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𝐓𝐫𝐮𝐞 𝐋𝐨𝐯𝐞 𝟒

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「麗二様。夜分にすみません、昨日は一度たりともお顔をお見せしなかったので不安で来ました」


真っ黒な廊下に、窓から月明かりが一筋照らす中。一人の男が麗二の部屋の扉をノックしながらそう告げる。しかし、気配はある筈なのに当の本人は一向に部屋から出て来ようとしない。


(琥珀様が居ないと、こうも変わってしまうのか)


内心そう思いながら「入りますよ」とスペアの鍵を鍵穴に挿し込み、ガチャリと扉を開ける。しかし次の瞬間、目の前にゆらりと大きな影が伸び、影の主がそのまま俺の腕をギュッと掴んだ。「えっ?!」と顔を上げると………其処には発情に当てられた麗二が居た。


「れ、麗二様、あの……麗二様」


するりと腰に手が回わり、ゾワワ…と腰の辺りが震える。Ωでは無いが、この人の触り方はどうも腰にクる。腹を括った私は勢いよく彼を床に捩じ伏せた。「うっ」と苦しそうに顔を歪める彼の膝に、次の瞬間ザクッと注射器を挿す。


「あぐっ……っ」

「……っ、麗二様、お気を確かに。今抑制剤を打ってますから」


そう言っている間も、彼は薄着なのにも関わらず汗が滴っている。いくらΩが同じ屋敷に居るからって、部屋は結構離れている。まさかここまでお互いを性が惹きつけているとは。


(まるで二人が、出逢うべくして出逢った……運命の番の様だ)


辛そうに息を吐き続ける麗二の背中を撫でながら「大丈夫ですか」と顔を覗き込む。来た時より、少しだけ顔色が良くなった。「少し落ち着いた様ですね」と胸を撫で下ろす私とは対照的に「ダメだ…」と唸る様に彼が口を開く。


「どうせコレも一時的にしか効かない」


彼の視線はベッドの方を見つめている。スッと彼から離れ、ベッドの上を見て唖然とする。シーツの上には何本もの注射器が転がっている。既に使用していたみたいだ。


「こんなに何本も……いつからですか」

「………一時間前くらい。……誰か発情しているのか?いきなり匂いが濃くなって息苦しくなった。まさか琥珀とか…」

「…!濃く……?」


壁に項垂れる様に座り込んでいる彼を見て疑問に思う。確かに、βの私でも感じ取れる程の匂いの濃さではあったが、部屋を閉じた後は一通り匂いは消えて無くなっていた。扉を開けない限り琥珀様の匂いが周りに知られる事もーー……


(………!まさか誰かが……?!)


嫌な予感がして我に返った私は次の瞬間「麗二様は此処にいて下さい!」と制する。「はぁ…?」と眉を顰める彼を置いて、そのまま部屋を飛び出す。背後から「白雪!」と叫ぶ声が投げ掛かってくるも今は無視をして、走り続ける。


(琥珀様……!どうかご無事で……!)

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