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第一話
しおりを挟む見てるわよね…ふふっ、見てる、見てる!
私は冷たい小川で水浴びをしながら、わざとらしくタプン、と胸を揺らした。きっとアイツが木陰から見ているに違いない。私を守るために常に傍にいなくてはいけないアイツ。
私の白く輝くような肌に小川の水をかける。冷たいがアイツが見ているのだ、ここは我慢してもっと見せつけたい。わざとらしく黒い髪をかき上げて、また下の毛もみえるように浅瀬に移る。
私、メルティ・ドール男爵令嬢と、護衛騎士のフェイ。今日は遠乗りがしたいと言って、無理して馬を駆けてきた。それもこれも、この小川で汗をかいたから水浴びをして、フェイにこの私の輝く裸体を見せつけたいからだ。
幼い頃から一緒に過ごしてきたフェイ。平民の彼は騎士になるといって王都の騎士学校に行って、そして戻ってきた。
王都に行く前は私と同じくらいの背丈だったのに、今では頭一つ分も違う。以前は私が虫を捕まえると怖がっていたのに、今では毒蛇も簡単に殺してしまった。
・・・・・・面白くない。
・・・・・・全く面白くない。どうにかしてフェイをギャフンと言わせたい。
お父様に頼んで私専用の護衛騎士にしてもらい、それからは我儘を言って方々へ連れ出した。マナーを知らないだろうと夜会に連れ出せば、学校で習ったからと言って優雅にダンスの相手まで完璧だった。
流行などわからないだろうからオペラ劇場に連れて行ったら、なぜかボックス席を予約していてソファーに座りながら指を絡められた。あれって噂の恋人握りだったのかな、キャッ♡
紳士淑女のたしなみ、競馬場に連れて行ったら私より馬に詳しかった。これは騎士だから仕方ない。
でもでも、どうしてもギャフンと言わせたかったから娼館に連れて行こうとしたらバレた時点で縄で縛られた。あれ、結構良かったカモ。
って、どうでもいいけど、何をしてもフェイに負けちゃう。
「お嬢さま、そろそろ水から上がってくださーい。風邪ひきますよー」
暢気な声が聞こえる。けど、知っている。この前、ここで水浴びをしていたらフェイがのぞき見していたこと。私も「キャッ」とか可愛く言ったけど、彼のイチモツがテントを立派に張っていたのをこの目で見た。
だから今日は、この前よりも長く水浴びして、絶対、絶対扱いているところを現行犯逮捕して、ギャフンと言わせるのよ!
けれど…寒い。流石に小川の水は冷たくて、まだ雪がチラホラしちゃう季節だから、やりすぎたかしら。あ、マズイ。くらっとしてきた。あ、ダメかも。まだ、まだよ!まだ童貞君は扱いているはずよ!
でも、あっ、マズイ。くらくらしてきた…
―――バッシャーン―――
私は一瞬血の気がなくなり、小川の中で倒れてしまうが、それを助けてくれたのはやっぱりフェイだった。
「全く、お嬢さまは何やっているんですか、こんなに冷たくなるまで小川に入っているなんて」
彼はやれやれ、といった風で裸の私をタオルでくるむと、こんなこともあろうかと用意していた小屋の中に入り暖炉に火を入れた。どこまでも完璧である。
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