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続く朔日
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鴨志田の診察の後、改めて病室に入った一行に目を向けた朔也が、一番に名を呼んだのは、やはり
『陽おいで』
ベッドの上で体を起こしている朔也に、今度は躊躇いなく歩み寄る陽は、泣き腫らした瞳でも笑みを浮かべている。
『さくや おうち かえろう』
同席していた鴨志田医師が、陽と目線を合わせるように膝を折り、言い聞かせる。
『天海さんは、もう少し病院で休んでからでないと、お家に帰れないんだ』
その言葉を引き取ったのは、やはり咲恵だった。
『陽くん、お兄ちゃん達と、さきちゃんと、お家に帰って朔也君を待っていてあげましょう』
それでも、納得できないのか、それとも朔也と離れがたいのか普段大人しい陽が、なかなかに強情だ。
『さくや、むかえにこなかった。ぼく、むかえにきた』
朔也は陽を迎えに行くと言う約束を守れなかった。それどころか確かに陽に迎えに来させてしまった。そして、陽の声が朔也を覚醒させてくれたのだ。
約束を反故にした挙げ句、朔也だけ帰宅しないことが陽にとっては辛抱ならないことなのだろう。
陽の拙い言葉に周囲の大人も押し黙ってしまう。
命を脅かすほどの怪我を負った朔也だが病衣に隠された傷が見えない今、天性の堂々たる体躯から病人にも怪我人にも見えないのだから。
そして、そんな陽に絆されるのが朔也だ。鴨志田医師に視線を送るが、当然、退院許可どころか外泊許可も出してくれそうにはない。傷は塞がりつつあるが、覚醒したばかりの朔也を院外に出すなど考慮の余地すらないだろう。
しかし離れ難いのは陽だけではない。朔也とて同じなのだ。
であれば己が帰宅することを考えるよりも、陽をここに留め置くことで、問題の半分は解決する。
ご都合主義だと言われても構わない。何よりも陽との時間が大切なのだから。
共に帰宅することは叶わないが、病室で一緒に過ごすことは可能なのだ。
なんのために特別室に押し込められたのかと言えば、他の入院患者への配慮や朔也自身の身の安全の為なのかもしれないが、ここであれば陽と過ごすことは許されるだろう。
『なぁ陽』
少しの間だけ、この部屋で一緒にお泊まりしようか。
バスルームもミニキッチンも、そしてトイレもあるこの部屋なら、贅沢はさせてやれないが、共に過ごすには問題ない。
ほんの数日離れていただけで華奢な体は、より線が細くなってしまった。寂しい思いをさせた陽を今すぐ、グズグズに甘やかしてやりたい。
『さくやと、おとまりする』
苦笑を浮かべる周囲のことなど気にせず、陽の荷物を病室に運びいれる段取りをつけ、ベッドの上で陽をバックハグする朔也を見て、陽にとって終わりの見えなかった暗い朔日が漸く三日月ほどにはなったのだろうか。
そして、陽に照らされることで朔也も光を取り戻すのだろう。
『陽おいで』
ベッドの上で体を起こしている朔也に、今度は躊躇いなく歩み寄る陽は、泣き腫らした瞳でも笑みを浮かべている。
『さくや おうち かえろう』
同席していた鴨志田医師が、陽と目線を合わせるように膝を折り、言い聞かせる。
『天海さんは、もう少し病院で休んでからでないと、お家に帰れないんだ』
その言葉を引き取ったのは、やはり咲恵だった。
『陽くん、お兄ちゃん達と、さきちゃんと、お家に帰って朔也君を待っていてあげましょう』
それでも、納得できないのか、それとも朔也と離れがたいのか普段大人しい陽が、なかなかに強情だ。
『さくや、むかえにこなかった。ぼく、むかえにきた』
朔也は陽を迎えに行くと言う約束を守れなかった。それどころか確かに陽に迎えに来させてしまった。そして、陽の声が朔也を覚醒させてくれたのだ。
約束を反故にした挙げ句、朔也だけ帰宅しないことが陽にとっては辛抱ならないことなのだろう。
陽の拙い言葉に周囲の大人も押し黙ってしまう。
命を脅かすほどの怪我を負った朔也だが病衣に隠された傷が見えない今、天性の堂々たる体躯から病人にも怪我人にも見えないのだから。
そして、そんな陽に絆されるのが朔也だ。鴨志田医師に視線を送るが、当然、退院許可どころか外泊許可も出してくれそうにはない。傷は塞がりつつあるが、覚醒したばかりの朔也を院外に出すなど考慮の余地すらないだろう。
しかし離れ難いのは陽だけではない。朔也とて同じなのだ。
であれば己が帰宅することを考えるよりも、陽をここに留め置くことで、問題の半分は解決する。
ご都合主義だと言われても構わない。何よりも陽との時間が大切なのだから。
共に帰宅することは叶わないが、病室で一緒に過ごすことは可能なのだ。
なんのために特別室に押し込められたのかと言えば、他の入院患者への配慮や朔也自身の身の安全の為なのかもしれないが、ここであれば陽と過ごすことは許されるだろう。
『なぁ陽』
少しの間だけ、この部屋で一緒にお泊まりしようか。
バスルームもミニキッチンも、そしてトイレもあるこの部屋なら、贅沢はさせてやれないが、共に過ごすには問題ない。
ほんの数日離れていただけで華奢な体は、より線が細くなってしまった。寂しい思いをさせた陽を今すぐ、グズグズに甘やかしてやりたい。
『さくやと、おとまりする』
苦笑を浮かべる周囲のことなど気にせず、陽の荷物を病室に運びいれる段取りをつけ、ベッドの上で陽をバックハグする朔也を見て、陽にとって終わりの見えなかった暗い朔日が漸く三日月ほどにはなったのだろうか。
そして、陽に照らされることで朔也も光を取り戻すのだろう。
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