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第一章 パンダにされた弱小戦士

勇者パーティーの不協和音

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 さて、バリウス率いる勇者パーティーは、次の目的地を既に決めていた。
「今回の目的地はフリキントン森林にある勇気の盾の回収か」
「確かあそこはセイレーンがいると言ってたな。物凄く凶暴な奴がいると」
「なるほどな!それなら俺の剛腕でとっちめてやる!」
「「いや、剛腕だけじゃ駄目だから!」」
 オットーの自信満々の表情にバリウスとボルスがツッコミを入れたその時、シェリアがいない事に気付く。
「シェリアはどうしたんだ?」
「何処か行くと言ってから帰ってくるのが遅いな」
「どうせ自然のトイレに行ってたんじゃないか?」
「そ、その言葉は……あ」
 ボルスが止めようとするがもう遅い。彼の後ろには怒りのオーラを放っているシェリアがいた……

     ※

「まったく!余計な事を言うんだから!返事は?」
「「「あい……ずびばべんべじだ……」」」
 フリキントン森林に向かう道では、シェリアは先に進みながら怒っている。それもその筈禁句を言ったオットーは勿論、バリウスやボルスまで顔面を腫らしていたのだ。
「次言ったらパーティーを抜けるからね。分かった!?」
「気を付けるよ……オットー、お前が余計な事をいうから……」
 シェリアの忠告にバリウスは頷き、オットーをジト目で見る。
「俺は別に気にしてないが……」
「少し気にしろよ!ともかく、フリキントンの森は迷いやすいからな。十分注意しないと足元すくわれるぞ」
 ボルスからの忠告に全員が頷く中、モンスターが突然現れる。
「モンスターの種類はガラガラスネーク、アイアンコング、ジャックランタンか。よし!行くぞ!」
 バリウスの合図でモンスター達に立ち向かい、次々と攻撃を仕掛ける。
「そこだ!」
 ボルスは得意の格闘術でアイアンコングを倒す事に成功する。
「はっ!」
 シェリアも魔術で次々とジャックランタンを倒す中、何故か彼女は乗り気ではなかった。
「そらよ!」
 オットーも強烈な剛腕で斧をふるい、ガラガラスネークを倒す。
「これで終わりだ!」
 最後の一体を見事撃破したバリウスは剣を収め、すぐに前を向く。
「先に進もう。道草を食っている場合ではないな」
「ああ。その辺はしっかりしているな」
「うるさい!」
 ボルスのジト目にバリウスは赤面し、一行は先に進み始めた。

     ※

「あれが……フリキントン森林か……」
 バリウス一行はフリキントン森林に辿り着き、眼の前の光景をただ見ていた。
 普通の森である事に変わりはないが、奥の方からは危険な匂いが漂ってくる。
「ともかく急いで入ろう。何かあったでは遅いからな」
 バリウスを筆頭に彼等はそのまま森の中へと入った。

