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25 勘違いが正される日
しおりを挟む生憎朝から雨ではあるが、明後日に控えた結婚式の最終確認の為にエミリヤは公爵邸に訪れていた。
今日もギルベルトに会える楽しみで鼻歌を歌ってしまいそうな程上機嫌である。
「(今日はやる事がたくさんあるから気合い入れなきゃね!!)」
公爵邸に着き執事に案内され談話室のソファーに座って待っていたギルベルトに挨拶を行った。
「(あら?最近婚約者として付き添うべき事に参加して下さる様になったのに・・・ヴィルヘルム様いらっしゃらないわね?お仕事かしら?)」
エミリヤが少しだけキョロキョロと視線を動かしている事に気が付いたギルベルトは、ソファーから立ち上がりエミリヤの側に近付くと耳に口を寄せた。
「ーーー何を気にしている・・・・・・姫様は私を嫉妬させたいのか?」
耳元で低く色気のあるギルベルトの声にエミリヤはゾクゾクとする。耳を押さえギルベルトの顔を見ると、薄ら口元は笑っているのに目は全く笑っていなかった事に少し怖さを感じた。いつもはしないお酒の香りも漂って来る。
「・・・何を怯えている?キミは私を愛しているのだろう?」
ギルベルトは少し屈むとエミリヤの髪を一房掬い、髪に口付けをしながら近距離でギルベルトに獲物を捕らえるような目で見つめられる。ギルベルトの纏った香りが鼻孔をくすぐり、彼が近距離にいる為体温も感じる。ギルベルトの年齢を重ねた事で生まれた渋みが余計色っぽく見えエミリヤは身体が熱くなる。
ーーその時
ーーーーバタンッッッッ!!!
凄まじい勢いで談話室のドアが開けられた。
乱暴に開けた人物はそれまで姿が見えなかったエミリヤを睨みつけるヴィルヘルムであった。
「ーーいくら私が相手をしないからと公爵家当主に色目を使うとはなっ!!公爵家に嫁ぐ身で恥を知れ!!ここからすぐに出て行け!!いいか、二度と私の前に姿を見せるな!!!」
一方的に言い切るとヴィルヘルムは怒って部屋を出て行った。
エミリヤはヴィルヘルムの嵐のような出来事に呆けている。そして、先程迄のテンションは駄々下がりである。ギルベルトは何事も無かったかのようにソファーに座りエミリヤを呼んだ。
「エミリヤ、アイツの言う事は何も気にする必要は無い。こちらへ来て一緒に話さないか?」
「えっ!!あ、ありがとうございます・・・ではお言葉に甘えて・・・」
部屋を去って行ったヴィルヘルムを追わず、ギルベルトの座るソファーの隣にエミリヤは腰を掛ける。騒ぎを聞きつけて来た執事がヴィルヘルムの乱暴に開けたドアを閉めて行った。ソファーの前にあるテーブルの上には空になったワインの瓶が3本転がっていた。
「ギルベルト様?いつもこの様にたくさんお酒お召し上がりになっているのですか?明後日は結婚式ですけど大丈夫ですの?」
「いや・・・、今日は呑みたい気分なのだ・・・。エミリヤも私に付き合ってくれないか?」
「そんなに呑まれては、ヴィルヘルム様が心配されますよ?」
「・・・エミリヤは心配してくれないのか?」
渋く端正な顔立ちの顔のギルベルトの厳しくも甘さを帯びた目がエミリヤを捕らえていた。
エミリヤは余りにも真剣な顔で聞いてきたギルベルトに胸が高鳴った。顔が熱を帯びていくのが自分で良く分かったエミリヤはそっとギルベルトの目から視線を外した。
「わ、私が心配しない訳無いじゃ無いですかっ!ギルベルト様には元気で長生きして、一緒に色んな所に行ってたくさんの景色を観たいんです!ーーー私・・・ずっとお側に居たいのです。私の願い叶えて下さらないんですか・・・?」
