【R18】気になるカレの白いアレ

遙くるみ

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♠︎川村が俺をただの男にする

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「好き。好き、好き好き。志島くんが好き」

 そう言いながら川村が俺にキスを繰り返す。
 唇に、鼻の先に、頬に、耳に。
 その小さい手で俺の頭を撫で、たまに頬を撫で、肩を撫で、俺の腹に跨ったまま優しいキスの雨を何度も降らせる。

「ここも好き」

 眉間に寄った皺を伸ばす様に親指でなぞり、そっとキスをする。

「ここも」

 川村の唇が軽く触れながら少しずつ横に移動し、こめかみにたどり着く。
 多分、俺の顔のほとんど全てが好きと言いながらキスされている。畏怖の対象としてしか見られていなかった俺の顔を、愛おし気に、慈しみながら。

「志島くん、好き。大好き」

 一回視線が合い、ふわりと笑って、唇と唇が重なった。
 柔らかく、温かく、川村の匂いがすんと鼻をかすめる。

 憧れに憧れていたファーストキッスはレモン味ではなかった。
 誰だそんなことを言ったのは。溝口か。
 じゃあどんな味だと問われても分からない。覚えていない。そもそも味なんてなかったかもしれない。
 強いて言うなら、幸せな味がした。
 そんなことを言ったら笑われるだろうか。川村は笑ってくれるだろうか。

 川村がキスを繰り返しながら、少しずつ自分の服を脱ぎ、俺の服も脱がしていく。
 互いの肌が晒され、そして触れ合う。
 頭はフル回転で働いているのに、なぜか身体が動かない。力が入りすぎてガチガチに硬くなっているのではなく、反対に神経が切られたかのように全く力が入らない。
 それこそ電池切れのロボットのように、俺は川村にされるがままだった。そんな俺を見て、川村は何も言わず、でもどこか楽しそうに笑っていた。

 下着以外全て脱ぎ去ると、川村は顔にしたように好きだと一回一回言いながら俺の全身にキスをした。
 首に、鎖骨に、胸に、腕に。じれったい位ゆっくり、でも次へ次へと急くように。
 川村が俺の手を取り、指を絡める。そのまま川村の唇に引き寄せられ、軽く触れた。

「志島くん、好き。信じてくれた?」

 俺は緩く首を横に振る。
 信じられない。
 余計に信じられなくなった。
 こんなに幸せなことが現実な筈がない。自分に都合の良い夢をみているに違いない。
 そんな俺を見て、仕方ないなとばかりに川村がまた笑う。

「志島くん、好き」

 川村の顔が近付き、口づけられる。
 これで何回目だろう。途中までは数えていたのに、もう分からなくなってしまった。いや、早い段階で数えることを止めていた。止めざるを得なくなった。

 川村でいっぱいになり、川村以外何も考えられなくなる。
 俺なんてものはどうでもいいと思えるほどに。それこそ、俺という自我すらなくなるほどに。

 ずっと触れるだけだったそれが、少しだけ深くなる。角度をつけ、唇で唇を挟まれる。川村が舌を出し、俺の唇をペロリと舐めた。僅かに開いた口の隙間に、川村の舌が入り込み、優しくこじ開ける。上唇を食まれ、下唇を食まれ、キスとキスの合間に好きと言われ、川村の息がかかり、それを吸いこむ。

 そこでようやく、滞留していた血液が全身に巡り、少しずつ身体が体温を取り戻し、手足の感覚が戻ってきた。

「川村」

 名前を呼ぶと川村が目を細めて返事をした。

「俺もしたい」

「うん。してほしい」

 そして、嬉しそうに笑う。
 恐る恐る川村の頬に手を当てると、川村が甘える子猫の様に頬をすり寄せてきた。そして発情した雌猫のような瞳で俺を誘惑し、それに抗う術もなく吸い寄せられ、キスをした。

 一度、スイッチが入ると駄目だった。
 どんなキスが正解なのか、好まれるのか、作法は、順番は。長年色々と妄想し計画していたことが全て吹き飛び、ただただ本能のままに川村の唇を貪った。
 こんなはずではなかったが、これが正解なような気もする。それを裏付けるかのように、川村は俺のキスを拒むことなく受け入れてくれた。
 川村の小さな口を目いっぱい開かせ、そこに舌をねじ込み、歯列をなぞる。口の端からこぼれる唾液をじゅるりと吸うと、生温くいやらしい川村の味がした。
 幸せの味だ。

「ぅあ」

 腹の上に跨った川村を抱き上げ、そのままベッドに押し倒す。
 川村を両腕で囲い、好きだとうわ言の様に言いながら何回も何回もキスを降らせた。

「あっ、やあ」

 つんと上を向いた乳首を親指で弾くと、川村が可愛く鳴いた。柔らかな胸を揉みこみ、そのまま手を下へと滑らせ、下着をずらす。指を伸ばすとそこはもう満潮になり蜜が溢れだしていた。

