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第27話:街で②
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〔いや、何でもない。気にしないでくれ〕
「いえ、何か御用がございましたら、ぜひおっしゃってください。私はルイ様の特等メイドでございますので」
もしかしたら、何かご入り用の物があるのかもしれない。
しばし待つと、ルイ様はさっきより小さな字で書かれた。
〔……気をつけてな〕
小さいけれど、確かにそう書かれていた。
気持ちがほんわかして温かくなる。
やっぱり……ルイ様は優しい方だな。
ルイ様の気遣いが嬉しくて、思わず大きな声で返事をしてしまった。
「はいっ。精一杯気をつけて買い出しを行いますっ」
ビシッと敬礼しながら言うと、ルイ様は無表情の下にわずかな微笑みを浮かべて扉を閉める。
ほのかな温かさを胸に外に出る。
お庭を横切っているとき、ガルシオさんとばったり出会った。
『ポーラ、どっか行くのか?』
「みんなと一緒に、”ロコルル”の街へ買い出しに行ってきます」
『なんなら乗せていってやるぞ。歩くと二、三十分はかかるからな』
ガルシオさんはわずかに身を屈めてくれる。
大変ありがたいのだけど、丁寧に遠慮した。
「ありがとうございます。でも、大丈夫です。ガルシオさんを見ると、街の人たちは驚いてひっくり返ってしまうかもしれませんので」
『それもそうかぁ』
フェンリルなんて見たら、街は大変な大騒ぎになってしまうだろう。
門のところでエヴァちゃんとアレン君と合流する。
ガルシオさんは前足を振って、私たちを見送ってくれた。
お屋敷を出て歩くこと二十分ほど。
“ロコルル”の街に着いた。
中央の広場からは石畳の道が何本も伸び、お肉屋さんや八百屋さん、武器屋さんなどたくさんのお店が立ち並ぶ。
街には買い物客のざわめきや子どもたちの遊ぶ声、お客さんを呼ぶ威勢のいい声などが響く。
北の辺境ではあるけど、王都にも負けないくらいの賑わいだ。
これもきっと、ルイ様の良い統治のおかげなのだろう。
「じゃあ、わたしに着いてきて。買う物がいっぱいあるから効率よく回らないと」
「「は~い」」
エヴァちゃんはメモを片手に、私たちを先導する。
一度馬車で通ったはずだけど、街の様子はあまり覚えていなかった。
きっと、緊張や不安でそれどころじゃなかったのだろう。
それなのに、今は興味を惹かれてならない。
――お屋敷での日々は、私を癒してくれているんだな。
そう強く実感する。
三十分も歩きまわると、手荷物がいっぱいになった。
食料品に日用品、裁縫に使う糸や布……。
一旦中央の広場に戻り、荷物を整理する。
事前に買う予定だった物はほとんど購入できていたけど、重い肥料が残っていた。
「エヴァちゃん、お花の肥料はどうしようか」
「そうだねぇ……重くなっちゃうけど、買って帰ろうかな」
「僕とポーラさんで運べば持てそうだよ」
少々重いけど買って帰ることに決め、花屋さんの方へ歩きだしたとき。
「「大変だ! 火事だー! ……火事だぞー!」」
街中から切羽詰まった声が聞こえた。
「いえ、何か御用がございましたら、ぜひおっしゃってください。私はルイ様の特等メイドでございますので」
もしかしたら、何かご入り用の物があるのかもしれない。
しばし待つと、ルイ様はさっきより小さな字で書かれた。
〔……気をつけてな〕
小さいけれど、確かにそう書かれていた。
気持ちがほんわかして温かくなる。
やっぱり……ルイ様は優しい方だな。
ルイ様の気遣いが嬉しくて、思わず大きな声で返事をしてしまった。
「はいっ。精一杯気をつけて買い出しを行いますっ」
ビシッと敬礼しながら言うと、ルイ様は無表情の下にわずかな微笑みを浮かべて扉を閉める。
ほのかな温かさを胸に外に出る。
お庭を横切っているとき、ガルシオさんとばったり出会った。
『ポーラ、どっか行くのか?』
「みんなと一緒に、”ロコルル”の街へ買い出しに行ってきます」
『なんなら乗せていってやるぞ。歩くと二、三十分はかかるからな』
ガルシオさんはわずかに身を屈めてくれる。
大変ありがたいのだけど、丁寧に遠慮した。
「ありがとうございます。でも、大丈夫です。ガルシオさんを見ると、街の人たちは驚いてひっくり返ってしまうかもしれませんので」
『それもそうかぁ』
フェンリルなんて見たら、街は大変な大騒ぎになってしまうだろう。
門のところでエヴァちゃんとアレン君と合流する。
ガルシオさんは前足を振って、私たちを見送ってくれた。
お屋敷を出て歩くこと二十分ほど。
“ロコルル”の街に着いた。
中央の広場からは石畳の道が何本も伸び、お肉屋さんや八百屋さん、武器屋さんなどたくさんのお店が立ち並ぶ。
街には買い物客のざわめきや子どもたちの遊ぶ声、お客さんを呼ぶ威勢のいい声などが響く。
北の辺境ではあるけど、王都にも負けないくらいの賑わいだ。
これもきっと、ルイ様の良い統治のおかげなのだろう。
「じゃあ、わたしに着いてきて。買う物がいっぱいあるから効率よく回らないと」
「「は~い」」
エヴァちゃんはメモを片手に、私たちを先導する。
一度馬車で通ったはずだけど、街の様子はあまり覚えていなかった。
きっと、緊張や不安でそれどころじゃなかったのだろう。
それなのに、今は興味を惹かれてならない。
――お屋敷での日々は、私を癒してくれているんだな。
そう強く実感する。
三十分も歩きまわると、手荷物がいっぱいになった。
食料品に日用品、裁縫に使う糸や布……。
一旦中央の広場に戻り、荷物を整理する。
事前に買う予定だった物はほとんど購入できていたけど、重い肥料が残っていた。
「エヴァちゃん、お花の肥料はどうしようか」
「そうだねぇ……重くなっちゃうけど、買って帰ろうかな」
「僕とポーラさんで運べば持てそうだよ」
少々重いけど買って帰ることに決め、花屋さんの方へ歩きだしたとき。
「「大変だ! 火事だー! ……火事だぞー!」」
街中から切羽詰まった声が聞こえた。
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