放浪戦記

アブナイ羊

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幼少期 盗賊団時代

カインの秘密

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「この前の…?あぁ、もしかしてあの腰抜け冒険者か?」

「そうだ」

これは楽な仕事になりそうだとみんなが色めき立つ。わたし個人的には戦いとか見て勉強したかったのだけれど、腰抜けと言う評判を聞く限りそれは無理みたいだ。

「俺の合図で飛び出して囲めよ。…3…2…1……今!」

ガサガサガサッ!と大きな音をたてて茂みから飛び出す。護衛と馬車を操っていた御者がびっくりしていた。

「また会ったなぁ!腰抜けの坊っちゃんたち!」

「また命乞いでもしてみな!ぎゃはは!!」

みんなで護衛に罵声を浴びせかける。リーダーがいっていたのは、多分これに加われと言うことだろう。

「そうだそうだ!早くしないとぶっ殺すぞ!」

アルトは言っていることが違う気もする。
うーん、どんなことを言えばいいんだろう?殺すぞ!とかは多分違うし、みんなと同じことを言うのもなんというかダメだと思う。剣でも足元に投げて威嚇してみようかな?
みんなの後ろからだと仲間に刺さるから、馬車がよく見える位置まで移動する。

「よし、ここからだと上手くいきそう。」

一応剣は抜いているものの、怯えきって今にも仕事を放棄しそうな雰囲気を出している。
リーダーからもらった一本きりの短剣。外すわけにはいかない。

「頼むから動かないで…」

ヒュン!と音をたてて短剣が飛んでいく。我ながらうまく投げられたと思う。剣先を向けてまっすぐ飛んだ短剣は狙いどおり片方の護衛の足元に刺さって止まった。

「ヒャッ!!す、すみませんでしたあああ!」

護衛がズザアッと土下座をした。
何を謝っているのか知らないけど、わたしの短剣がトリガーになって土下座をさせたことになんだかワクワクする。

「おいラヴィ!ずるいぞおまえだけ!俺も誘ってくれよ…」

「やだよ。剣でリンゴの皮すら剥けないアルトにはできるわけないし」

「は!剣でリンゴの皮が剥けたところで何ができんだよ。それに俺は細かいことが苦手なんだ」

わたしたちがくだらない言い争いをしている間に、みんなが馬車の荷物の一部を奪い取ってしまっていた。
それに気付かなかったわたしたちは、リーダーの「撤収!」の声でやっと言い争いをやめたのだった。







奪った荷物のほとんどは団で共有され、仕事に参加した者にのみ働きに応じて現金で特別報酬がある。私は銅貨1枚、アルトは鉄貨5枚だった。
そして、初参加のわたしたちはリーダーからアドバイスをもらいに行っていた。既に反省すべきところは見つかっているが、念のためだ。

「はぁアドバイスね…わかってると思うけど、ラヴィが剣を投げるまでは二人とも上出来だったのに、なんで言い争いに集中しちゃったのかな。緊張しないことはいいことだけど、流石に緊張しなさすぎだぞ。ま、カインなんて初めてのときは緊張しすぎて漏らしてたけどな!あっはははは!!」

リーダーが大声で笑うが、反省しているところに水をささないでほしい。それに、わたしが気付かなかったのはアルトが余計な口出しをしてきたからだし…

「おいケルヴィン!それはもう話さない約束だっただろう!ふざけやがって!」

 カインさんが大声を出すなんて、珍しい。

「あっははは!ごめんよカイン!ついね。
ま、なんにせよ怪我がなくて良かったよ。」

「はい…すみませんでした…くくっ…」

アルトは反省どころかカインさんの秘話を聞けて嬉しそうだった。
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