【完結】それが愛だと気付く前に〜全て賭けて私を溺愛する幼馴染は、かなりの策士でした〜

紬あおい

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10.幸せを願う人

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陽が昇るまでジリアンに抱き潰された私は、目が覚めたらお昼だった。
ぼんやりと窓に降り注ぐ陽射しを眺めていたら、ジリアンが食事を運んできた。

「そろそろお腹が空いただろう?ユリアナの好きそうなやつ、作ってきた!」

「えっ?ジリアンてお料理も出来るの!?」

「料理なんて簡単さ!俺に出来ないのは……まっ、いいや。食べようぜ。」

「うん、美味しそう!いただきます。」

言いかけた言葉を飲み込むジリアンは、少し寂しそうだった。
その言葉を私はたぶん知っている。
でも、もう少し待ってて。
きっと、もうすぐ。

ジリアンの手料理は最高だった。

「スープ、最高!ウィンナーから良い出汁が出てるわ。野菜の切り方とか大きさも食べ易くて、ジリアンはセンスあるね。」

「そんなに褒めるな。照れるじゃないか…」

「私の旦那様、本当に素敵!私、お茶の淹れ方もジリアンに習ったのよね…下手くそ過ぎて、苦いし不味いし。家族にも笑われる位、下手くそだったわ。あの頃から、ジリアンは何でも出来たわね。ふふ。」

「ちょっ、旦那様て…ユリアナ、揶揄うのはやめ…」

「夫だもの。旦那様で合ってるわよ。」

「た、食べ終わったら散歩でもするかっ!」

(落ち込んだり照れたり、忙しい人。)

「ジリアン、手を繋いで?」

「かしこまりました、奥様!」

照れながら私と手を繋ぎ、外に出る。

「馬に乗って、川の方に行ってみようか。しっかり掴まって!」

ジリアンの馬は白馬だ。

「まさに白馬の王子様ね?」

揶揄ったつもりが、急に仏頂面になるジリアン。

「ユリアナは皇子様が好きなのか?」

「はぁっ?何で不機嫌になるの?女の子の憧れでしょう、白馬に乗った王子様。童話にも出てくるじゃない!もう、変な勘違いしないの!!」

「そ、そっか…すまない…」

「ほら、行くよ!旦那様!!」

手綱を持つ手と肩が震えてる。
ちゃんと理解して安心して、きっと笑いを堪えている。

(こんな勘違いや誤解は、ひとつひとつ取り除いていけばいい。今度は私がジリアンに寄り添う番だわ。)

少し冷たい風を正面から受けて、背中はジリアンの温もりを感じると、子どもの頃、走り回って遊んだ記憶とリンクする。
いつから走らなくなった?
いつから大声で笑えなくなった?
楽しい、嬉しい、悔しい、悲しい。
人として当たり前の感情。
失くしたものは、いくつあるのか。
ジリアンとなら、きっと私は取り戻せそうだ。

「着いたぞ!川の水、綺麗だろう?飲めるぞ。」

ふわりと馬から降ろされ、そのまま抱っこして川岸に連れて行かれる。

「王子様のお姫様抱っこだ。ユリアナは俺の姫様で妻だからな。」

「ジリアンたら、よくそんなこと、スラスラ言えますね!?恥ずかしくないの?」

「だって、俺のこと、白馬の王子様とか言うから…」

「あ…お互い様か…ふふ。」

「あはははっ、そうだな。」

こんなに感情豊かなジリアンを今まで見たことなかったかもしれない。
いや、私が気付かなかっただけか。
大抵私が騒いで、ジリアンが穏やかに諭すばかりだった。

皇子妃教育が始まり、どんどん笑わなくなる私を、ジリアンは会う度にあたたかい気持ちにしてくれた。
ジリアンはいつだって、私の幸せを願ってくれていたんだな。
私も、そんな人になりたいし、この想いをジリアンに返したい。
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