紅(くれない)の深染(こそ)めの心、色深く
「ならば、私を野に放ってください。国の情勢上無理だというのであれば、どこかの山奥に蟄居でもいい」
広大な秋津豊島を征服した瑞穂の国では、最後の戦の論功行賞の打ち合わせが行われていた。
その席で何と、「氷の美貌」と謳われる美しい顔で、しれっと国王の次男・紅緒(べにお)がそんな事を言い出した。
打ち合わせは阿鼻叫喚。そんななか、紅緒の副官を長年務めてきた出穂(いずほ)は、もう少し複雑な彼の本音を知っていた。
十三年前、敵襲で窮地に落ちった基地で死地に向かう紅緒を追いかけた出穂。
足を引き摺って敵中を行く紅緒を放っておけなくて、出穂は彼と共に敵に向かう。
「物好きだな、なんで付いてきたの?」
「なんでって言われても……解んねぇっす」
判んねぇけど、アンタを独りにしたくなかったっす。
告げた出穂に、紅緒は唐紅の瞳を見開き、それからくすくすと笑った。
交わした会話は
「私が死んでも代りはいるのに、変わったやつだなぁ」
「代りとかそんなんしらねっすけど、アンタが死ぬのは何か嫌っす。俺も死にたかねぇっすけど」
「そうか。君、名前は?」
「出穂っす」
「いづほ、か。うん、覚えた」
ただそれだけ。
なのに窮地を二人で脱した後、出穂は何故か紅緒の副官に任じられて……。
感情を表に出すのが不得意で、その天才的な頭脳とは裏腹にどこか危うい紅緒。その柔らかな人柄に惹かれ、出穂は彼に従う。
出穂の生活、人生、幸せは全て紅緒との日々の中にあった。
半年、二年後、更にそこからの歳月、緩やかに心を通わせていった二人の十三年は、いったい何処に行きつくのか──
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ただそれだけ。
なのに窮地を二人で脱した後、出穂は何故か紅緒の副官に任じられて……。
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