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6.祝福され穏やかな地へ
しおりを挟むそれからは、トントン拍子に事が進み、ジリアンと別荘に移り住むことになった。
怪我はすっかり治ったが、記憶喪失を理由に結婚式は挙げなかった。
ある時、寝ていると油断したのか、傷物になった娘を恥ずかしく思う両親と兄の会話を聞いてしまい、派手なことは避けた方がいいと言っていた。
そんな会話を聞いても、家族には何も不満はない。
両親も兄も、心配していることには変わりないからだ。
ユベントス侯爵家は、私とジリアンの結婚に関しては大賛成だった。
既に後継者が居るからだ。
「ジリアンとは、幼い頃から仲が良かったもの。記憶を失くしても、ジリアンを選んでくれるなんて嬉しいわ。」
「まるで根無し草みたいな奴だったけど、ジリアンをよろしく頼むよ。昔からジリアンは、ユリアナだけには優しかったからな。べた惚れだろ、これは。」
エルザ侯爵夫人は、私の手を握って喜んでくれたし、隣でアルフレッド侯爵も微笑んでいた。
「ジリアン、ユリアナを幸せにしてやってくれな。兄として願うのは、それだけだ。ユリアナも、何かあればいつでも手を貸すから言ってくれよ?」
ラシットの妹ラブは今日も健在だ。
こうして私とジリアンは、気候の穏やかな別荘で新たな生活を始める為に、馬車で出発した。
「ユリアナ、いよいよだね。当面生活に必要な物は、見繕って手配して運び込んであるから、足りない物は後から揃えよう。」
「いろいろありがとう、ジリアン。こんなに皆に祝福され、あっさり物事が進むなんて、驚いたわ。ジリアンは策士ね。」
「ユリアナ、こっちに来て。」
ジリアンは、私を抱き上げて自分の上に座らせる。
「ジリアン、これはちょっと…」
「俺達は夫婦だろ?慣れなきゃ。」
私の背中や腰に腕を巻き付け、ジリアンはしっかりと抱き締める。
「ユリアナが笑って過ごせるなら、俺は何だって叶えてやる。皇子妃候補だった時のユリアナは、痛々しい位に一生懸命だった…それなのに、殿下はユリアナをぞんざいに扱った。俺はそれが許せなかったんだ…」
皆を納得させ、完璧な段取りで私を連れ出してくれたジリアンが、今私の前で、体を震わせて泣いている。
「ジリアン…ありがとう。頼ってばかりで、ごめんね。」
「馬鹿だな…俺がやりたくてやってるんだ。ユリアナ、幸せになろう?」
ジリアンの優しさが嬉しかった。
ただその時の私は、ジリアンの想いの大きさに、まだ気付いていなかった。
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