     ※

 バリウス一行は森の中を問題なく進む中、シェリアは不安そうな表情をしていた。
「なんか不安そうだけど、どうした?」
「いや……途中でセイレーンとか出そうで大変な事になると感じたし……それに……ファンクを追放したのは大きな痛手じゃない?」
「っ!」
 シェリアの推測にバリウスは思わず反応し、彼女の方を向く。
「どういう意味だ、シェリア!」
 バリウスはシェリアに詰め寄りながら彼女に怒鳴り散らす。
「確かに彼は無能だったのかも知れない。私はファンクを心配になって様子を見てみたの」
「ファンクの様子を見ただと!?何故教えてくれなかったんだ!」
 バリウスは更に怒鳴るが、シェリアは平然としていた。
「アンタならファンクを馬鹿にするからでしょ!それに、この事を話したらどうせ呆れるに決まっている!けどね、ファンクはパンダになってから盗賊団を壊滅したんだから!」
「「「壊滅させただと!?」」」
 シェリアの話にバリウス達は驚きを隠せずにいた。
「そうよ。他にも5人の仲間がいたけど、上手く連携して盗賊団のリーダーも倒したの」
「そんな馬鹿な……アイツがパンダになってからこんなにも活躍したなんて……」
 バリウスはパンダになったファンクが活躍している事に信じられず、ボルスやオットーも同様だった。
「あと、これだけは言っておくわ!今回のクエストで失敗したら……私はこの勇者パーティーから出ていくからね!」
「出ていくだと!?そんなの僕が……」
「バーロー!」
「ぐへら!」
 バリウスが反論して言い切ろうとするが、シェリアに殴り飛ばされて地面に激突してしまう。
「アンタは勇者である以上、調子に乗っている!他人への配慮もないからこんな性格なのよ!」
「うおっ……ズバズバ言うな……」
 シェリアの怒鳴り声にボルスはゾッとするが、バリウスは失神していて聞こえていなかった。
「ボルス、アンタもそうよ!だいたい格闘の天才と言われているけど、凡人……いや、それ以下の人間を気遣わない性格をしているわ!そんなので調子に乗らないでくれる?」
 シェリアはボルスにも怒鳴り散らし、彼は思わずピクッとしてしまう。
「そう言うお前も魔術ではトップクラスじゃないか!なのになんでファンクの事を心配しているんだよ!」
「煩い!私はファンクが頑張っている事を知っているんだから!それに……パンダ……好きだし」
「いや、それが本音だろ!お前パンダ好きだろ!」
 ボルスがツッコミを入れたその時、シェリアがいきなり彼を掴みかかる。
「へ?」
「そりゃあ!」
「ぎゃああああああ!」
 シェリアは思い切ってボルスを投げ飛ばしてしまい、彼もまた地面に頭を打ってしまう。
「もう良い!こんなパーティー抜けてやるわよ!」
 シェリアは怒りながらその場から去ってしまい、残ったのはバリウス、ボルス、オットーの3人となってしまった。
「まあ良い……僕達だけでも行くぞ!」
 バリウスは起き上がってそのままフリキントン森林を探索していき、ボルスとオットーも後に続いた。

     ※

「まったく!信じられない!彼奴等なんて本当に只のクズよ!」
 バリウス達と別れたシェリアはプンスカ怒りながら、スハラートの街へと辿り着いていた。
「あんな奴等と仲間になるなら、冒険者として修行しておかないとね。でも、ファンクの仲間になろうかな……」
 シェリアがどうするか考えたその時、一人の老人が姿を現す。
「ほっほっほ。お嬢ちゃん、その様子だと勇者パーティーから抜けた様じゃな」
「あなたは?」
「わしは格闘マスターのチョンボじゃ。お主、強くなりたいか?」
 チョンボからの質問にシェリアはコクリと頷く。
「ええ!あんな勇者パーティーなんか馬鹿らしくてやってられないわ!こうなったらもっと強くなってファンク達の役に立ちたいの!」
「なら、ここに入れ。わしの道場じゃ!」
 チョンボが指差す方を見ると、なんと道場が目の前に建てられていた。
「凄い道場ね。勿論入るわ!」
「よっしゃ!来い!」
 シェリアは迷わず入る事を宣言し、チョンボと共に道場の中に入った。

     ※

「うわっ!門下生が多くいる!」
 道場の中では多くの門下生が修業に励んでいて、シェリアは驚きを隠せずにいた。
「この道場は格闘は勿論、剣術、魔術などもある。また、魔術格闘もあるぞ」
 魔術格闘の言葉を聞いた途端、シェリアはすぐにチョンボの方を向く。
「私、魔術格闘を覚えたい!接近戦でも遠距離でも戦えるオールラウンダーになりたいの!」
「なるほど。お主は魔術は覚えているが、格闘技を覚える必要がある。かなり厳しくなるが、成功する事を信じておるぞ!」
「ええ!」
 シェリアはチョンボから道着を受け取り、すぐに着替え終える。
「私、今後の衣装はこれで行くから!」
「うむ!実に似合うぞ!わしの孫と似ているのう」
「お孫さんがいるのね……それよりも修業を!」
「よし!門下生達よ、囲め!」
 チョンボの合図と同時に、門下生達はシェリアを囲む。
「まずは門下生を倒す事から始めよう。彼等から格闘技術を受け取りつつ、どう倒すか考える事じゃ」
「なるほど。それなら問題ないわ!行くわよ!」
 シェリアは気合を入れたと同時に、門下生達との戦いに挑み始めた。
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