婚約者を義妹に奪われましたが貧しい方々への奉仕活動を怠らなかったおかげで、世界一大きな国の王子様と結婚できました

青空あかな

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第19話:ツケ(Side:ルドウェン⑥)

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 俺がゼノ帝国の晩餐会から帰って数日後、ようやく父上と母上の体調が良くなった。

「父上、母上。お身体の方はもうよろしいのでしょうか?」
「ええ、すっかり元気になったわよ。ルドウェンちゃんには迷惑かけちゃったわね」
「あぁ、もう大丈夫だ。ところで、国政の方は問題ないか?」

――クソッ、父上はすぐ俺のことを疑ってくる。別に問題なんかねーよ!

「はっ、特に問題などはございません」

 この前行ってきた晩餐会のことは黙っておいた。
 ディナーに呼ばれて食事をしてきた。
 たったそれだけだ。

「王様、王妃様、失礼いたします」

 三人で話していると、召使いが今日の分の手紙を持ってくる。
 うんざりするほどどっさりある。
 だが、その中の一通だけやけに立派な手紙があった。
 父上が手に取って内容を読んでいく。

「これは何だろうな? ずいぶんと、立派な文書だが………………おい、ルドウェン! これはいったいどういうことだ!?」

 父上が血相を変えて怒鳴る。

――ったく、うるせえなぁ。

「父上、どうされましたでしょうか?」

 父上は何も言わず、乱暴に手紙を差し出してくる。
 俺はしぶしぶ手紙を受け取った。

――もっと丁寧に渡せよな。どれどれ……。

 手紙はゼノ帝国からきたものだった。
 俺はどうせ、先日の晩餐会のお礼だろうと思った。
 わざわざ忙しい中出向いてやったんだから、お礼の一言くらいあってもいいはずだ。
 まぁ、父上たちには黙って行ったわけだから、怒鳴るのも無理はないか。

――父上と母上の前だから、一応ゆっくり読んでやるか。

“……アトリス王代理であらせられるルドウェン王子の許諾を受け、貴国が所有するダイヤモンド鉱山の採掘権は我が国に譲渡された。ダイヤモンド鉱山の正式な権利書も、ルドウェン王子から頂いている。また先日交わした条約に基づき、貴国は我が国へ速やかにダイヤを運搬するはずだが、未だに一粒のダイヤも届いていない。この件について貴国へ最終通告するため、我が国は皇太子のレオナルドを派遣する。もし無視する場合は、条約違反に名を借りた我が国への宣戦布告と捉える。”

――は? なんだこれは?

「ルドウェン、貴様ぁ! わしらがいない間に何をしたぁ!」

 父上が俺の胸ぐらを掴む。
 いったい何がどうなっているのだ。
 俺が何をしたって言うのだ。

「いや、わ、私にも何が何だかさっぱりわかりません! 私はそんな条約など結んでおりません! な、何かの間違いですよ!」

 俺は必死に弁明する。
 国で一番大事なダイヤモンド鉱山をタダで渡すなんて、それこそ大バカ者がすることだ。
 だいたい、鉱山の権利書なんて渡しているわけないだろうが。

「そ、そうだ! 父上、金庫の中を確かめてもらえばわかります。権利書がちゃんと保管されていることを見て頂ければ、この手紙は嘘の手紙だとお分かりになるはずです!」

 俺は父上たちを執務室に連れて行く。
 怒っている人間の誤解を解くには、事実を見せるのが一番良いからだ。

――は? 何で権利書がねえんだよ!! おかしいだろ!! どこ行ったんだよ!!

 いくら金庫の中を探しても、ダイヤモンド鉱山の権利書が見つからない。
 金庫どころか机の上、本棚、絨毯の下など、部屋の中をすみずみまで探しても見つからない。
 俺は血の気が引いて、頭の中が真っ白になった。

「……権利書はどこにあるのかしら? ……ルドウェンちゃん?」

 今までずっと黙っていた母上が言った。
 目が怒りでぷるぷる震えている。
 これほどまでに怒っている母上を見るのは、今までで初めてだった。

「き、きっとどこかに……うああ!」

 母上に思いっきり叩かれて、俺は床に転がる。
 叩かれた頬がジンジン痛んでしょうがなかった。

――そうだ、誰かに盗まれたに違いない!

「ち、誓って私はこのような条約は結んでおりませんし、権利書も渡してなどおりませんっ! なぜ権利書が無いのかわかりませんが、も、もしかしたら誰かが盗んだのかもしれません! ぐわあああ!」

 今度は父上に力いっぱい蹴り飛ばされた。俺はもう体中ボロボロだった。

「盗まれただと! もしそんな奴がおったら、とっくに王宮の警戒魔法で焼き殺されておるわ! そんなことも忘れたか、この大バカ者が!」

――た、確かに父上の言う通りだ。侵入者や盗人は生きては帰れない。誰かが招き入れでもしない限りは……。

 そこまで考えたとき、突然俺はある人物を思い出した。
 ヘンリック・ルーマン、ガーデニー家に新しく勤め始めた執事だ。

――あ……あいつだ。あいつが盗んだに違いない! 今思えば、何となく怪しい感じがしていたじゃないか!

「ち、父上、母上! 私に心当たりがある者がいます! ヘンリックというガーデニー家の新しい執事です!」
「ヘンリック? そいつがどうしたと言うのだ」
「父上と母上のお見舞いということで、ダーリーさんと一緒に何日か前にやってきたのです。執務室にいる私にも会いにきたのですが、きっと、そのとき私の目を盗んで……」
「お前は執務室にそいつ一人にしたのか?」

――そんなわけないだろ。父上は何を言って……。

 そういえば、あのときダーリーと少しだけ別の部屋に行っていた。

――で、でもそんなに長い時間じゃなかったぞ! 金庫を無理やり空けたような形跡もなかったし……。いや……書類の確認が面倒で開けっ放しにしていたんだ……。

「貴様ぁ! そんな信用の足らない人物を、あろうことか執務室にまで招き入れるとは!」
「何てことしてくれたのよ! この売国奴!」
「ま、待ってください! 父上、母上! 私がそのヘンリックを捕えてきます! そうすれば全てが明らかになります!」

そう言うと、俺は逃げるように王宮から出て行った。

――クソっ、ヘンリックめ! 奴さえ捕まえれば俺の誤解も解けるはずだ!

 俺は急いでガーデニー家に向かう。

「おい! ヘンリックはどこにいる!? おーい!」

 屋敷の前で叫んでいると、ダーリーが出てきた。

「あら、ルドウェン様。どうかされたの?」

――どうかされたの? じゃねえ!

「だから、ヘンリックはどこにいるのか聞いてんだよ!!」
「え? ヘンリックならお母さんの具合が悪くなったとかで、もう辞めちゃったけど」
「はあ!? 辞めたぁ!?」
「う、うん。あ、でも家の方は大丈夫よ。ヘンリックが王宮から派遣された人達に、やり方を教えといてくれたから。なんか……ルドウェン様怒ってる?」

――あ、あいつはゼノ帝国の密偵だったのだ……。

 今さら気が付いてももう遅い。
 俺は目の前が真っ暗になった。
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