太陽と月

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陽がガジュマルの家に通い初めて1ヶ月が経った。

陽も、そして朔也も、ようやく生活サイクルに慣れ心身ともに余裕が出てきたのだが。

同じ年頃と言うこともあり、ガジュマルの家では宮腰と仲良くしているようだ。
ただし、宮腰は大検を見据えた勉強をして、陽は小学校低学年の授業を受けているため、ランチ時や製作実習などでしか接点がない。

それでも高校生男子の話題に上るのは、専らピンク色の話題ばかりらしい。
当然のことではある。健康な証拠だとも思う。

しかし、どうにも陽が汚されているようで、ついつい眉間に力が入ってしまう朔也だった。

そして、いらん知識を身に付けては、朔也に爆弾を投下する陽の背面には悪魔の翼と尻尾が見えるような気がした。

『さくや  だいすきだから  けっこんしよう』

熱烈なプロポーズを受けたのは、つい一週間前だ。

そして今宵

『さくや  だいすきだから  えっちしよう』

至って真剣な表情で言い出した陽に、思わずシャンパングラスを落としそうになった朔也だった。

『だいすきどうしは  えっちするんだって』

そうすると、お互い幸せな気分になれるのだと宮腰から聞いてきたようなのだが。

結婚もセックスも、朔也はいつでもOKなのだが、そもそも陽はそれらがどんなものかを理解しているのだろうか。

それとなく陽に確認すれば、新たな交遊関係恐るべしと言ったところか。かなり正確に理解しているようだ。
しかも男同士であっても愛し合えるのだと驚くほど具体的なことまで語り出す陽の言葉を途中で遮ってしまった。

『たつきくんも』

恋人とセックスしてるのだと、随分赤裸々な報告を受けたものの、それはおそらく異性の恋人だろう。

男同士で体を繋げるのとはわけが違う。しかも何故か陽は自分が朔也を受け入れる側なのだと決めつけているような口ぶりだ。

いや。朔也としてもそれは大歓迎だ。むしろ、その逆は想像もできないのだが陽とて正真正銘、男なのだ。
挿入こそが男の本能だと思っている朔也は、本当にそれでいいのかとも思う。

そもそも、今は朔也だけを性の対象としてみているようだが、陽が女性に興味を持たないとは言いきれない。
そんな時に挿入できないとしたら…

ここまで考えた朔也は、すぐに思考を停止させた。
だって陽を手放す気などないのだから。
恋愛対象として女性を選ばせるつもりなどない。

それに世の中の男全員が挿入する側を望むわけではない。
ゲイカップルであっても、受けやネコと言われるポジションの人間は積極的に挿入する側に回ろうとする者は少ないと言う。

だとすれば陽は、そう言ったカテゴリーに分類される性嗜好を持っているのだ。そうに違いない。

であれば、陽の気が変わらないうちに、陽の望みを叶えよう。

都合よく考えるぐらいには朔也は狡い大人だ。

『それなら陽』

今夜から少しずつ準備をしよう。陽が受け入れられるようになる準備を。

曙の控えめな陽射しが時と共に輝きを増すように、陽も成長する。

心身ともに成長する。
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