【完結】それが愛だと気付く前に〜全て賭けて私を溺愛する幼馴染は、かなりの策士でした〜

紬あおい

文字の大きさ
5 / 15

5.幼馴染は求婚する

しおりを挟む

ケヴィン殿下が帰った後、ジリアンはしばらく何も言わずに傍に居てくれた。
私の涙が止まるのを待つかのように。

「ユリアナ、落ち着いたか?」

「うん。全て終わったんだなって。やっとケヴィンに振り回されなくて良くなったから、これは嬉し涙よ。あ、もう殿下って言わなきゃね?」

「ここを離れたら殿下とも言わなくなるさ。喧騒から離れて俺と静かに暮らさないか?」

ジリアンは、私の頬に手を添えて笑う。

「ジリアン…求婚してくれたってお父様とお母様に聞いたわ。いくら幼馴染でも、そこまでしてもらうのは悪いわ。ジリアンは凄いお医者様だもの…」

ジリアンの人生を、私の記憶喪失なんて嘘に巻き込んではいけない。

「君は、何も分かってないんだなぁ。静かに暮らすことを考えろ。今は、俺と結婚することが一番皆が安心するだろう?ユリアナも家族も。幼馴染・主治医・護衛騎士、一人三役のお得な俺だぞ?」

「ふふっ、お得だなんて、ジリアンたら!でも、そうよね。ジリアンなら安心だわ。お願いしようかな。」

「よし!今から公爵様の所に行くぞ。俺に任せてくれ。」

「ちょっと、ジリアン?これは!?」

ジリアンは、ひょいと私を抱き上げて、父の執務室に向かう。

「公爵様、失礼致します。公女様に結婚を申し込み、承諾していただきましたので、ご報告に参りました。必ず幸せにしますので、どうかお許しください!」

「はっ!?ユリアナの記憶は?」

執務中の父が目を見開き、立ち上がる。

「記憶は戻りません。しかし、幼馴染であり医師である私を信じて、結婚してくださるそうです!」

「そうか…ユリアナは、本当にそれでいいんだな?」

「はい。ずっと傍に居てくださって、記憶がなくても、ジリアン様なら安心して一緒に居られる気がしました。先程、ケヴィン殿下と仰る方が庭園にいらしたのですが、怖くて怖くて…ジリアン様が一緒に居てくださったので大丈夫でしたが。」

「何!?殿下が来たのか?何しに?」

「殿下は公女様に謝罪にいらしたのですが、どなたか分からず公女様は怖かったと思います。ここに居ると、そのような想いをこれからもなさると思いますので、私と結婚して穏やかな地に行くのが最良かと。」

ジリアンの控えめ、且つ饒舌な説得に感心しながら、私はジリアンの腕の中で大人しくしている。

「そうか…ジリアンを信頼しているようだし、君にユリアナを任せたいが、ユベントス侯爵家の方は大丈夫か?ジリアンのご両親とは、まだ話していないのだが。」

「うちは兄が既に侯爵を継承することが決まっています。だから私は、医師だったり、騎士だったり、自由にしておりまして。結婚に際して、身分が必要であれば父が持っている爵位をもらうことも可能です。」

「いや、私が持つ爵位を授けよう。それならば、問題なく結婚出来るであろう。殿下の所為でこうなったのだから、陛下も承認せずに居られないだろうし、そこは私が動く。他に必要なものがあれば、遠慮なく言ってくれ。」

「ありがとうございます。都度、相談させていただきますので、よろしくお願い致します。」

ジリアンは完璧に父を説得し、満足したようだ。
その後、私を抱いたまま、私室に連れて行ってくれた。

「ゆっくり休んで。全て俺に任せて。大丈夫だから。」

呪文のように囁くジリアンの声を聞きながら、私は眠りに落ちた。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

本物の夫は愛人に夢中なので、影武者とだけ愛し合います

こじまき
恋愛
幼い頃から許嫁だった王太子ヴァレリアンと結婚した公爵令嬢ディアーヌ。しかしヴァレリアンは身分の低い男爵令嬢に夢中で、初夜をすっぽかしてしまう。代わりに寝室にいたのは、彼そっくりの影武者…生まれたときに存在を消された双子の弟ルイだった。 ※「小説家になろう」にも投稿しています

