【R18】気になるカレの白いアレ

遙くるみ

文字の大きさ
3 / 20

志島くんの白いアレ(3)

しおりを挟む
「痛かったら言ってね」

 部屋の奥にあるパーテーションで区切られた応接用のソファに志島くんを座らせ、その後ろに立つ。

「いくよ……心の準備はいい?」

「おう」

「じゃあ、さん、に、いち……えい!」

「……っ」

 志島くんの肩が少しだけ跳ねた。焦って「痛かった?ごめん、大丈夫?」と聞くと、志島くんは「ああ」と大丈夫なのか大丈夫じゃないのか分からない声でそう言った。

 でも、多分大丈夫なはずだ。
 常に怒ってるような顔をしてるけど、志島くんが本当に怒ってる所を私は見たことがない。彼はその見た目に反して、とても心が広い人だ。
 それを知っているからこそ、失礼を承知でこんなお願いをしてしまったのだから。

「うわあ!すごい!真っ白髪!!見て見て志島くん」

「……ああ」

 抜いたばかりの白髪を志島くんに見せながら、私も一緒にそれを見る。
 私の指につままれたそれは、先端から根っこまで見事に真っ白で、思わず感嘆の声が漏れた。

 そう。実は私、ここ数ヶ月志島くんの後頭部に生えていた若白髪が気になって気になってしょうがなかったのだ。
 志島くんの染めていない真っ黒な直毛に、迷い込んでしまったかのようにポツンと生えていたその白髪。
 志島くんに会ってそれを見る度にウズウズというかヤキモキというか、とにかく抜きたくて抜きたくてたまらなかったのだ。

 それをついに!ようやく!抜くことができた!
 手にした白髪をまじまじと見つめていると、何とも言えない満足感で満たされる。

「ありがとう志島くん!あースッキリした」

「そうか。良かったな」

 興奮冷めやらない私とは対照的に志島くんはちょっとぐったりしていた。座っているだけだとしても、仕事で疲れているのに他人に白髪を抜かれると言うのは結構神経を使うのかもしれない。それでも志島くんはこんな変なお願いをした私に対して、怒っても嫌がってもいないようなので、やっぱり彼は優しい人だなと思う。

「うん!すごく良かった!!さて志島くん。ここで一つお知らせがあるのですが」

「なんだ?」

 顔は怖いけど絶対に怒らない優しい彼だからこそ、調子に乗ってまたこんなお願いをしてしまう。

「ずっと気になっていたやつは無事抜けたんですが、違う白髪を発見しました」

「……」

「しかも、いっぱい」

「……」

 志島くんから返答はない。
 流石に志島くんもこれ以上は付き合ってくれないかと落胆しかけた時、志島くんはゴゴゴゴゴ…と効果音が聞こえてきそうなくらいゆっくりと後ろを振り向き、私を見据えてギラリと目を光らせ、「抜きたいのか?」と地を這うような声でそう言った。

 後輩だったら「ひえーすいませんすいません!嘘ですもう結構ですお暇します!」と口裂け女に会ったかのように全力で逃げ出しそうだけど、元々志島くんに対して怖いなんて思ってない上にナチュラルハイになっていた私は諸手を挙げて飛びついた。

「いいの!?」

 喜びを一切隠さず満面の笑みでそう言った私を見て、志島くんは恐怖の対象である切れ長の三白眼を少しだけ丸くして、「いいよ」と小さく笑った。気がする、多分。

 志島くんの笑った顔は初めて見たけど、人身売買の取引を無事終えた極悪ブローカーみたいだな、と思った。

しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

巨乳すぎる新入社員が社内で〇〇されちゃった件

ナッツアーモンド
恋愛
中高生の時から巨乳すぎることがコンプレックスで悩んでいる、相模S子。新入社員として入った会社でS子を待ち受ける運命とは....。

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている

井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。 それはもう深く愛していた。 変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。 これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。 全3章、1日1章更新、完結済 ※特に物語と言う物語はありません ※オチもありません ※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。 ※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

ハイスぺ幼馴染の執着過剰愛~30までに相手がいなかったら、結婚しようと言ったから~

cheeery
恋愛
パイロットのエリート幼馴染とワケあって同棲することになった私。 同棲はかれこれもう7年目。 お互いにいい人がいたら解消しようと約束しているのだけど……。 合コンは撃沈。連絡さえ来ない始末。 焦るものの、幼なじみ隼人との生活は、なんの不満もなく……っというよりも、至極の生活だった。 何かあったら話も聞いてくれるし、なぐさめてくれる。 美味しい料理に、髪を乾かしてくれたり、買い物に連れ出してくれたり……しかも家賃はいらないと受け取ってもくれない。 私……こんなに甘えっぱなしでいいのかな? そしてわたしの30歳の誕生日。 「美羽、お誕生日おめでとう。結婚しようか」 「なに言ってるの?」 優しかったはずの隼人が豹変。 「30になってお互いに相手がいなかったら、結婚しようって美羽が言ったんだよね?」 彼の秘密を知ったら、もう逃げることは出来ない。 「絶対に逃がさないよ?」

処理中です...