ヒヨクレンリ

なかゆんきなこ

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~番外編~

家族四人のクリスマス

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優月が中学生、陽菜が幼稚園のころのお話です。
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 今日は十二月二十四日、クリスマスイブです。
 明日は幸村先生と朧さんを招いてクリスマスパーティーをする予定ですが、今夜は家族四人でイブパーティーですよ~。
 最近すっかり料理男子に成長しつつある優月と、腕によりをかけてクリスマスディナーを作りました。
 そうそう、クリスマスが近付いてからプレゼントのために「良い子キャンペーン」真っ最中の陽菜も、進んでお手伝いをしてくれましたね。
 お茶の間に置いてあるクリスマスツリーも、今年は陽菜と優月が二人で飾り付けてくれました。

「ただいま帰りました」
 台所の食卓に料理を並べ終えたころ、タイミング良く正宗さんが帰ってきました。
 私は陽菜と一緒に玄関までお出迎え。
 昔は優月も一緒にお出迎えしていたのですが、さすがに中学生にもなると気恥ずかしいのか、このごろはご無沙汰です。
 ああでも、お父さんにおねだりしたいことがある時には真っ先に出迎えに行ったりしますね。ふふっ、まだまだ可愛い所のある息子なのです。
「おかえりなさい、正宗さん」
「おかえりなさい、おとうさん!」
「ただいま、千鶴さん、陽菜」
 正宗さんはいったん二階へ上がって、コートとスーツの上着を脱いでネクタイを解き、代わりにカーディガンを羽織って降りてきます。
 ふふ~。正宗さんのコート+スーツ姿も大変美味しいですが、白シャツに紺色のカーディガン姿も最高に素敵です~。
 しかもこのカーディガン、ゆったりとした造りで袖が長め。つまり、萌え袖……っ!!
 ニヨニヨしちゃう口元を抑え、家族揃って食卓を囲みます。
「ああ。今年もすごいですね」
「頑張りました!」
「俺も頑張った!」
「ひなも!」
 私、優月、陽菜が誇らしげに言うと、正宗さんは微笑ましげに眼を細めます。
 ちなみに今年のクリスマスディナーはですね……
 陽菜がほぼ一人で作りました! 型抜きしたチーズとサーモン、それから半分に切ったプチトマトを乗せたカナッペ。
 優月が初挑戦! ゆで卵を包んだ特製ミートローフ。
 私の力作! 一羽丸ごとの鶏にハーブを詰め、野菜と一緒にオーブンで焼いたローストチキン。
 他にも、クリスマスリース風に盛りつけした葉野菜のシーザーサラダと、野菜とお豆たっぷりのミネストローネ、箸休めにぴったりなニンジンとセロリのマリネもありますよ~。
 あとはバゲット。ツナとみじん切りにしたタマネギをマヨネーズで混ぜたディップに、レバーペーストも用意しました。
 大人二人はシャンパンで、子ども二人はジュースで「乾杯!」してから「いただきます」です。
「ん~! 優月、このミートローフ美味しいよ!」
「母さんのローストチキンも美味い!」
「おとうさん、これひながつくったのよ。たべて」
「ああ。このカナッペとっても美味しいね」
「えへへ! おとうさん、ひなのパンにツナのやつつけて!」
「はい。これくらいでいいかな?」
「うん。ありがとう!」
 家族揃って美味しいごちそうを食べられる。
 今年もこうしてクリスマスを祝うことができて、幸せです。

 ごちそうを食べ、食後にケーキを食べ、お腹いっぱいになった陽菜は正宗さんとお風呂に入って、現在はベッドの上ですやすやと寝入っています。
 さて。そろそろ今年のサンタミッションを開始しましょうかね。
 毎年恒例となっているサンタさんへのお手紙で、陽菜が欲しがっているプレゼントは用意してあります。
 私はプレゼントを持った正宗さんと、自分もサンタミッションに加わりたいという優月と一緒にそっと夫婦の寝室に足を踏み入れました。
 陽菜はまだ小さいので、私と正宗さんと同じベッドで寝ているのですよ。
 ベッドサイドの棚の上には、陽菜からサンタさんへのお礼の手紙と、おすそわけのケーキが二つ、湯呑に入ったお茶が二つ置かれています。
 それを見て、優月が懐かしそうに目を細めました。
 うんうん。ほんの数年前まで、優月もこうしてサンタさんとトナカイさんのためにケーキとお茶を用意していましたからね。
 枕元に置くにはプレゼントが少々大きかったので、ベッドの傍の床の上に置きます。
 ここなら明日の朝、陽菜もすぐに気付くでしょう。
 そして手紙を回収し、三人でケーキとお茶を平らげます。
 いやあ、優月が加わってくれてよかった。成長期の旺盛な食欲で、ほとんどを優月が食べてくれました。
 これにてミッションクリア! あとは陽菜を起こさないようにそっと部屋を出て、一階のお茶の間へ移動します。
「はあ~。今年も無事に終わりましたね」
「途中起きるかと思ってひやひやしましたが、気付かれずに済んでよかったです」
 私と正宗さんが炬燵に入りながら言うと、優月もうんうん頷いて「明日の朝、きっと大喜びだと思う。楽しみだなあ」と言います。
 そんな良いお兄ちゃんな優月へのプレゼントは、明日の朝、そっと枕元に置いておく予定です。
 自分はもうサンタが親だということを知っているので直接渡してくれればいいのにと優月は言いますが、家ではまだ陽菜がサンタさんを信じていますからね。
 お兄ちゃんのところにもサンタさんからのプレゼントが来ていないと、「なんで? おにいちゃんわるいこなの?」なんて言われかねません。
 私が三人分のお茶を淹れると、正宗さんは寝室から回収してきた陽菜の手紙を開きました。
 三人でそれを覗き込みます。
 まだまだ拙い字ですが、サンタさんへのありがとうの気持ちが溢れています。
 あ、しかもサンタさんとトナカイさんをねぎらう一文まで……
 ああ、うちの娘は本当に可愛いな~なんて。親馬鹿根性丸出しになってしまいますね。
「…………」
 ふふっ。手紙を読む正宗さんのお顔、娘が愛おしいという気持ちが滲み出ています。
 優月も、ニコニコしながら手紙を読み返していますね。
 こんな時、私は思うのです。
 また今年もこうして家族四人が健康で、楽しいクリスマスを迎えられたこと。
 それが何よりのクリスマスプレゼントかもしれない……って。


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