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3.皇子妃候補は辞退する
しおりを挟む数日後、父は私の怪我や記憶喪失を理由に、皇子妃候補辞退を陛下に申し入れ、無事に了承された。
表向きは不幸な事故としているが、お見舞金と称した慰謝料が支払われた。
その額はかなりの金額らしいが、父は私にそっくりくれると言っている。
一方で、ケヴィン殿下は、何故か猛烈に反対したそうだが、元々自身の派手な女遊びが発端となっていることが陛下にバレて、きついお叱りを受けたそうだ。
皇子妃候補は他にも三人居た筈なので、私一人居なくなってもいいだろう。
ちなみに、事故の時のエレステラ子爵令嬢は、ドレスを踏んで躓いただけなのに、二十歳も歳の離れた南部のボルト男爵に嫁がされると、オネスト子爵がお詫びに来た時に話していたそうだ。
ケヴィン殿下のような美男に熱を上げていたのに、ドレスを踏んだだけでチビデブハゲなオッサンの嫁とは…と父は悪い顔で笑った。
無表情のままの娘に、様々な事情をゆっくり言い聞かせるように話す父や母は、とても優しい人だなと思う。
しかし、そんな親を騙してまでも、私は煌びやかな首都には居たくなかった。
公爵家は兄が継承するから問題ない。
ちょっとウザい妹ラブの兄だけど、優秀で優しく女遊びもしない。
だから、私は心置きなくここを去れる。
数年後、記憶が戻ったと言っても、この家族なら受け入れてくれる自信がある。
だから、今はここから逃げることを許して欲しい。
「あと、ジリアンのことなんだが、ユリアナに結婚を申し込んできたんだ。首都に居るのはつらいことも思い出すかもしれないから、ジリアンの持つ別荘に移住し、主治医としてだけでなく、伴侶としても支えたいと言っておる。」
「えっ…あの専属の医師の方ですか?」
「そうだ。幼馴染として仲も良かったし、医師としても優秀だし、騎士としての能力も高い。今すぐに決めなくていい。体が動かせるようになるまで、ゆっくり考えなさい。その間にジリアンの為人を観察して、記憶喪失でも結婚生活を送れるか、夫としてはどうかを考えてみるといい。」
「ユリアナ、ジリアンとは本当に仲が良かったのよ?皇子妃候補にならなければ、ジリアンと結婚していたかもしれないわね。記憶が戻ったら、たぶんあなた達は結婚するかもと思ったりもするわ。」
「お父様もお母様も思い出せなくて申し訳ありません。でも、大切にしてくださっていたのは分かる気がします。ジリアン様のことも考えてみます。」
父や母が部屋から出て、私は溜め息をついた。
(ジリアンの奴、周りを固めたな?ついて来るとは思っていたけど、結婚て…)
ジリアンなりに考えてくれた作戦かもしれないので、次に会ったら聞いてみよう。
とにかく今は、ジリアンの助けがないと、ここから動けない。
優秀なパートナーではあるので、ジリアンを信じるしかない。
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