は執務室内の物置だ。そんなところと繋げて、本来入っていた物が必要になった時にどうするんだよ、と思ったけど……、そもそも使っていない部屋だったらしい。
「引き継ぎはこれで最後かな。分からない事があれば、何でも聞いてくれると良いよ。まあ、ルカは元々僕についていたのだから、その心配はないと思うけどね……」
「そうですね。大きな事が起きない限りは、殿下の手を煩わせる事はないかと思われます」
「それは良かったよ。では、今日を限りで、僕の宮と繋いでいる転移魔法を解除させてもらうよ」
「えっ!? 何で?」
俺がペンを放り投げ立ち上がると、ルカとロベルトが俺を冷ややかに見つめた。
あ……今は女だった。
言葉遣い。言葉遣い。
「あ、あの……どうしてですか? ロレンツァに会いに行きたいのに……」
「……来なくて良いよ」
「嫌です。シルヴィアちゃんも会いに来て良いと言っていました。だから解除しないで下さい! 行く時は、勝手に行かないから! ちゃんとロベルトの許可を得るから!」
「…………」
うう、そんなにうんざりした目で見なくても良いだろ。
俺が「この通り!」と頭を下げて頼み込むと、ロベルトは溜息を吐いて、チラッとルカを見た。
「……私も何かあった時に殿下に伺いを立てやすくはなります。なので、繋げたままの方が助かるのですが……」
「そうかい? ルカがそう言うのなら……。但し、無闇矢鱈に来ないでくれたまえ。扉で繋いでしまうと、違う場所でも共に住んでいるような気安さがあるから嫌なのだよ」
ロベルトは俺を睨んだ後、帰って行った。
少しは弟らしくならないものだろうか。
少しくらい可愛い弟の一面があっても良いと思うんだけど。まあ、俺が最低な人間だったから悪いんだよな……。俺が最初から良い兄だったら、ロベルトはもっとちゃんと弟をしてくれていただろうか?
……いや、兄上に対しても似たような対応だから、それを望むだけ無駄なのかもしれないな。
でも、いつかはもっと仲良くなれたら良いな……とは思う。
「ジュリア。話は終わったのですから、勉強に専念しなさい」
「…………あ、ごめん」
つっても難しいんだよな。俺は漸く中等部の最終学年……15歳くらいのところまで追いついたんだけど、すげぇ難しい。
今までの基礎の応用とは言うけど……。毎日ずっと教科書や辞書と向き合っていると、頭が禿げそうだ。
えっと、俺が今22だろ? うわぁ、7つも下の子がやってる事が分からないなんて……俺、ヤバいよな。
でも、これもルカとの子供の為だ。頑張らねぇと。
「ジュリア。余計な事ばかりを考えていないで、集中しなさい」
「うっ、だって難しいから……。こんな風にずっと教科書と睨めっこしていても埒があかないと思いませんか? ちょっとだけ休憩。休憩がしたいです」
うっ……ルカの目が怖い。
呆れたような目をしてる……。
「何処が分からないのですか?」
「此処と此処かな……」
「では、教えてあげますから、もう少し頑張りなさい」
「はい……」
俺はルカをジッと見つめた。
ルカの声は耳馴染みが良い。こうやって教えて貰ってると、耳にスッと入って来て心地が良い。
不思議だよな。
前は怖くてたまらなかったのに……今は、ルカの側にずっといたいって思うんだから……。
「分かりましたか?」
「う、うん? た、多分……」
「では、解いてみなさい」
俺が考えていた事を悟られたくなくて、慌てて頷いて、机に向かうと……俺を見ているルカの視線が気になった。
ルカはこうやって昼間は、ちゃんと教えてくれる。
でも、夕食後の復習の時間に今日教えて貰ったところが出来てないと、お仕置きをされたりする。
あ……思い出したら、顔が熱くなってきた気がする。
ヤバい、ヤバい。集中しねぇと……。
「えーっと」
「ジュリア」
「っ……!」
突然、ルカの形の良い長い指が俺の耳をなぞった。
名を呼ぶ声に鼓膜を震わされる気がする。
「ルカ?」
俺がルカを見上げると、そのシャンパンゴールドの瞳がスッと細められた。
それだけで何故かドキドキする気がするから不思議だ。
「勉強をしている筈なのに、耳まで真っ赤にして……一体何を考えていたのですか?」
「え゛っ!?」
声が裏返る。
すると、それを嘲笑うかのようにルカの手が俺の耳から頬へとスーッと移動し、唇をゆっくりとなぞった。
ドキドキする……。
「ルカ……わ、私は何も……」
「そうですか……」
「うわっ」
突然抱きしめられて、隣に座っていた筈の俺はルカの膝の上に座らせられていた。
「ルカ……」
「今は誰もいませんから、私の膝の上で勉強をしなさい」
「えっ、でも……」
そんなの落ちつかねぇし。
何も頭に入って来ないと思う……。
「ルカ! わ、私、自分の椅子に座って、ちゃんと……」
「駄目です。ちゃんとしないと、また仕置きをしなければなりませんよ」
「ひゃっ」
背中から抱きかかえるように腰に手を回されて固定されると、ルカの体温を嫌でも意識してしまって、変な声が出てしまった。
細身で女みたいな容姿だけど、実は脱げば筋肉がしっかり付いている。……女になると、ルカよりも小柄になるせいか……その体に抱き締められると、男の時よりドキドキする気がする。
「成る程。分かりました」
俺はルカの隣で勉強をしながら、学院業務の引き継ぎをしているルカとロベルトを眺めていた。
ロベルトは現在、この学院の執務室を転移魔法で、ロベルトの宮と、俺の宮の両方を繋いでくれている。
そのおかげか、通うのはとても楽だ。隣の部屋に行くような感覚で、学院に来られる。