いちばん好きな人…

麻実
恋愛
夫の裏切りを知った妻は 自分もまた・・・。

不倫の味

麻実
恋愛
夫に裏切られた妻。彼女は家族を大事にしていて見失っていたものに気付く・・・。

【完結】愛されないと知った時、私は

yanako
恋愛
私は聞いてしまった。 彼の本心を。 私は小さな、けれど豊かな領地を持つ、男爵家の娘。 父が私の結婚相手を見つけてきた。 隣の領地の次男の彼。 幼馴染というほど親しくは無いけれど、素敵な人だと思っていた。 そう、思っていたのだ。

侯爵様の懺悔

宇野 肇
恋愛
 女好きの侯爵様は一年ごとにうら若き貴族の女性を妻に迎えている。  そのどれもが困窮した家へ援助する条件で迫るという手法で、実際に縁づいてから領地経営も上手く回っていくため誰も苦言を呈せない。  侯爵様は一年ごとにとっかえひっかえするだけで、侯爵様は決して貴族法に違反する行為はしていないからだ。  その上、離縁をする際にも夫人となった女性の希望を可能な限り聞いたうえで、新たな縁を取り持ったり、寄付金とともに修道院へ出家させたりするそうなのだ。  おかげで不気味がっているのは娘を差し出さねばならない困窮した貴族の家々ばかりで、平民たちは呑気にも次に来る奥さんは何を希望して次の場所へ行くのか賭けるほどだった。  ――では、侯爵様の次の奥様は一体誰になるのだろうか。

【完結】ハーレム構成員とその婚約者

里音
恋愛
わたくしには見目麗しい人気者の婚約者がいます。 彼は婚約者のわたくしに素っ気ない態度です。 そんな彼が途中編入の令嬢を生徒会としてお世話することになりました。 異例の事でその彼女のお世話をしている生徒会は彼女の美貌もあいまって見るからに彼女のハーレム構成員のようだと噂されています。 わたくしの婚約者様も彼女に惹かれているのかもしれません。最近お二人で行動する事も多いのですから。 婚約者が彼女のハーレム構成員だと言われたり、彼は彼女に夢中だと噂されたり、2人っきりなのを遠くから見て嫉妬はするし傷つきはします。でもわたくしは彼が大好きなのです。彼をこんな醜い感情で煩わせたくありません。 なのでわたくしはいつものように笑顔で「お会いできて嬉しいです。」と伝えています。 周りには憐れな、ハーレム構成員の婚約者だと思われていようとも。 ⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎ 話の一コマを切り取るような形にしたかったのですが、終わりがモヤモヤと…力不足です。 コメントは賛否両論受け付けますがメンタル弱いのでお返事はできないかもしれません。

【完結】離婚を切り出したら私に不干渉だったはずの夫が激甘に豹変しました

雨宮羽那
恋愛
 結婚して5年。リディアは悩んでいた。  夫のレナードが仕事で忙しく、夫婦らしいことが何一つないことに。  ある日「私、離婚しようと思うの」と義妹に相談すると、とある薬を渡される。  どうやらそれは、『ちょーっとだけ本音がでちゃう薬』のよう。  そうしてやってきた離婚の話を告げる場で、リディアはつい好奇心に負けて、夫へ薬を飲ませてしまう。  すると、あら不思議。  いつもは浮ついた言葉なんて口にしない夫が、とんでもなく甘い言葉を口にしはじめたのだ。 「どうか離婚だなんて言わないでください。私のスイートハニーは君だけなんです」 (誰ですかあなた) ◇◇◇◇ ※全3話。 ※コメディ重視のお話です。深く考えちゃダメです!少しでも笑っていただけますと幸いです(*_ _))*゜

これは王命です〜最期の願いなのです……抱いてください〜

涙乃(るの)
恋愛
これは王命です……抱いてください 「アベル様……これは王命です。触れるのも嫌かもしれませんが、最後の願いなのです……私を、抱いてください」 呪いの力を宿した瞳を持って生まれたサラは、王家管轄の施設で閉じ込められるように暮らしていた。 その瞳を見たものは、命を落とす。サラの乳母も母も、命を落としていた。 希望のもてない人生を送っていたサラに、唯一普通に接してくれる騎士アベル。 アベルに恋したサラは、死ぬ前の最期の願いとして、アベルと一夜を共にしたいと陛下に願いでる。 自分勝手な願いに罪悪感を抱くサラ。 そんなサラのことを複雑な心境で見つめるアベル。 アベルはサラの願いを聞き届けるが、サラには死刑宣告が…… 切ない→ハッピーエンドです ※大人版はムーンライトノベルズ様にも投稿しています 後日談追加しました

処理中です...