「まだ触ってもないのに、すごい濡れてる。気持ちいいのか?」

 どれくらいの量が分泌されているのか純粋に知りたくなって指ですくうと、川村がまた可愛く鳴いた。

「うん、気持ちいい。志島くんが好きだから、気持ちいい。信じてくれる?」

 蕩けた顔で言われ、胸が痺れた。
 すっと息を吸い、止め、それに答えるようにキスをした。
 川村に嘘は言わないと誓った。だから言葉にはできない。

 でも、伝えたい。
 俺も好きだと。川村に好きだと言われて嬉しいということを。

 それが正確に伝わったのかどうかは分からないが、川村は俺のキスを受け入れ、そして楽しそうに笑った。


 十分に濡らし、十分にほぐし、念には念をで必要以上に喘がせイカせたつもりだったが、いざ挿入をすると川村は苦しそうに顔を歪めた。

「ス、スマン。大丈夫か?」

 焦って腰を引こうとするもぎゅっと腕を掴まれ静止させられる。

「だ、だめ。大丈夫だから。抜かないで」

 そう言われるも、川村の顔は全然大丈夫じゃなさそうだ。
 俺のモノが日本人の平均男性よりも大きいということは知っている。そしてそれが小柄な川村にとっては負担にしかならないということも。
 しかも今の状態は俺史上最高クラスだとも自負している。快感を与えるどころか苦痛しか与えられないのは目に見えていた。

「しかし―」
「大丈夫だから!毎秒1mmのペースで、ゆっくりかつ着実に進めてくれれば、多分。だからお願い、やめないで」

「川村」

 なぜ、そこまで。
 さっきまでの快感に蕩けた顔は完全に消え失せ、川村の表情は苦痛に歪んでいる。
 川村には笑っていてほしい。
 別に挿入などしなくても俺は十分気持ちがいいし、川村だってそう見える。それにこだわる必要はない。川村が俺の為に我慢をする必要も。
 そんな俺の疑問が伝わったのか、川村が苦しそうにしながらも、にっと笑った。

「だって、志島くんとちゃんとエッチしたい。志島くんに、信じてほしい」

 そう言われ、息が止まった。

「私が志島くんのこと、好きだってこと。志島くんは、ちょっと顔が怖いだけのごくごく普通の、でも凄く優しい私の大好きな男の人なんだってこと。好きな人とエッチするのは、ものすごく普通でものすごく特別なことなんだってこと。私が証明して、信じて欲しい」

 ……言葉に、ならない。

 優しいのは俺なんかじゃない、川村だ。
 俺の中の感情という感情が全て膨れ上がり、胸が詰まった。
 申し訳ない、不甲斐ない、有り難い、嬉しい……嬉しい嬉しい。好きだ好きだ好きだ好きだ。

「ほら、止まってる」

 何でもないことのように、川村がふふっと笑い、俺の頬を拭う。
 格好悪いことこの上ない。が、色々なものが溢れて流れて止まらない。
 川村の要望通り毎秒1mmを意識して腰を進めると、川村がうっと小さく呻いた。
 見るからに苦しそうだ。
 それでも決して腰を引くことなく確実に進めていく。
 それでいいんだと、川村が目だけで笑う。

 少しでも川村にかかる負担を減らしたくて、いや減らすことは出来ないだろうから紛らわせたくて、川村の好むところを優しく擦る。

「あっ、そこ……気持ちい―」

 苦しさは残しながらも川村が表情を若干緩め、小さく笑う。
 その笑顔に救われた気持ちになる。

 長い長い時間をかけて全てを埋め込んだ時、俺と川村はお互い肩で息をして汗だくになっていた。

「これで全部?」

「ああ、全部だ。苦しくないか?」

 川村の汗で張り付いた前髪をそっと横に流すと、川村がははっと笑った。

「苦しい、なんかもう、お腹いっぱいって感じ」

「スマン」

「途中、入れる穴間違えてるんじゃないかとか、実はペットボトル突っ込まれてるのかと思ったくらい」

「ス、スマン」

「でも、入った。良かった……入った」

 笑う川村の目に光るものが見え、たまらなくなってぎゅっと身体を抱きしめた。
 すっぽりと隠れる程小さいのに、俺の全てを包み込むほど大きい川村の身体。
 不思議で不思議で、とても愛おしい。

「……川村、ありがとう」

「こちらこそ、ありがとう。っぷ、どうしたの志島くん。そんな顔して」

「変な顔してるか?」

「うん。お腹が空いて空いて死にそうな時におにぎりを見つけて喜々として食べようとしたら実はよくできた食品サンプルだった、って顔」

「なんだ、それは」

「嘘。私のことが大好き大好きでたまらない、って顔してる」

 そう言って、川村がまた楽しそうに笑った。


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