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第38話:自分だけが(Side:シホルガ④)

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「シホルガさん、あなたも来てください!」
「なんで!」

 いきなり、リーダーは私の腕を掴んだ。

「あなたみたいな半人前でも、いないよりはいた方がマシでしょう!」
「ちょっとやめて! 離して!」
 
 リーダーは私を掴んで引きずっていく。
 ふ、ふざけんじゃないわよ。
 あんな怖いヤツの解呪なんかできるわけないじゃない。
 というか、どうして私が!
 ベテランのあんたらがやりなさいよ!

「いい加減にしてください、シホルガさん! あなたは解呪師になりたいんじゃないの!?」
「だから、もう辞めるの!」
「「うわああああ!」」

 いきなり黒いもやが仕事場に襲い掛かってきた。
 ドーン! という衝撃とともに、みんなが吹っ飛ばされる。
 アタクシも吹っ飛ばされ床に強打してしまった。

「うぐっ……どうして、アタクシが……」

 背中がズキズキするじゃないの。
 薄っすらと目を開ける。
 仕事場の壁は粉々に砕かれていた。
 そして、その後ろから見えるのは……。

「「きゃああっ! 闇魔法が!」」

 黒いもやがアタクシたちに飛びかかってきた。
 塊になって押し寄せてくる。
 すかさず、リーダーが指示を出した。

「みなさん! 体制を整えるんです! 私たちが踏ん張らないと、さらに大変なことになってしまいます!」
「「は、はい! わかり……ぎゃあああああ!」」

 闇魔法は縦横無尽に暴れ回っている。
 みんなが混乱している隙を突いてコッソリ抜け出した。
 闇魔法はあの人たちに任せましょう。
 アタクシの大切な顔が傷ついたら、それこそ大変でしょうに。
 こういうときくらいは役に立ちなさい。
 いつも偉そうにしているんだから。

「さっさっとこの場を離れましょう……うわっ、ちょっとこっち来ないで!」

 せっかく抜け出したのに、また別の闇魔法が襲い掛かってきた。
 寸でのところで避けたけど、アタクシを追いかけまわしてくる。
 慌てて解呪師たちに怒鳴った。
 
「あ、あんたたち! まずはこいつをどうにかしなさい!」
「「うわあっ! なんて強力な闇魔法だ!」」

 でも誰も気づかない。
 悪態を吐く間もなく、闇魔法が襲ってくる。
 アタクシは逃げながら必死に考えていた。

――も、もしかして、あの荷物が原因なんじゃ?

 慌てて振払う。
 いや、そんなはずがないわ。
 だって、あれは公爵家からの荷物だったんだもの。
 闇魔法がかかっていたはずはない。
 それよりも今は自分の命よ。
 王宮の人たちなんかどうでもいいわ。
 アタクシが助かればそれでいいのよ。
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