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前幕~パーティーが居酒屋店員になるまで~
前幕・5~居酒屋~
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~新宿・歌舞伎町~
~個室居酒屋「簾」~
男の後を離れないようにして、どうにかこうにか雑踏を抜けた僕達は、高層建築の一層にあるらしい飲食店にて、椅子に腰を下ろした。
心地の良い音楽が店内には流れ、部屋の中央には複雑な造形をした吊り下げ式の灯りが点されている。
どこからどう見ても高級な風合いの店だが、男はそんなことを気にする風もなしに、テーブル上のメニューを眺めている。
「あーー、つっかれたーー。あんなとんでもない人混みの中歩いたの、あたし初めてだ……」
パスティータが椅子に沈み込むようにしながら、情けない声を上げる。
だが疲弊しているのはパスティータだけではない、僕達全員が一様に疲れていた。
何しろ、街の大通りは人間でごった返しており、思うように歩けない。
右を向いても左を向いても煌々と灯りのついた看板や街灯が並び、おまけに大通りの中心を馬に引かれない鉄の馬車が、灯りを点して走り抜けていく。
横道に入ると両脇には無数の飲食店が並び、辺り一帯に肉と魚と油の、食欲をそそる匂いが満ち満ちている。
こんな街を歩いて、疲れないはずがなかった。
「ここ新宿は、まさに「眠らない街」。24時間365日、一年中どこかで誰かが働き、騒ぎ、歌っているのさ。」
「シンジュク?この街はそういう名前なのか……」
男がメニューを開いたまま片目を瞑って見せ、そう述べる。
街の名前にシフェールが反応し、ふっと宙を見上げた。口元が小さく「シンジュク、シンジュク……」と呟いている。
「まぁその辺の話も含めて、飲み食いしながらやろう。時間も時間だし、空腹だろう?
ここは酒も一通り揃っているし、店員も詳しいから、好きに頼むといい」
「酒か……そんならまずはエールでも貰おうか。他に頼むやつはいるか?」
アンバスが声を上げると、次々に手が上がる。勿論僕も手を上げたが、全員の手が上がったところで、男が口を開いた。
「あー、んー……その前にそこの小柄なお嬢さん、年齢は?」
そう言いながら男が目を向けたのは、パスティータ。
突然話を振られたパスティータが、首をかしげる。
「19だよ」
「おっと申し訳ない、それなら君はダメだ。ノンアルコールで行こう」
男の言葉に、椅子に沈み込んでいたパスティータがやおら立ち上がる。そのままの勢いでテーブルに勢いよく両手をついた。
「はぁ!?バカにしないでよね、あたしだってエールの一杯や二杯くらい……」
色めき立つパスティータを、隣に座っていたエティがなだめる。男も両手を前に突き出してなだめ始めた。
「すまないお嬢さん、馬鹿にしているわけじゃないんだ。
この国は20歳を超えていないと、飲酒が認められていない。酒を提供した店の側も罰せられるんだ、堪えてくれ」
罰せられると聞いて、パスティータは拳を収めて再び座る。そうこうしているうちに、テーブルに店員がオーダーを取りに来た。
「ご注文を」
「生ビールを5つ、ジンジャーエールを1つ。それとシーザーサラダ、若鶏の塩焼き、フライドポテト、出汁巻き玉子を1つずつ。後はそうだな、枝豆を2つ貰おうか。」
男がつらつらと述べるオーダーを、店員は素早く伝票に書き留めていく。そして店員は一礼すると、テーブルを離れていった。
「いいのか?ご馳走してくれるという話だったが……その、あんなに頼んでしまって」
僕が不安そうに男へと視線を投げると、男はふっと微笑みを見せた。
「心配ないさ、この店はそう高い店ではないし……それに、ここは僕の店だからね」
「えっ?」
男の言葉に、僕の口から思わず疑問の声が漏れた。僕の店?