因みに俺の宮側に繋がっている扉は、在学中にロベルトがシルヴィアちゃんと使っていた寝室だ。今は開くと俺の部屋に繋がっているから、その部屋を覗く事は出来ない。
……別に覗きたいとは思わねぇけど。
ロベルトの宮と繋がっている扉は執務室内の物置だ。そんなところと繋げて、本来入っていた物が必要になった時にどうするんだよ、と思ったけど……、そもそも使っていない部屋だったらしい。
「引き継ぎはこれで最後かな。分からない事があれば、何でも聞いてくれると良いよ。まあ、ルカは元々僕についていたのだから、その心配はないと思うけどね……」
「そうですね。大きな事が起きない限りは、殿下の手を煩わせる事はないかと思われます」
「それは良かったよ。では、今日を限りで、僕の宮と繋いでいる転移魔法を解除させてもらうよ」
「えっ!? 何で?」
俺がペンを放り投げ立ち上がると、ルカとロベルトが俺を冷ややかに見つめた。
あ……今は女だった。
言葉遣い。言葉遣い。
「あ、あの……どうしてですか? ロレンツァに会いに行きたいのに……」
「……来なくて良いよ」
「嫌です。シルヴィアちゃんも会いに来て良いと言っていました。だから解除しないで下さい! 行く時は、勝手に行かないから! ちゃんとロベルトの許可を得るから!」
「…………」
うう、そんなにうんざりした目で見なくても良いだろ。
俺が「この通り!」と頭を下げて頼み込むと、ロベルトは溜息を吐いて、チラッとルカを見た。
「……私も何かあった時に殿下に伺いを立てやすくはなります。なので、繋げたままの方が助かるのですが……」
「そうかい? ルカがそう言うのなら……。但し、無闇矢鱈に来ないでくれたまえ。扉で繋いでしまうと、違う場所でも共に住んでいるような気安さがあるから嫌なのだよ」
ロベルトは俺を睨んだ後、帰って行った。
少しは弟らしくならないものだろうか。
少しくらい可愛い弟の一面があっても良いと思うんだけど。まあ、俺が最低な人間だったから悪いんだよな……。俺が最初から良い兄だったら、ロベルトはもっとちゃんと弟をしてくれていただろうか?
……いや、兄上に対しても似たような対応だから、それを望むだけ無駄なのかもしれないな。
でも、いつかはもっと仲良くなれたら良いな……とは思う。
「ジュリア。話は終わったのですから、勉強に専念しなさい」
「…………あ、ごめん」
つっても難しいんだよな。俺は漸く中等部の最終学年……15歳くらいのところまで追いついたんだけど、すげぇ難しい。
今までの基礎の応用とは言うけど……。毎日ずっと教科書や辞書と向き合っていると、頭が禿げそうだ。
えっと、俺が今22だろ? うわぁ、7つも下の子がやってる事が分からないなんて……俺、ヤバいよな。
でも、これもルカとの子供の為だ。頑張らねぇと。
「ジュリア。余計な事ばかりを考えていないで、集中しなさい」
「うっ、だって難しいから……。こんな風にずっと教科書と睨めっこしていても埒があかないと思いませんか? ちょっとだけ休憩。休憩がしたいです」
うっ……ルカの目が怖い。
呆れたような目をしてる……。
「何処が分からないのですか?」
「此処と此処かな……」
「では、教えてあげますから、もう少し頑張りなさい」
「はい……」
俺はルカをジッと見つめた。
ルカの声は耳馴染みが良い。こうやって教えて貰ってると、耳にスッと入って来て心地が良い。
不思議だよな。
前は怖くてたまらなかったのに……今は、ルカの側にずっといたいって思うんだから……。
「分かりましたか?」
「う、うん? た、多分……」
「では、解いてみなさい」
俺が考えていた事を悟られたくなくて、慌てて頷いて、机に向かうと……俺を見ているルカの視線が気になった。
ルカはこうやって昼間は、ちゃんと教えてくれる。
でも、夕食後の復習の時間に今日教えて貰ったところが出来てないと、お仕置きをされたりする。
あ……思い出したら、顔が熱くなってきた気がする。
ヤバい、ヤバい。集中しねぇと……。
「えーっと」
「ジュリア」
「っ……!」
突然、ルカの形の良い長い指が俺の耳をなぞった。
名を呼ぶ声に鼓膜を震わされる気がする。
「ルカ?」
俺がルカを見上げると、そのシャンパンゴールドの瞳がスッと細められた。
それだけで何故かドキドキする気がするから不思議だ。
「勉強をしている筈なのに、耳まで真っ赤にして……一体何を考えていたのですか?」
「え゛っ!?」
声が裏返る。
すると、それを嘲笑うかのようにルカの手が俺の耳から頬へとスーッと移動し、唇をゆっくりとなぞった。
ドキドキする……。
「ルカ……わ、私は何も……」
「そうですか……」
「うわっ」
突然抱きしめられて、隣に座っていた筈の俺はルカの膝の上に座らせられていた。
「ルカ……」
「今は誰もいませんから、私の膝の上で勉強をしなさい」
「えっ、でも……」
そんなの落ちつかねぇし。
何も頭に入って来ないと思う……。
「ルカ! わ、私、自分の椅子に座って、ちゃんと……」
「駄目です。ちゃんとしないと、また仕置きをしなければなりませんよ」
「ひゃっ」
背中から抱きかかえるように腰に手を回されて固定されると、ルカの体温を嫌でも意識してしまって、変な声が出てしまった。
細身で女みたいな容姿だけど、実は脱げば筋肉がしっかり付いている。……女になると、ルカよりも小柄になるせいか……その体に抱き締められると、男の時よりドキドキする気がする。
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