「側に・・・か。そうは言っても君と一緒にいられる時間が短い事には変わりない・・・。何度生まれ変わってもまた短い間しか一緒に居られないのではと思うととてつも無く不安になる・・・。私が死んだ後はヴィルヘルムが君と過ごして私の事を忘れてしまうのだろう。忘れて幸せになって欲しいとはまだ思える自信がない・・・。私が息子の年齢ならば・・・。」
「もうっどうしたんですか!!しっかりして下さい!!前世で死ぬ前に嗅いだ一瞬の思い出での香水ずっと作っていたんですよ!?執着の塊ですよ!!そんな私が忘れると思いますか?心外ですよ!!それに、年が近かったら恋愛対象として見ないと思いますよ?」
エミリヤがエミリヤの結婚式を前に鬱々となったギルベルトをよしよしと頭を撫でている。
そんな2人をドアの隙間から覗く影があった。自室に戻った筈のヴィルヘルムである。心ない事を言ってしまったのを謝ろうと戻って来たのは良いが、予期せぬ中のやり取りに入れず扉の前で動けずにいた。
「(ーーーそんなっ!?・・・まさか彼女が昔オペラ会場の席で友人に言った『イグリール公爵家の家族になりたい』と言った言葉は・・・地位が欲しいという事では無かったと言うことか!?)」
談話室のソファーで愛妻家の様に傍らのエミリヤの肩を抱き寄せ、見たこともない優しい眼差しでエミリヤに語りかけている自身の父親がヴィルヘルムの位置からしっかりと見えていた。
それに応える様に公爵の胸に縋り付き、自身に見せたことの無い恋する乙女の様に顔を赤らめ恥じらいを見せるエミリヤ。
公爵はエミリヤのつむじや額、鼻先、目蓋、目尻等次々にキスを落とした後、エミリヤの頬に手を添わせ上に向かせるとエミリヤのふっくらとして柔らかそうな唇に数回軽い口付けをする。それから、啄む様な口付けを交わすとエミリヤの口の中に舌を侵入させ、息が出来ない様な激しい口付けを始めた。
この光景を見れば一目瞭然であった。2人はお互いを想い愛し合っているのが誰の目にも明らかだろう。
それは彼の考えていた前提を全て覆した。
「(・・・私とでも公爵家でも無く・・・父上と家族になりたかったのか・・・。)」
ソファーの上では折り重なる様になり、服の上からエミリヤの胸を鷲掴んだギルベルトの大きい手が変形させる。
お飾りとは言えど、自身の妻がまさか自身の父親に寝取られているとは思いもしなかった。怒りよりも寝取られ父親の手によって彼女の口から漏れる嬌声、快楽の為か脚を動かしスカートが捲れ露わになって来る白く美しい脚、自分には見せた事のない艶かしいエミリヤにヴィルヘルムの股間が熱を帯びる。
「・・・キミが私にこれ以上酒を呑むなと言うなら、この開けたばかりのワイン一本を呑んで片付けて貰おうかな?」
「分かりましたわ!!お受けします。でも、それでお終いですからね?」
エミリヤはまだお酒に慣れていないのでグラス2杯が限界であったが、どうしてもギルベルトにこれ以上呑んで欲しく無かったエミリヤは承知した。
はっきりとした返答で受けた割には、あっという間にエミリヤは泥酔状態になってしまう。
「(男の前で立てなくなる程呑んだら襲われるだろうがっっ!!)」
ヴィルヘルムはそう思うもそこから動かず淫猥な光景に見入ってしまう。彼は過去の心の傷により一般的男性に比べ極端に性欲が少なかった。そのヴィルヘルムの性欲が2人の乱れる姿で今までに無い程昂まり前屈みになる。
性格には難があるものの、眉目秀麗で仕事も出来る将来有望な男がドアの隙間から前屈みになり覗く姿は側から見ればかなり滑稽と言える状態であった。
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