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志島くんの白いアレ(3)
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「痛かったら言ってね」
部屋の奥にあるパーテーションで区切られた応接用のソファに志島くんを座らせ、その後ろに立つ。
「いくよ……心の準備はいい?」
「おう」
「じゃあ、さん、に、いち……えい!」
「……っ」
志島くんの肩が少しだけ跳ねた。焦って「痛かった?ごめん、大丈夫?」と聞くと、志島くんは「ああ」と大丈夫なのか大丈夫じゃないのか分からない声でそう言った。
でも、多分大丈夫なはずだ。
常に怒ってるような顔をしてるけど、志島くんが本当に怒ってる所を私は見たことがない。彼はその見た目に反して、とても心が広い人だ。
それを知っているからこそ、失礼を承知でこんなお願いをしてしまったのだから。
「うわあ!すごい!真っ白髪!!見て見て志島くん」
「……ああ」
抜いたばかりの白髪を志島くんに見せながら、私も一緒にそれを見る。
私の指につままれたそれは、先端から根っこまで見事に真っ白で、思わず感嘆の声が漏れた。
そう。実は私、ここ数ヶ月志島くんの後頭部に生えていた若白髪が気になって気になってしょうがなかったのだ。
志島くんの染めていない真っ黒な直毛に、迷い込んでしまったかのようにポツンと生えていたその白髪。
志島くんに会ってそれを見る度にウズウズというかヤキモキというか、とにかく抜きたくて抜きたくてたまらなかったのだ。
それをついに!ようやく!抜くことができた!
手にした白髪をまじまじと見つめていると、何とも言えない満足感で満たされる。
「ありがとう志島くん!あースッキリした」
「そうか。良かったな」
興奮冷めやらない私とは対照的に志島くんはちょっとぐったりしていた。座っているだけだとしても、仕事で疲れているのに他人に白髪を抜かれると言うのは結構神経を使うのかもしれない。それでも志島くんはこんな変なお願いをした私に対して、怒っても嫌がってもいないようなので、やっぱり彼は優しい人だなと思う。
「うん!すごく良かった!!さて志島くん。ここで一つお知らせがあるのですが」
「なんだ?」
顔は怖いけど絶対に怒らない優しい彼だからこそ、調子に乗ってまたこんなお願いをしてしまう。
「ずっと気になっていたやつは無事抜けたんですが、違う白髪を発見しました」
「……」
「しかも、いっぱい」
「……」
志島くんから返答はない。
流石に志島くんもこれ以上は付き合ってくれないかと落胆しかけた時、志島くんはゴゴゴゴゴ…と効果音が聞こえてきそうなくらいゆっくりと後ろを振り向き、私を見据えてギラリと目を光らせ、「抜きたいのか?」と地を這うような声でそう言った。
後輩だったら「ひえーすいませんすいません!嘘ですもう結構ですお暇します!」と口裂け女に会ったかのように全力で逃げ出しそうだけど、元々志島くんに対して怖いなんて思ってない上にナチュラルハイになっていた私は諸手を挙げて飛びついた。
「いいの!?」
喜びを一切隠さず満面の笑みでそう言った私を見て、志島くんは恐怖の対象である切れ長の三白眼を少しだけ丸くして、「いいよ」と小さく笑った。気がする、多分。
志島くんの笑った顔は初めて見たけど、人身売買の取引を無事終えた極悪ブローカーみたいだな、と思った。
部屋の奥にあるパーテーションで区切られた応接用のソファに志島くんを座らせ、その後ろに立つ。
「いくよ……心の準備はいい?」
「おう」
「じゃあ、さん、に、いち……えい!」
「……っ」
志島くんの肩が少しだけ跳ねた。焦って「痛かった?ごめん、大丈夫?」と聞くと、志島くんは「ああ」と大丈夫なのか大丈夫じゃないのか分からない声でそう言った。
でも、多分大丈夫なはずだ。
常に怒ってるような顔をしてるけど、志島くんが本当に怒ってる所を私は見たことがない。彼はその見た目に反して、とても心が広い人だ。
それを知っているからこそ、失礼を承知でこんなお願いをしてしまったのだから。
「うわあ!すごい!真っ白髪!!見て見て志島くん」
「……ああ」
抜いたばかりの白髪を志島くんに見せながら、私も一緒にそれを見る。
私の指につままれたそれは、先端から根っこまで見事に真っ白で、思わず感嘆の声が漏れた。
そう。実は私、ここ数ヶ月志島くんの後頭部に生えていた若白髪が気になって気になってしょうがなかったのだ。
志島くんの染めていない真っ黒な直毛に、迷い込んでしまったかのようにポツンと生えていたその白髪。
志島くんに会ってそれを見る度にウズウズというかヤキモキというか、とにかく抜きたくて抜きたくてたまらなかったのだ。
それをついに!ようやく!抜くことができた!
手にした白髪をまじまじと見つめていると、何とも言えない満足感で満たされる。
「ありがとう志島くん!あースッキリした」
「そうか。良かったな」
興奮冷めやらない私とは対照的に志島くんはちょっとぐったりしていた。座っているだけだとしても、仕事で疲れているのに他人に白髪を抜かれると言うのは結構神経を使うのかもしれない。それでも志島くんはこんな変なお願いをした私に対して、怒っても嫌がってもいないようなので、やっぱり彼は優しい人だなと思う。
「うん!すごく良かった!!さて志島くん。ここで一つお知らせがあるのですが」
「なんだ?」
顔は怖いけど絶対に怒らない優しい彼だからこそ、調子に乗ってまたこんなお願いをしてしまう。
「ずっと気になっていたやつは無事抜けたんですが、違う白髪を発見しました」
「……」
「しかも、いっぱい」
「……」
志島くんから返答はない。
流石に志島くんもこれ以上は付き合ってくれないかと落胆しかけた時、志島くんはゴゴゴゴゴ…と効果音が聞こえてきそうなくらいゆっくりと後ろを振り向き、私を見据えてギラリと目を光らせ、「抜きたいのか?」と地を這うような声でそう言った。
後輩だったら「ひえーすいませんすいません!嘘ですもう結構ですお暇します!」と口裂け女に会ったかのように全力で逃げ出しそうだけど、元々志島くんに対して怖いなんて思ってない上にナチュラルハイになっていた私は諸手を挙げて飛びついた。
「いいの!?」
喜びを一切隠さず満面の笑みでそう言った私を見て、志島くんは恐怖の対象である切れ長の三白眼を少しだけ丸くして、「いいよ」と小さく笑った。気がする、多分。
志島くんの笑った顔は初めて見たけど、人身売買の取引を無事終えた極悪ブローカーみたいだな、と思った。
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