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「おばけ?」
「山におばけがいたの」
「山に? 一人で山に入っちゃ駄目って言ったでしょう」
ゆかりがきつく言うと、こよりは泣き出した。
「でも、でも。山に、山におばけがいたの。おばけが……おばけがあっ」
「よしよし、泣かないの。おばけはもういないわよ」
ゆかりはこよりの頭を撫でた。
こよりが落ち着いたころ、ゆかりは優しく聞いてみた。
「おばけって、なに?」
「どんなやつ?」
「なにがいたの?」
まだ三歳にならない子供の語彙は少ない。
なかでもこよりは特にそうだった。
ゆかりが心配するほど、普段から同年代の女の子のようにしゃべることが出来ないでいた。
何度聞いてもこよりは「おばけがいたの」としか言わなかった。
下谷は鉄塔に登っていた。
山を縦断する高圧線の点検をするのが彼の仕事だからだ。
いつものように作業進めていると、あるものが目に入って来た。
――うん?
高圧線のそばには遊歩道が並行するように伸びている。
「山におばけがいたの」
「山に? 一人で山に入っちゃ駄目って言ったでしょう」
ゆかりがきつく言うと、こよりは泣き出した。
「でも、でも。山に、山におばけがいたの。おばけが……おばけがあっ」
「よしよし、泣かないの。おばけはもういないわよ」
ゆかりはこよりの頭を撫でた。
こよりが落ち着いたころ、ゆかりは優しく聞いてみた。
「おばけって、なに?」
「どんなやつ?」
「なにがいたの?」
まだ三歳にならない子供の語彙は少ない。
なかでもこよりは特にそうだった。
ゆかりが心配するほど、普段から同年代の女の子のようにしゃべることが出来ないでいた。
何度聞いてもこよりは「おばけがいたの」としか言わなかった。
下谷は鉄塔に登っていた。
山を縦断する高圧線の点検をするのが彼の仕事だからだ。
いつものように作業進めていると、あるものが目に入って来た。
――うん?
高圧線のそばには遊歩道が並行するように伸びている。
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