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日高博士の育児AI研究日誌 学生期編
26話 小学校から見学会の打診が来る
しおりを挟むハルが学校から一通のプリントを持って帰ってきた。
「未来を担う子どもたちに、最先端の科学技術を体験させたい」
「本校は地方であり、そうした機会に乏しい」
「もし所長の日高先生がよろしければ、ロボット研究所で職業体験させてもらえないだろうか」
――そんなもっともらしい理屈がA4用紙にびっしり書かれている。
要約すると「ロボット研究所の見学をさせてください」という内容だ。
完全なる無償奉仕、ボランティア活動。
学校近くの商店や企業は声をかけられるものだと聞いてはいたが、自分のところに話が来るとは想定していなかった。
ハルと一緒に来たタケルも、「先生が、これ父さんに渡しなさいって」と言ってプリントを差し出す。
内容はハルが持ってきたものとほぼ同じだ。
「ハル、タケル。俺達は少し仕事の話をするからちょっとそっちで遊んでてくれ」
「はーい。タケル兄ちゃん。オセロやろ!」
「おー! 今日はHANAとも対戦してみたいな」
《承知しました》
子どもたちは部屋の隅に行き、オセロで遊びはじめた。
HANAは子どもたちの輪にまじり、一緒にオセロの対局をしている。
日高と玲司は渋い顔でプリントとにらめっこをする。
「これは……デジャヴですねえ先輩」
「断るのが吉だろうな。機材を壊されるくらいは想像がつくが、ケガをされたらかなわん」
「ですよね。小さい子ってダメだって言っても勝手に触るから。去年、部品メーカーの畑山さんのところで見学受け入れしたら、知らない間に部品いくつか持ってかれてたって嘆いてましたよ。もう二度と受け入れないって」
「そりゃそうだろう。畑山さんのとこの部品は、一つ一つ手作りで手間暇かかっているんだから、何個か無くなるだけでも大損害だ」
考えるまでもなく「お断り」という結論に至るふたり。
未来の子どもたちのためと言えば聞こえはいいが、受け入れ側としてはデメリットが大きい。
日高と玲司が、ため息交じりにプリントを机に置いたそのとき――
千花が人数分の麦茶を持って入ってきた。
「ねえ、それ、見学じゃなくて“講演”にしたらどう?」
ふたりが顔を向けると、千花がテーブルにグラスをおいた。
「講演、って?」
「うん。子どもたちに研究所に来てもらうんじゃなくて、こっちから学校に行くの。場所は体育館。子どもたちを危ない場所に入れなくて済むし、壊される心配もない。壇上ならHANAにも近づきすぎないし、HANAを連れて行っても大丈夫でしょ?」
玲司が「なるほど……」とうなずいた。
「研究所で受け入れるとなると準備も人手もいるけど、講演ならこっちの裁量で準備できる。リスクも最小限だし、伝えたいこともしっかり伝えられる。……そういうことか」
「そう。ついでに“撮影禁止”の条件をきっちり文書で交わしておけば安心でしょ。守られなかったら、その時点で講演を打ち切る、って」
日高は腕を組み、じっと考えた。
ハルの作文がもたらした、ちょっとした波紋。
それが、町の子どもたちに「ロボットと暮らす未来」を見せる機会になるかもしれない。
「……やるならロボット工学に興味を持ってもらえるようにしないとな」
「うん。お願い。無理しすぎない範囲でね」と、千花は静かに微笑んだ。
「よし……まずは“こちらの条件をのんでもらえるなら対応可能”という形で返答してみようか」
━━━━━━━━
施設名:日高人工知能技術研究所
記録担当 所長・日高雪雄
2035年5月14日 気温22℃ 雨 午後4時30分
小学校からロボット研究所の見学をしたいという依頼が来た。
テレビ局の取材依頼が来た時のことを思い出してしまう。
とはいえ、学校が言うことも一理ある。
一人でも多くロボットに興味を持ってもらえるようにするのも、ロボット工学者の仕事だ。
HANAを連れていくのはあまり現実的ではないから、HANAが稼働する様子を映像に収めて、それを放映する形にしようか。
HANAの映像だけではなんだから、玲司と話してもう少しなにか考えよう。
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