疑問に思う間もなく、先程の店員が飲み物を持って現れた。両手に3つずつ、合わせて6つ。ガラス製のジョッキに並々と黄金色の液体が注がれている。
「お待たせしました。生ビールと、ジンジャーエールでございます。」
「あ、ありがとうございます……」
店員に一番近い位置にいたエティが、テーブルに置かれたジョッキを手に取り――小さく仰け反った。
「冷たっ!?えっ!?」
「ははっ、よく冷えているだろう?これもここの店の売りなんだ」
男が身を乗り出して、ジョッキを両手で受け取る。薄い黄金色のジョッキはパスティータへ、残りの泡立つ黄金色のジョッキは5人へ。
各々にジョッキが行き渡ったところで男が一言。
「それじゃ、今日この日の二度と来ない出逢いを記念して――乾杯!!」
「「乾杯!!」」
ガチャガチャとガラスのジョッキが派手にぶつかる。
だがジョッキは一筋のヒビも生じることなく、それぞれのエールが全て胃袋に収まるまで、その黄金を支え続けていた。
~前幕・6へ~
~個室居酒屋「簾」~
男の後を離れないようにして、どうにかこうにか雑踏を抜けた僕達は、高層建築の一層にあるらしい飲食店にて、椅子に腰を下ろした。
心地の良い音楽が店内には流れ、部屋の中央には複雑な造形をした吊り下げ式の灯りが点されている。
どこからどう見ても高級な風合いの店だが、男はそんなことを気にする風もなしに、テーブル上のメニューを眺めている。
「あーー、つっかれたーー。あんなとんでもない人混みの中歩いたの、あたし初めてだ……」
パスティータが椅子に沈み込むようにしながら、情けない声を上げる。
だが疲弊しているのはパスティータだけではない、僕達全員が一様に疲れていた。
何しろ、街の大通りは人間でごった返しており、思うように歩けない。
右を向いても左を向いても煌々と灯りのついた看板や街灯が並び、おまけに大通りの中心を馬に引かれない鉄の馬車が、灯りを点して走り抜けていく。
横道に入ると両脇には無数の飲食店が並び、辺り一帯に肉と魚と油の、食欲をそそる匂いが満ち満ちている。
こんな街を歩いて、疲れないはずがなかった。
「ここ新宿は、まさに「眠らない街」。24時間365日、一年中どこかで誰かが働き、騒ぎ、歌っているのさ。」
「シンジュク?この街はそういう名前なのか……」
男がメニューを開いたまま片目を瞑って見せ、そう述べる。
街の名前にシフェールが反応し、ふっと宙を見上げた。口元が小さく「シンジュク、シンジュク……」と呟いている。
「まぁその辺の話も含めて、飲み食いしながらやろう。時間も時間だし、空腹だろう?
ここは酒も一通り揃っているし、店員も詳しいから、好きに頼むといい」
「酒か……そんならまずはエールでも貰おうか。他に頼むやつはいるか?」
アンバスが声を上げると、次々に手が上がる。勿論僕も手を上げたが、全員の手が上がったところで、男が口を開いた。
「あー、んー……その前にそこの小柄なお嬢さん、年齢は?」
そう言いながら男が目を向けたのは、パスティータ。
突然話を振られたパスティータが、首をかしげる。
「19だよ」
「おっと申し訳ない、それなら君はダメだ。ノンアルコールで行こう」
男の言葉に、椅子に沈み込んでいたパスティータがやおら立ち上がる。そのままの勢いでテーブルに勢いよく両手をついた。
「はぁ!?バカにしないでよね、あたしだってエールの一杯や二杯くらい……」
色めき立つパスティータを、隣に座っていたエティがなだめる。男も両手を前に突き出してなだめ始めた。
「すまないお嬢さん、馬鹿にしているわけじゃないんだ。
この国は20歳を超えていないと、飲酒が認められていない。酒を提供した店の側も罰せられるんだ、堪えてくれ」
罰せられると聞いて、パスティータは拳を収めて再び座る。そうこうしているうちに、テーブルに店員がオーダーを取りに来た。
「ご注文を」
「生ビールを5つ、ジンジャーエールを1つ。それとシーザーサラダ、若鶏の塩焼き、フライドポテト、出汁巻き玉子を1つずつ。後はそうだな、枝豆を2つ貰おうか。」
男がつらつらと述べるオーダーを、店員は素早く伝票に書き留めていく。そして店員は一礼すると、テーブルを離れていった。
「いいのか?ご馳走してくれるという話だったが……その、あんなに頼んでしまって」
僕が不安そうに男へと視線を投げると、男はふっと微笑みを見せた。
「心配ないさ、この店はそう高い店ではないし……それに、ここは僕の店だからね」
「えっ?」
男の言葉に、僕の口から思わず疑問の声が漏れた。僕の店?
疑問に思う間もなく、先程の店員が飲み物を持って現れた。両手に3つずつ、合わせて6つ。ガラス製のジョッキに並々と黄金色の液体が注がれている。
「お待たせしました。生ビールと、ジンジャーエールでございます。」
「あ、ありがとうございます……」
店員に一番近い位置にいたエティが、テーブルに置かれたジョッキを手に取り――小さく仰け反った。
「冷たっ!?えっ!?」
「ははっ、よく冷えているだろう?これもここの店の売りなんだ」
男が身を乗り出して、ジョッキを両手で受け取る。薄い黄金色のジョッキはパスティータへ、残りの泡立つ黄金色のジョッキは5人へ。
各々にジョッキが行き渡ったところで男が一言。
「それじゃ、今日この日の二度と来ない出逢いを記念して――乾杯!!」
「「乾杯!!」」
ガチャガチャとガラスのジョッキが派手にぶつかる。
だがジョッキは一筋のヒビも生じることなく、それぞれのエールが全て胃袋に収まるまで、その黄金を支え続けていた。
~前幕・6へ~
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