【完結】それが愛だと気付く前に〜全て賭けて私を溺愛する幼馴染は、かなりの策士でした〜

紬あおい

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2.幼馴染は何かを企んでいる

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ジリアンは皆を部屋に招き入れ、私が記憶喪失の疑いが高いと告げた。

「無理に思い出させようとすることは、多大な精神的ストレスになり得ますので、取り敢えず、左腕や打撲などのお怪我の治療に専念した方がよろしいかと思います。」

父も母も兄も、皆、一様にショックを受けたようだった。
ジリアンは続けて、腕の状態も説明する。

「左腕の骨折は、ぽきっときれいに折れたので、圧迫しない程度に固定して、ひと月あれば骨がくっ付くと思われます。傷痕が残る可能性は否めませんが…」

「何っ!?傷物にされたのかっ!殿下め…あの糞がっ!」

父が怒りを含んだ溜め息をつき、母は顔面蒼白で、ラシットも複雑な顔をしている。

「父上、階段から落ちる原因となったエレステラ・オネスト子爵令嬢やケヴィン殿下に責任を問えるでしょうか?このままでは、ユリアナがあまりにも可哀想です。」

「そうは言うても、殿下は第一皇子だし、事故だから責任を取らせるのは難しいだろう。ユリアナは傷物になったから、婚約者候補は辞退するということになるだろうな。子爵令嬢の方は、慰謝料すら払えない家柄だし…」

「これでは、ユリアナ一人が馬鹿を見ただけじゃないですか!」

(お兄様、怒ってくれるのは嬉しいけど、婚約者候補から外れるのは万々歳なのよ!)

無表情で話を聞いている私を、ジリアンがチラッと見る。
右の口の端が少し上がったので、笑いを堪えているようだ。

「ユリアナの前で、声を荒げるのは良くないわ。別室で話し合いましょう。ジリアン、ユリアナをお願いね?」

母は、父と兄を連れて出て行った。
こんな時、一番冷静なのは母である。
次の手を粛々と進める為に、頭をフル回転させるところは、私と母は似ている。

皆が出て行って、ジリアンと二人きりになる。
部屋に男性と二人きりなのに、全く問題ないかのように居られるのは、幼馴染で医師であることが理由で、家族には絶大な信頼を得ているからなのだろう。

「ユリアナ、気分はどう?」

「悪くないわ。一応、目指す方向には進んでるから。でも、腕の傷痕は残念だわ。腕を出すドレスは、もう着られないわね。」

「俺は傷痕なんて気にしないよ?ユリアナはいつも綺麗だからね。」

「いゃいゃいゃ、ジリアン、何を!?今そういう話じゃなかったよね?」

「うん、そうだね。でも、これからそういう話に持ってくから。まあ、見てな。」

ジリアンは、何か企んでいるような目付きをしている。
その顔は、何故かとても楽しげだった。
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