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天岩戸
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『…ここ か?』
動揺の隠せない朔也に
『えぇ、こちらです』
しれっと答えるのはもちろん吾妻だ。
平日水曜日の午前11:00。中華料理とは呼べない街のラーメン屋の2階の個室。もうどこから突っ込めばいいのかすらわからない朔也に吾妻が
『ここの大将、テレビも雑誌も取材は全部断ってるだろ?』
それでも客が途切れたところなど見たことはない。そして、朔也も吾妻も、学生の頃から通っている店だ。とても旨いものを出してくれる。誰を連れてきても恥ずかしくない味だ。
いつぞやは土門を招いたことがあったが、それ以降土門は何度も、この店を訪れている。
未だに『あの店の回鍋肉ほど旨いものはない』と言う。
しかも、2階の個室は知る人ぞ知る場所で特別な人物の特別な時にしか開かれないのだ。
因みに直近での特別な人物、特別な時は同じ商店街の斜め向かいで花屋をやっている家族の子供の小学校の入学祝だ。
華やかな世界からは掛け離れているからこそ、不知火亜美は端から朔也に興味を持たないはずだ。
ただし、興味を持たなくとも、自身が遊び回れる環境を手に入れるために、朔也との結婚を承諾してしまう可能性が0ではない。
それを0にするために朔也が用意したのは、1通の診断書だ。
それを不知火議員と亜美に突き付けるのだ。闇医者とは言え、書くのを渋っていた佐伯だが、巡りめぐって陽のためと言えば、眉間に皺を寄せながらも診断書を作ったのだ。
決して積極的にとは言えないが、佐伯が作った診断書には心因性勃起障害の名前が付けられた。
一般的には、そう言った診断を喜ぶ男は少ないのかもしれない。
しかし朔也には必要な病名だった。
工藤は子種がないと言う理由で、免責だったのだ。であれば自分も、とは浅慮だとは思うが、実はケチな不知火が不妊治療に金をかけることなどないと踏んでいる。
手っ取り早く優秀なDNAを取り込める相手を探すはずだ。
そうなれば、亜美ではなく不知火議員からダメ出しがあるだろう。
庶民的な温かい輝きのあるラーメン屋には亜美の求める煌びやかさは皆無だ。
そして、跡継ぎを残せる可能性もとても低い。
言い訳としては少々幼稚な気もするが、不知火議員にも亜美に対しても断りやすい理由を用意したつもりだ。
ギシギシと古い階段を上がる音が聞こえる。不知火議員と亜美が到着したのだろう。
『なんなのよ!この汚い店で、見合いって』
おじいちゃま馬鹿にされているのではないの?
と金切り声が聞こえてくる。
2階個室の襖が開いたところで
『馬鹿になどしておりませんよ』
ここの料理はどこの中華より美味しい。だからお招きしたのです。
吾妻が不知火議員と亜美を室内へと招き入れた。
『先生、ご無沙汰しております』
形式的な挨拶ではあるが、不知火議員も亜美同様、納得できない表情だ。
動揺の隠せない朔也に
『えぇ、こちらです』
しれっと答えるのはもちろん吾妻だ。
平日水曜日の午前11:00。中華料理とは呼べない街のラーメン屋の2階の個室。もうどこから突っ込めばいいのかすらわからない朔也に吾妻が
『ここの大将、テレビも雑誌も取材は全部断ってるだろ?』
それでも客が途切れたところなど見たことはない。そして、朔也も吾妻も、学生の頃から通っている店だ。とても旨いものを出してくれる。誰を連れてきても恥ずかしくない味だ。
いつぞやは土門を招いたことがあったが、それ以降土門は何度も、この店を訪れている。
未だに『あの店の回鍋肉ほど旨いものはない』と言う。
しかも、2階の個室は知る人ぞ知る場所で特別な人物の特別な時にしか開かれないのだ。
因みに直近での特別な人物、特別な時は同じ商店街の斜め向かいで花屋をやっている家族の子供の小学校の入学祝だ。
華やかな世界からは掛け離れているからこそ、不知火亜美は端から朔也に興味を持たないはずだ。
ただし、興味を持たなくとも、自身が遊び回れる環境を手に入れるために、朔也との結婚を承諾してしまう可能性が0ではない。
それを0にするために朔也が用意したのは、1通の診断書だ。
それを不知火議員と亜美に突き付けるのだ。闇医者とは言え、書くのを渋っていた佐伯だが、巡りめぐって陽のためと言えば、眉間に皺を寄せながらも診断書を作ったのだ。
決して積極的にとは言えないが、佐伯が作った診断書には心因性勃起障害の名前が付けられた。
一般的には、そう言った診断を喜ぶ男は少ないのかもしれない。
しかし朔也には必要な病名だった。
工藤は子種がないと言う理由で、免責だったのだ。であれば自分も、とは浅慮だとは思うが、実はケチな不知火が不妊治療に金をかけることなどないと踏んでいる。
手っ取り早く優秀なDNAを取り込める相手を探すはずだ。
そうなれば、亜美ではなく不知火議員からダメ出しがあるだろう。
庶民的な温かい輝きのあるラーメン屋には亜美の求める煌びやかさは皆無だ。
そして、跡継ぎを残せる可能性もとても低い。
言い訳としては少々幼稚な気もするが、不知火議員にも亜美に対しても断りやすい理由を用意したつもりだ。
ギシギシと古い階段を上がる音が聞こえる。不知火議員と亜美が到着したのだろう。
『なんなのよ!この汚い店で、見合いって』
おじいちゃま馬鹿にされているのではないの?
と金切り声が聞こえてくる。
2階個室の襖が開いたところで
『馬鹿になどしておりませんよ』
ここの料理はどこの中華より美味しい。だからお招きしたのです。
吾妻が不知火議員と亜美を室内へと招き入れた。
『先生、ご無沙汰しております』
形式的な挨拶ではあるが、不知火議員も亜美同様、納得できない表情だ。
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